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選律の星環譜  作者: 刹那
19/67

R-10到達

朝。実技室。輪っかライトは中弱、黒円は中央。掲示には**『評価カードβ』とE-12b**。

端の台に短音器、タイマー、水。床の白点は……少し薄い。

昨日のモップのせいか、輪郭がかすれている。


「今日はR-10に届く」ルナが短く言う。

「順序は変えない。言葉は短く。無茶はしない」


志水が記録カードを配り、見学席に楓。扉が静かに開いて、黒鐘イツキが入る。会釈は監督者へだけ。

距離感、いつもどおり。



◆セットE(通算R-9へ)



合図。ピッ。


胸の中にポコン……。


A:反応→当て / B:当て→反応


「A。反応から」

——赤、右。白、前。黄、左後ろ。腰だけ切ってタッチ、戻る。

呼吸は四吸・二止・四吐。肩は浮かない。


三分で当て(軽い)へ。×の左上から入り、三回目で中心。合図。二拍静止。視線は白点。交代。


イツキは姿勢→反応→当て。二拍静止も正確。終わり際、低く一言。


「合図→止まる」

——EP-1、達成。


ログ(E)


正確度:逸脱0%(両者)


再現性:R-9(午前で到達)


説明可能性:EP-1=イツキ(終端前)


安全余白:SY-肩=発生なし


協調:該当なし


ミレイユが短評。「次でR-10。同じ速度で行く」



◆小さな問題(白点が薄い)



セットFの準備。合図前、俺は床の白点を見て、ほんの少しだけ迷う。薄い。輪郭が曖昧。

イツキも一瞬、視線を落として、白点の外側の影を確認しているのが見えた。


「白点、かすれてる」楓が囁く。


ルナは即断。

「交代=影の輪で代用。四問を言って」


「対象=使用者、場所=黒円上の影の縁、主体=監督者、時間=本セットの間」


ミレイユが白板に一行だけ置く。


『目印不良→影で代用(本セット限定)』


(新しいルールを作るんじゃない。現場の置き換えを一時的に言語化する)


イツキが小さく頷き、低くEP-1を置く。

「交代=影を見る」


「交代=影を見る」俺も短く重ねる。被りは一回でいい。十分だ。


—志水が短音器を掲げる。

「開始」



◆セットF(R-10の一本)



合図。ピッ。


胸の中にポコン……。


A:影の縁を正面に取る / B:影と白点の中点を取る


「A。影の縁」

——視線は影の輪の手前。二拍静止のイメージを先に作っておく。


反応→当て。黄が右後ろ。腰だけ切ってタッチ。戻る。当ては×の左上を初期狙い、三回目で中心。


合図。ピッ。二拍静止。視線は影の縁。肩は沈む。交代。


イツキは迷いなく走路をとり、姿勢→反応→当て。影の縁で二拍。テンポは保たれる。


途中、窓際で反射音がチン。E-12bの適用範囲だ。


胸の中にポコン……。


A:通常継続 / B:E-12bで二拍追加


「B。適用」

——最後の音の終わりから二拍静止。打ち切りの一拍は不要。


再開。テンポは静かに戻る。呼吸は四吸・二止・四吐。肩は浮かない。


—短音器が止まる。終了。


ログ(F)


正確度:逸脱0.5%(カイ)/0%(イツキ)


再現性:R-10(到達)


説明可能性:EP-1=両者(交代=影を見る)


安全余白:目印不良→影で代用(本セット限定)


協調:支援+1(現場の置き換えを短く共有)。干渉0。


ミレイユがカードにチェックを入れて、白板にR-10と書く。

三ノ宮が静かに現れて、紙にスタンプを押した。


「R-10、認定。β→1.0へ移行準備。『影で代用』は常設ではなく、目印補修を優先」


「補修、手配します」志水。


ルナが俺の肩を軽く叩く。

「速度はそのまま。言葉は少なく、確認は丁寧に」


イツキは白板のR-10を一度だけ見て、監督者へ会釈。こちらは見ない。

けれど、影の輪に視線を落とすタイミングだけ、たぶん同じだった。



◆食堂(報告と中庸)



昼。中庸セット×二。楓が箸でリズムを取る。

「R-10、おめでとう」


「ありがとう」


「『影で代用』、きれいだった」


「現場の置き換え、便利」ルナがスープを啜る。

「常設化はしない。でも、言えるのは強い」


(“言える”が増えていく。体の速度と、言葉の速度が少しずつ合っていく)



◆掲示板(次の段)



午後の掲示に紙が一枚増える。


【予告】『評価カード1.0』明朝掲示。追記:目印補修完了までの暫定措置(影の輪)。


「影は暫定」


「暫定が通路になることもある」ルナが短く言う。

「でも、混ぜない。常設と暫定は分ける」


胸の中にポコン……。


A:この学園で静かに暮らす / B:全力で勝ちにいく


「保留」

——今日は、影の輪と同じ。必要なときだけ、そこに置く。


輪っかライトが床に丸を落としている。白点は薄いけれど、丸ははっきりしている。見える。

名前は……もうつけられる。交代=影を見る。短く、十分だ。

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