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自称最強の双子が異世界を支配します  作者: 機巧アカツキ
第2章『先魁の世界』
22/43

妖精は拳も強し/予想外の作戦/悲しみの命令

少し短いです

 

 この戦争において最大の敗北条件となること……それは考えることなく、国に近づかれることだ。基本的な戦争において、相手の戦力を失わせることを述べるとすれば《女王の殺害》か《国の破壊》だろう。勿論、相手の降参を仰ぐというのも一種の方法だが、それはこの世界の戦力において皆無に等しい。


 《女王の殺害》においては、手っ取り早いのは事実としても国で王をする人物だ。周りも本人も手強いこともあるだろう。だからこそ、この中で一番にされてはならないことは《国の破壊》だと断言できる。何処の国も防衛をきっちりするのは当たり前なのだ。



「フィラル様、どう…されますか?」



 何故、最も強い俺が前衛バリバリなのかって?



「……空に浮かぶ大陸、いえ、全てが国の大国ですか」



 そりゃ、女王様がいるからだよ。



「進入しますか?」



 女王様は俺より弱いよ? 力もスピードも俺の方が上だ。だけどラメイソンの力はそこじゃない……



「フィラル様! 何か……何か空から来ます……!」

「来る……というより、迫る勢いですね!?」



 遥か上空より迫り来る黒い影。個数で数えるよりも、その巨大な存在を定義するのが先だと思えるほど膨大な影だ。


 フィラル達、エルフ軍がその存在に体制を取り、魔法を連発して応戦するが……



「……止めてください! これは……」



 そう、ラメイソンの強さは____________『魔法が効かねぇ』ってことだ。



「吸収……いえ、爆発のエフェクトはありますね。膜、バリアでしょうか。皆様! 遠距離攻撃魔法は使わないでください、3人1チームで行動を!」



 即座に指示を出したフィラルが強化魔法で自分を纏い、巨大な影に向かって跳躍する。指示を受けたエルフ達は指示通りに拡散。それと同時に、巨大な影も拡散し始める。



「聖なる大地の母よ、我に力を____________【サウザント・シャキナー】」



 急停止し、浮遊したフィラルの周りに幾千の光の剣が具象化し、勢いよく無数のつるぎが次々に影へと突き刺さる。だが、落下してくる気配はない……まるで、それは刺さっていないかのように速度を上げてフィラルへと向かっていく。



「……物理法則を駆使した魔法も効きませんか……くっ!」



 向かい来る黒い影を背後に、フィラルは浮遊魔法に強化を使用して高速で空を駆ける。下を見れば既にエルフ軍とラメイソンの影が戦闘を繰り広げている……が、それはやはりエルフ軍が不利と見れる。



「物理魔法も……魔法全般が効かないというのですか? 情報を隠蔽していた分、最悪の相手ですね……」



 なら、国に直接……と、考えるが、そこには無数の巨大な影が要塞のように立ち塞がっている。強行突破は無理だろう。



「アヤト様からも連絡は、なし……国を目の前にして、アヤト様なら」



 思考の途中で影が詠唱を始め、次々と魔法の雨がフィラルを襲う。強化したフィラルの速さでも追い付く相手だ。当然、他のエルフ達では相手に出来るわけがない。なら……やるしかないだろう。



女王権限クイーンアビリティ……【オール・テレポーション】」



 そうフィラルが口にした途端、フィラルを除く全てのエルフが青い光の結晶に包まれて、その場が消えていく。魔法を得意とするエルフ女王の特権……それは絶対順守であり、エルフは逆らうことを許されず、その身は如何なる状況でもエルフ国へと転移される。


 対立していた影のターゲットは全てフィラルへ。まさに袋の鼠となったフィラルは、その状況を笑いながら魔力を上昇させていく。



「自分を犠牲にしてでも民を守る。それがアヤト様です……第8国エルフルクス、そしてフィナーレとの同盟国。エルフルクフの女王として、貴方達ラメイソンのお相手をさせていただきます」



 既に上昇しきった魔力をまだ上昇させていく。

 これだけの数を相手にするのだ。生半端では挑めない……魔法がもし効かないのであれば、



「……拳で語り合いましょうか」



 上昇させた魔力を向上させて、効かないままの影を強制的に吹き飛ばす。両手を合わし、目を瞑り、そして……身体全体に強化魔法を。フィラルの髪が逆立ち、眼に青く煌めく十字架が宿る。



「参ります……【フルエンチェント】」



 迫り来る影を次々と格闘術のような技量で薙ぎ倒すフィラル。一撃一撃が重く、鋭く、そして……魔法の効かない影さえも貫通させる。それに怯んだのか、影はフィラルに近づく抵抗を顕にし、フィラルからかなりの距離を取り始める。



「何故だって感じですね? 魔法に特化したエルフを嘗めないことですよ……魔法が効かないのなら物理的に攻めればいいと簡単な解決法方があります、が……我々エルフにとって近接は極一部の者が使用するだけです」



 例えるならば、ラルハであろう。

 ラルハが使う魔法は主に強化と物理魔法の具現化という、エルフにとっては稀少種といってもいいくらいの珍しさだ。それに加えて身体能力も高い……恐らく、遠距離魔法無しであればフィラルでも勝てないだろう。


 だが、それはラルハのように魔法も使える高身体能力だからだ。

 もし、ラルハよりも身体能力が低く、魔法を使用しないのであれば、考えられることは近接のみとなる。



「近接が弱ければ強化すればいい。魔法が効かなければ隠して・・・使えばいい。そう……体内に魔法をかけて、それを纏えばいいのですよ」



 言葉に合わせてフルエンチェントをかけたフィラルが影に接近し、魔法を閉じ込めた衝撃波の斬撃を放つ。影は跡形もなく吹き飛び、フィラルは遥か上空のラメイソンに視線を向けて目を細める。


 実を言うと簡単すぎた。

 魔法が効かないだけの兵士でエルフを止められると本当に思うだろうか? 確かに魔法特化のエルフには最大の敵であろう……が、それは魔法が封印されるだけのメリットしかなく、確実に勝てると踏めるものではない。



「……明らかに誘ってます、ですか」



 思いのほか慎重なのか。

 アヤトなら……考えることもなく向かうだろう、か。



「ふふっ、いいです。楽しくなってきました……誘いに乗ってあげますよっ!」



 そんな叫びにも近い笑いで、フィラルはラメイソンへ向かい飛翔していくのだった。












 ***











「主様、生きとるかのぉ?」

「あー、生きてるけど死んでる感覚だわ。死んでる感覚知らねぇけど……」



 そんな茶番をしながら、空の旅を。

 アヤトとアドラメルクがいるのは天高く日が暑く感じる上空。ルトルスに吹き飛ばされたアヤトを助けるべく、跳躍したのだろうアドラメルクがアヤトの腕を掴んで体制を安定させていた。



「ふむ、重力魔法の一種じゃな。普通なら範囲的に行われる魔法なんじゃが……これは」

「ノアには増幅、俺には減少……めんどくさい能力だな、おい。てか、俺が飛ばされた理由ってなんだ?」

「軽くされて魔力の風圧で、じゃろうな」



 ふむ……てか、全然落ちてねぇなこれ、軽くされてるからか?

 アドラメルクがいるってことは、フィーネが1人……ノアも心配だな、仕方ねぇ。



「アドラメルク、俺を叩き落とせ。もしくは、重力魔法使えるのなら戻してくれ」

「後者は不可能じゃ。歯を食い縛るがよい」

「……優しくしてね?」



 アヤトの指示で掴んでいた手を放してアドラメルクが満開の笑顔で、楽しそうに魔力を高め……「善処しようぞ」の笑い声で、一気にアヤトを魔力で叩き落とした。



「いってぇえええええっ!? この、後で覚えてやがれ……よし、見えてき____________かはっ」



 落下したはずの身体がまた宙に浮き上がろうとする。

 腹部が軋み、鋭い痛みが身体全体を包み込もうとする。霞もうとする瞳を無理矢理抉じ開けたアヤトは、目の前の尖った口元のルトルスを目にした。それに気づかれたのか、ルトルスはアヤトに入れた一撃の足を抜き、反対側の足で地面に叩き落とす。



「なろ……ぐ……ぁ」

「戻ってくると思って跳躍したんだが、こりゃたまげた。まさか仲間を無理矢理落とすなんてな~。おもしれぇじゃんよ、あんちゃんっ!」

「……な、体が……重い……くそ」



 また重力魔法を受けたのだろう身体は、なす統べなくして地面に突っ込んでしまう。



「【ヘル・フレア】」

「それも読み通りだぜ、悪魔さんよっ!」


 叩き落としたルトルスの背後から、アドラメルクの炎が迫り来るが、それを見向きもせず空中の塵と化せた。



「てめぇも落ちなっ!」

「……ぐ、この……頭に載るなよ、小娘ぇええええっ!!!」



 落とされそうになった自分自身に魔力を纏わせ、強制的に浮遊する……と、思いきや、アドラメルクは渾身の怒号で重力魔法さえも崩壊させる。



「マジかよ……これ破るのホムラっちくらいしか知らなかったのによ」

「ふん、妾を誰と心得る? 小娘ごときの魔法で妾を落とせると思うなよ?」

「は! 年増の魔法は時代遅れだってことを教えてやるさ、ビーストレスッ!!!」

「誰が年増かっ?! 妾はまだ……」



 そんな言葉をも聞くつもりもないルトルスが先手で動く。重力を操り、逸早く地面へと向かうが、そんな簡単にやらせるアドラメルクではない。炎と風の魔法を発動させ、大気中に強烈な熱風を巻き起こさせた。



「っち、落下の摩擦で殺す気か?!」

「お主は相手を勘違いしておるぞ? お主の相手は……妾達じゃ」



 視線がアドラメルクへ向いた途端、ルトルスの右足が蒼き雷によって貫かれる。更には、巨大な片翼を羽ばたかせたノアが、ルトルスの真横に並び、右腕に蒼き落雷を纏う。



「がっ……デウス・マキナ……てめぇには、止めを刺したはずなのに……」

「……ん。私達だって、魔法の機能はある」

「くっそ、聞いてねぇって!」

「……ん。言ってないから____________【落雷】」



 ルトルスに放たれる落雷。近距離の一撃を受ければ確実に戦闘は不可能になる。ノアを重力で落とそうにも間に合うはずもない。ヤバイ……これは、避けられない……が、



「……シャラァァァァァアッ!!!!!」



 それは跡形もなく、拳一つで無効となった。

 思わず目をつむってしまったルトルスが目を開くと、そこには跳躍してきたのだろうホムラの姿が。



「ホムラっち……」

「考えるのは後だ! 空中じゃ俺も自由には無理だし、降りるぞ!邪魔するやつは全てぶっ飛ばしてやるっ!」

「あ、あいさ!」



 助けられたホムラに抱かれて、魔法を発動。ホムラを追ってきたフィーネと擦れ違いながらも無事に着地する。



「わりぃな、ホムラっち」

「気にするなよ。俺もかなり手こずってるんだよ……あの、フィナーレめんどさいほど強いし」

「そのわりに楽しんでねぇか?」

「当たり前だろ。アヤトさんは?」

「真下に叩き落とし____________いねぇ」

「また仕掛けてきそうだな。そろそろやるか」

「お? あれかい。おっし、ワクワクしてきたぜ!」



 さぁ、アヤトさん。これは読んでたかな? 今から、最高最大の戦争だ。合計3つの国……守れるかよ?









 ***











「女王様、ラメイソンより命令です」

「攻めろ……と」

「いかがなされますか?」



 水面に浮かぶ1つの影に数々の声が響き渡る。水の衣を揺らしながら、その影は次第に立体となっていく。そしてその女王は____________悲しく笑っていた。



「いきましょぉかぁ」



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