最後の運命/人類最強の異世界人/コツコツ
ホムラ視点です
戦争開始。
「さて、動くとしますカァ、女王様?」
「またその口調になってる。キモいキモい」
「誰かさんと口調被るんだよ。異世界転移モノってのは、ほぼ主人公は同じなのよ多目に多目に」
「無理、却下。死ねばいいかも」
「かもが助け船になってる思ってる?! 完璧に心折れるよ、罵倒で喜ぶタイプじゃないからねっ?!」
最初の言葉の戦争開始は前言撤回だな。
さて……と、アヤトさんはどう動いて来るか。あ、アヤトさん自身は動いてこねぇのか? てことは、えーと……うん?
「なぁ、女王様。俺、今回の戦争について、俺、相手の状況あまり聞かされてないんだけど?」
「……ニャハ?」
「うん、忘れてたんだね?」
あまりにも可愛い仕草で頭をコツン。舌を少し出す超絶可愛い白髪ツインテール少女に苦笑しながら説明を求めるホムラ。説明を受けたホムラは「……おぉう」と、フィナーレの現状に眉を潜める。
「これ、仕組んだの女王様?」
知らされていなかった現状をホムラは笑いながら問う。問われたはずのレスティアは返答に少し戸惑っているのか、少しの空白の時間の後で1回頷くと、決心したように……
「そうよ」
「嘘だよね?! 変な空白の時間あったよ?!」
んじゃ、女王様は関係ないっと。
さて……取り合えずは、勝つ為の作戦実行といこうかな。アヤトさんはフィナーレを出れないけど、いや出れなくもないか……とりま、気づくまでは防戦一方になるだろうなフィナーレは。
「よし、まずは全身あるのみ! 【ラメイソン】前衛部隊の半分で突撃させてくれ」
「わかったわ……ねぇ、ホムラ」
「おう? ここへきて愛の告白かい? 俺はいつでもオーケーだぜ? カモンッ!」
「……馬鹿。ねぇ、ホムラは私のこと、どう思ってる?」
「……マジで愛の告白っ?!」
「もういいわ。また今度ね」
「アウチッ! ごめんなさい女王様! 悪かった、俺が悪かったって! もう一度、もう一度このホムラめにチャンスを!」
ん、これもルート通り。
本当に悪いな、レスティア。このくそったれな世界のルールを壊したら、絶対に答えるから。もう少しだけ、もう少しだけ待っててくれ。
レスティアに下げた頭を上げて、ホムラは大きく背伸びをする。誰しも負けられない理由がある。そんなのはアニメだけの世界で十分だったのに……今は違う。
「君は俺が守る。絶対に」
「……うん、待ってる」
***
ラメイソン国外付近____________ゲート。
女王『レスティア』の命令により、ホムラは前衛部隊を率いて黄緑色に輝くゲートの前にいた。
黄金の縁に覆われた巨大な門。今にでも吸い込まれそうな鏡に、神々しいまでの黄緑色の光。石を投げれば「あなたが落としたのは、この金の石ですか? 銀の石ですか?」とか、聞いてきそうな奴が出てきそうな。
「遠方戦争のみ発生するゲートか。何回目だろうな、これ……あ、これがラストだっけか」
意味ありげな言葉を呟きながらホムラが、ゲートを見上げる。そんなホムラに背後から、ローブの女性が手をブンブン振りながら存在を示す。
「ホムラっち、兵の準備が整いましたぜ」
「あいよ。毎回悪いな、ルト」
「気にふんなはよ___________んくっ。後、俺っちの名はルトルスだぜい」
みたらし団子のような物を頬張る小柄な瑠璃色少女。その容姿はフードからでも綺麗に目立つ美しい金色の瞳に、わんぱくそうな性格を表したかのような牙? のようなものという、明らかに御転婆キャラだ。
「今回も、ルトは前衛なんだな? 期待してるぜ……それ、旨そうだな」
「だから、ルトルスだって……食うかい?」
シュタッ! と、ストックみたらし団子を指の間に挟んで自慢するのを1本貰い、口に運ぶ。「お、うめぇ」と、美味なる物を口に運びながら、そっとゲートの触れる。冷たい感覚の後、ホムラの右手が少しずつゲートに呑み込まれていく。それを確認したホムラは、無理矢理手を抜いて前衛部隊に目を通す。
ゲートによる移動は、敵国から一定範囲放れた場所からと決まっているらしい。ゲート移動から即戦争! というのは、ないと見て良いのだろう。というか、無かったな今まで。
「よし、突撃といきますか。全員! 死ぬなよ?」
「ヌハハ、それ完全にホムラっちが言ってた、しぼうふらぐという奴じゃねぇか?」
んじゃ、フラグ回収無しを願って____________うん、運命って残酷だわ。
「主様の読み通りだのぉ。いやはや、驚きは隠せぬものじゃ……これでは、夕飯は妾持ちかのぉ」
ゲート移動した刹那、突然と巻き起こった熱風により前衛の3割が宙へと投げ出され、炎の弾丸の餌食になっていく。
ゲート移動は敵国から放れた場所に移動するはずだ。なのに、敵、フィナーレはこの場所を知っていたというのか? いや、違う……これは、
「……ん。アヤト、すごい」
____________デウス・マキナ。
しかもあれは、女王『ノア』。未来予知が出来るって情報はあったけど、あれは対面する……まさか、ゲートの未来を見たというのか?! 普通、生き物縛りとか考えるだろ?! 誰がゲートの未来を予知しようなんて考えるんだよっ!!!
「地形は谷? 見るからに【エルフルクス】東部ってとこか」
「アヤトっち、はっきり言ってマズイ状況じゃね?」
「だな。あっちにはゲートがあって、俺らはここで足止め。ゲート使ったら、一時間は使えねぇし。何せ____________ビーストレスとデウス・マキナの女王経験者が相手となっちゃ……素直に邪魔させてくれねぇわな」
ラメイソンの兵士の魔法により、アドラメルクの弾丸を生んでいた魔方陣が消滅し、熱風の解除と共に兵士達が解放される。3割が瀕死。勿論、戦えそうにない。ホムラは頭を掻きながら「こりゃ、やられたわ」と、予想外を態度で表して、アドラメルク達へ歩いていく。浮遊していたアドラメルク達は、ホムラの存在に気づいたのか、大地までゆっくりと無事着する。すると、アドラメルクはモノ珍しげに笑いながら問う。
「お主は、フィナーレの民かの?」
「初めまして、ビーストレス元女王様。分類上、そう見てもらって構わねぇけど、国籍はラメイソンって事にしといてくれや」
「主様と同じ口調じゃの。まさかお主も……」
うわぁ、無駄に察しのいいキャラだなおい……。
そんじゃ、ま____________
「ご明察。どうも、異世界人デース」
絶対なる速度。
ホムラの周りに風のエフェクトが発生した直後、アドラメルクの目線の目の前に拳を振るおうとするホムラが映る……いや、移るが正しいのだろう。そして、本当の一瞬。避けるという意識すら与えることのない速さは、アドラメルクの驚く表情を作らせる暇もなくホムラの一撃がアドラメルクを吹き飛ばした。
「……ん。これは此方も、マズイ」
「____________がはっ……く、やってくれたのぉ。まさか先制の一撃を食らうとは思わんなんだぞ」
瓦礫を魔力で吹き飛ばし、立ち上がりながら口から出た血を拭う。ノアは不意打ちを食らうまいとホムラを見つめて能力を発動。アドラメルクもまた魔力を上昇させ、遅れを取るまいと目付きを変える。
あー、悪いけど無駄なんだわそれ。
俺にとって、対応するだけの意味は成さないんで。
「……っ! アドラ____________」
「____________かはっ……!」
未来を予知したノアがアドラメルクへ指示を送ろうとした瞬間、またもやホムラの高速の一撃がアドラメルクの腹部を抉る。しかし、流石に対応していたのか吹き飛んでおらず、アドラメルクは嘔吐を堪えて、
「人間風情が、調子に乗るのは良くないの…【ヘル・フレア】」
ホムラの顔面に強烈な炎魔法を叩き込んだ。
力の拘束がほどけ、アドラメルクは後方へと跳躍し、腹部を押さえて眉を潜める。2撃をまともに食らってこのダメージ……力、速度共にビーストレス並み。いや、もしかしたら速度だけなら越えている可能性もあるだろう。
「……っ! まさかあの近距離魔法さえ利かぬか」
ぶつけられた魔法を剥がすように払い除け、まるで何もなかったのようにホムラは笑顔で返答する。アヤトとは違う……素質や力量で纏められるほど小さくない器、強いて言うなら____________《次元が違う》。
「お主、何故初手でこの力を使わなんだ? 使用していれば、戦力を下げることも無かったろうに」
「あまりの予測不可能な出来事に動く暇が無かっただけっすよ。それに、誰も死んでないならそれでいい」
「……ふん。小僧が言いよるのぅ____________なら、妾も主の期待に応えるとしようかのぉ……喜べ? このビーストレスが全力の力で相手をしてやろうっ!」
「ハッ! そうこなくっちゃなっ!」
お互いに大地を蹴りあげた瞬間、その中間地点の大地が一瞬にしてクレーターと化す。弾かれた両者が攻撃の体制に入り、アドラメルクの炎の弾丸と真下に拳を一撃入れ、地面を盛り上げたホムラの壁が激突。粉々になった岩や砂で視界が崩れ、その刹那にホムラがアドラメルクの背後へ移動……しかし、それを読んでいたアドラメルクが足を払い、両手でホムラを渾身の一撃で真下に叩きつけた。
「……さっすが」
「っち、あまり効いておらんか。主様と違って頑丈すぎる奴だのぉ……ふんっ!」
大地に埋もれるホムラに向けて風圧の魔法が放たれ、竜巻が発生する……しかし、そこにホムラの姿はなく、見失ってしまったアドラメルクが周囲を見渡すがいない。
「……アドラメルク様、上っ!」
「おっせぇよっ! ツゥラァァアアッ!!!!!」
ノアの指摘で上を向いたアドラメルクに、流星のような鉄斎が放たれる。その一撃は大地を粉々に破壊し、周りの瓦礫さえ消滅させる衝撃波がゲート付近を包み込む。ギリギリ反応したとはいえ、完璧にアドラメルクは回避することが出来なかった……ホムラは、自分で作ったクレーターの上で自分の右拳を見つめながら、何故か捕らえた感覚の無い事に気づく。
「……やっば、ルトッ! デウス・マキナは ?!」
「あん? あ、いねぇ……し。ハハハッ! こりゃ一本取られたな、ホムラっち」
あぁ、全くだ。
まさか大技で最高の隙を作って、俺の一撃を回避しつつ紛れて逃走するなんて……少し遊びすぎたか?
既にいないアドラメルクとノアを思い出しながら、頭を掻きむしるホムラ。ルトはラメイソンの兵士に指示をだし、ホムラの元へと滑り降りてくる。隣についたルトは、ホムラの表情を見て安心したように笑う。
「今回、いけそうかい?」
「いけなきゃラメイソンは終わりだぞ?」
「んなもん、誰もホムラっちの責任だとは言わねぇよ? というか、言わせねぇし。人類最強様がフィナーレの味方をしない時点で、フィナーレには反発大量だろうけどなぁ?」
「それより、帰ってからの幼馴染みに殺されそうな気がする……人類最強様はアイツだと思うんだよなぁ」
「……ホムラっちより強いよかよ?」
「なわけ。同格……が、正しいだろうな。百戦五十六勝、今は俺がリードだ」
「普通は一勝違いが、ホムラっちが言ってた、おうどうって奴だろうに」
うん、そう思えば結構勝ってるな。今、気づいたわ。
元気して……るだろうな。アイツが病気になるとか槍降るわ。降らなくても俺が降らせてやる。さて、ゲートは一時間使えねぇし、やることは……攻めるのみ、だな。
***
「………………」
少女は静かに目を開く。
冷たい空気が漂う鉄の檻の空間。まさに牢獄と言わんばかりの静けさ。巨大な洞窟らしき一方通行の深部にポツリと佇むのは、自称最強の双子、妹『ミコト』であった。
手足には鎖、少し動かすだけでジャラジャラと音をたてるそれは、決して逃げることを許されぬ糸のような役割を果たしている。
「……ラメイソンとの戦争、ですか。これも貴方が描いた通りなのですか?」
静けさだけが響き渡る空間へ、ミコトが呟くように問う。
それに反応するように、コツコツ……と、壁を叩いたような音が反響し、返答とする。1回がいいえ。2回がはい、だ。
「兄様やそれ以外の異世界人もですか?」
「コツコツ」
「……貴方は何者ですか?」
「____________」
「では、最後に……貴方は、この戦争の結末を知っているのですか?」
……コツ。