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自称最強の双子が異世界を支配します  作者: 機巧アカツキ
第1章『支配する世界』
12/43

魔法の天敵/真実の理由/暗雲の影はすぐ傍で

 

「オウオウッ! お姉さん、やっるぅ~!」



【コッペリア】国外____________奇襲砲撃地帯。


 激しく荒れ狂う竜巻を回避しつつ、縦横無尽に駆け巡るエルフをリズマは追う。機械仕掛けの小手の両手に、青と水色の竜巻を浮遊させるリズマは、フィラルが逃げる姿を楽しむように追撃する。



「【シャイン・スパイラル】」



 リズマの放った青の竜巻を撃ち落とそうと、フィラルの光魔法が放たれる。それは、アヤトを苦しめた強力な魔法……のはずだっのに。


 それは完全に消滅しするや否やフィラルの頬を掠り、背後を突き抜けていく。



「魔法を無効化する竜巻……本当に鬱陶しい限りですね。さて……どうしましょうか」

「オウ? もう終わりなの?」



 魔法を最も特許とするエルフにとって、リズマは最悪な相手であることは間違いない。エルフが魔法を使えない……いや、使っても意味がない以上、肉弾戦しかないのだが、



「____________かはっ」

「ンフフ、言ったでしょ? 私、超強いんだよ」



 構えたフィラルを諸ともせず、リズマの横蹴りがヒットする。速い、フィラルよりも、いや……恐らくは、アドラメルクやルウシェよりも速い。


 フィラルは吹き飛び、数回地面にバウンドして岩に激突する。



「オウ! もう降参してもいいよー? ま、その場合でも殺すけどね、ンフフ」



 えっへん! と、自分が強いことを主張するリズマ。静かに埋もれる岩の瓦礫を前に……静かに、そう、ただ静かに。警戒と不可視がリズマの表情を変え、瓦礫に向かって水色の竜巻を放つ。


 リズマの機能は1つにして2つ。

 両手に宿る2種類の色は違う役割を持ち、フィラルやアドラメルクの魔法を掻き消した蒼の竜巻。そして、もう1つの水色の竜巻……その力は____________



「『掻き消した対象の魔法の所有者を対象に、存在を粉々にする』……ですか?」

「____________オウッ?! かはっ……!」



 振り向くには遅い。

 竜巻を放った前屈みの体制にフィラルの蹴りが深く炸裂し、そのまま空高く吹き飛ぶ。更に踏ん張った地面を盛り上げ、フィラルが一瞬にして浮遊するリズマの元へ到達。そのまま渾身の力で両腕を合わせて叩き落とす。


 叩き落とされたリズマにより地面は崩壊し、そのまま周囲の自然や岩を跡形なく吹き飛ばす。確かに魔法は無効化されるのがオチだ……だが、それなら無効とならない魔法で叩きのめせばいい。例えば、ラルハの強化魔法のような。



「くっ……瞬間移動も使えるなんて、びっくりだよ」



 無駄に巻き上がった砂煙を竜巻で吹き飛ばし、嘔吐を吐き出した口を拭う。リズマの姿は勿論、かなりの傷だらけだが……それは、フィラルも同じだ。岩に直撃するのを回避することはできなかった証拠だろう。


 その体では、瞬間移動さえの魔力を使うのは難しかった筈だ。それでも、フィラルは動き、反応し、不利な相手であるのに____________リズマは感じた。こいつは、フィラルは、リズマの好敵手だと。



「オウオウオウッ! とっても楽しいよ、お姉さん! ううん、フィラル・シー・レッドアイズッ!!! もっと、もーっと、どこまでも遊ぼうよっ!」

「ふふ、えぇ、遊びましょう。ただし、私の時間は無制限ではありませんので……全力で終わらせますっ!」



 先手のフィラルが動く。

 強化魔法により強化された紫の光が両腕両足に纏わり、リズマへと拳の乱舞を放っていく。しかし、それを全て紙一重で回避するリズマの本気も十分に伝わっている。攻めるフィラルと守りのリズマ……その攻防は続き、フィラルは連撃の最中リズマの行動に眉を潜める。


 先程の激しい攻撃は何処へ……フィラルが、本気で相手しているというのは事実なのだが、それにしても守りに入りすぎてはいないだろうか? いくら強化魔法と言えど、リズマの蒼の竜巻であれば魔法は消せる。水色の竜巻であれば魔法以外のフィラルを壊せるはずだ。何故、何故攻めてこない?



「何を……お考えですか?」

「ンフフ、さてさて何でしょう? ま、これから御披露目だから関係ないけどねー!」

「____________っ?!」



 フィラルの右蹴りを交わし、リズマが両手の竜巻を大きく顕現させる。そしてそれを……リズマは混ぜた。



「なっ……!」



『魔法を無効化する蒼の力』と『魔法以外の存在を粉砕する青の力』。

 正反対とは言わないが、決して交わることのできないキーワードが2つを拒み、融合する力が反発する……と、フィラルは予想していた。


 だが、それは反発することなく、蒼より濃い……深い深淵のような色、黒色の竜巻へと変化する。



「無理矢理、魔力色素を融合させたのですか?! 先程の守りは、魔力を集中させる為の時間稼ぎ……!」

「オウオウッ! そうだよ? ンフフ、それじゃ、いくっよー!!! 魔法も存在を呑み込む____________【ブラック・ツイスター】」



 リズマの奥の手だろう黒き竜巻が巨大化し、激しい突風と共にフィラルへ迫り来る。大地は削れ、恐らく魔法も無しに突っ込めば体はバラバラになるだろう。魔法を使用したとしても無効になるだろう。しかし、フィラルはその光景をジッと見つめ……微笑みを返した。



「安心しました。やはり____________ 《魔法》でしたか」



 その言葉と同時、フィラルの全身から溢れるほどの魔力オーラが発生する。それは次第に形を変え、フィラルの背後に紫と金色が交わった色の龍が姿を現した。形は捉えていないが、確かに龍だと認識できる……しかし、リズマはそれに動じず竜巻を続行する。当たり前だろう、何せ魔法を無効化するのだから____________格下の。



「……なん……で」



 フィラルの顕現した龍が放った光の咆哮。

 それは竜巻と衝突し、一瞬の攻防の末、跡形もなく吹き消された。フィラルの咆哮を無効化出来なかったのではない。



「私はずっと、貴女の蒼の竜巻『魔法を無効化する力』だと思っていました。ですが……貴女は私の問いにこう答えましたね?『魔力色素を融合したのですか?!』を『そうだ』……と。そこで、確信が持てました。貴女の蒼の力は魔法を無効化するのではなく____________ 《魔法を拡散する》のだと」



 魔法____________大気中のエーテルと言われる魔力素を体内に取り入れ、そして体内に生成された魔力色素と呼ばれる配合体と融合することで、《魔法》というものが生まれる。


 そこで……だ。

 フィラルは思った。と、言うより彼が思っていた。

 本来、魔力色素と魔力素が融合して出来る個体なのだとしたら、それを『無効化する』なんて出来ないのではないだろうか? と。誰もが考えるだろう基本中の基本だ。例え、違う魔法の個体を融合させようとも、無効化する魔法などというカテゴリでは。



「貴女の魔法……それさえも無効にするのではないでしょか?」



 フィラルの言葉に沈黙するリズマ。

 あのお気楽でお転婆な存在が、ここまで黙ってしまう……これは事実と見て間違いないだろう。



「……それでも」

「魔法を拡散する力だとしても、どうやって竜巻を貫いた? と、問いたいのですね。簡単です。私達、エルフにとって魔法……魔力の制御は専売特許です。拡散する魔力……この場合、《機能》と言うべきですね。魔力を使用する以上、それには限界の綻びが生じますので」

「…………それ以上の魔力を一点に集中させ、拡散する前にコアへ辿り着いた、ってことだね」



 リズマの解答に、ニッコリと微笑み返すフィラル。

 融合した竜巻も、青の力で包み込むことによって魔法以外の大気中の分散する力を蒼の力と共に掻き消した……そんなことも、フィラルは理解している。例え、それが理解していなくてもまた貫かれる。ならいっそ……。



「自爆ならやめときましょう、無駄です」



 リズマが高める魔力の最中、まるで昔の戦闘アニメのような首筋チョップで崩れるように眠らせるフィラル。静かに眠り出すリズマを岩に凭れさせ、フィラルは一息と同時に瞬間移動を発動しようと魔力を高める……が、それは揺らいだ体によって足を崩す。そして、そのまま重くなった目蓋を閉じ、



「あらあら、かなり無理をしすぎたようです。すみません、アヤト様……少し、休憩…の…お許し……を」



 少し浅い眠りについた。











 ***










「……プランA、B失敗。さて、と…どうするかなこの状況」



【コッペリア】王宮____________内部。

 広場、と言うべきだろうか? それとも王の間だろうか? ただ広いだけの空間……家具もない、ガラスもない、あるのはただ目の前の奥の巨大な扉のみ。レッドカーペットを真下に、アヤト達は場の状況に四苦八苦していた。


 アヤト達を囲む機械仕掛けの少女達。武装されていることから、間違いなくデウス・マキナだ。剣を構える者、盾を構える者、機械仕掛けの瞳で見つめる者、今すぐにでも光線を発射するようなキャノン砲を構える者____________うん、最後のはおかしいな。


 フィーネの能力の負担は出来すぎる……恐らく、残り1回程度が限度だろうな。戦えるのは、ルウシェと俺だけ……うん、そう思ってくれてるよな? オーケー、プランC成功だっ!



「ルウシェ、頼むっ!」

「了解しました、と、ルウシェは隠していた御披露目を発動しますっ! アヤトくんの為にっ!」



 あー、うん、ルウシェって2回言ってくれると完璧だった。

 惜しい、後でまた練習な。さてさて……これは読めたかよ? 未来師様!




「「「ォォォオオオオオオオオオオオオ」」」




 ルウシェの瘴気が広間を漂い、隠されていた存在が大きく声を荒らげる。現れたのは【フィナーレ】の鎧兵士と【エルフルクス】のエルフ……その数、およそ30という大群の援軍であった。これがルウシェの魔術____________味方さえも欺けるほどの幻術である。



「各種伝達! フィナーレ兵士は必ずエルフと行動を共にしろ! 絶対に1人で戦おうなんて馬鹿なこと考えるんじゃねぇぞ! エルフ軍はフィナーレ兵士を徹底的にサポート、大規模化魔法の使用は禁止! 強化や回復で時間を稼げ、いいか?!決して誰も____________殺すんじゃねぇぞっ!!!」

「「「ォォォオオオオオオオオオオオオ」」」



 指揮全般を投げ捨て、目的だけを伝えたアヤトはルウシェやフィーネと共に扉へ走り出す。



「ま、まさか幻術で兵士を隠していたとは……道理で疲れるわけなのですよ……」

「お? と言うと、兵士無しであればもう少し距離や数を増やせたってことか?」

「当たり前です! 知らなかったから出来たものの、普通なら1回でノックアウトなのですよ!?」



 ふむ、生命における認識の力というのは本当らしいな。

 知らないって思い込みだけで、ここまで違いが出る……か。ルウシェを使えば、兵士の指揮なども上げられるかも……っと、それだと今のフィーネみたいに負担で動けなくなるのがオチか。こいつは動いてるけど。



「扉はぶち壊せ、ルウシェッ!」

「イエス。承りましたっ! はぁぁぁああっ!!!」



 扉の目の前についた瞬間、アヤトの指示によりルウシェが瘴気を纏めて巨大な黒い拳を生み出す。まるで、魔神の右腕のような化身を振りかぶり、一撃で扉を粉々に砕いてしまった。



「よし、ルウシェはここで足止めを頼む。俺は…………彼奴からマイシスターを取り戻すっ!」

「…………アヤトくん、ご武運を」



 ルウシェに背中を預け、アヤトはゆっくりと王の間を歩く。

 先程の長い空間とは違い、魚のいない水槽が壁紙のように埋め込まれている。他にあるのはレッドカーペットと王の玉座に座る機械仕掛けの少女のみであった。凛凛しい白髪の長い髪に黄金の眼。彼女がこの国の王、



「お前が『ノア』だな?」

「……ん。いかにも、私、が、ノア。初め……まして、アヤト」

「幼女に呼び捨てとか、めっちゃ萌えるけど場合が場合なんでね。さて……俺が、ここまで来るのも予知してたんだろ? 未来師さんよ」



 アヤトの言葉に目を細める、ノア。

 現状、当たり前のことである。アヤトが口にした《未来師》という言葉……ここだ。何故、アヤトは未来予知のできるデウス・マキナが存在していることを知っている? 【フィナーレ】からの刺客であるミコトが伝えたのか? いや、それは無い。伝える分においては対面するノアの力によって筒抜けなのだから。


 なら、どうやって? まさか、フィナーレにも……。



「残念だが、此方に未来師はいないぜ? ミコトが伝えた文面を把握してたみたいだが、それはキッチリと文面に埋め込まれた別の伝言を把握してたか? 例えば……《ミコトでは勝てない》とかな」

「……ん。なるほど、墓穴を、掘ったのね」



 ミコトでは勝てない。


 つまり、ミコト自身の力ではどうにもならない……ということだ。なら、どうして? どうして勝てないと判断する? アヤトは、ミコトの伝言を確りと受け取っていた。



「勝てない理由を考えろって事だな。簡単に考えられるのは3つ____________1つ、あまりにもデウス・マキナの戦力が高すぎる。どう足掻いても今のミコトに対処法はない。確かにミコトは《勝てない》と言ったが、それはミコトのみの場合のみしか伝えようとしていない。なら、2つ……何故、ミコトのみでは勝てない? 決定的なのは数の違いだが、別の考え方をしてみようか____________能力が通じない……とかな?」



 指を立てて、ニヤリと笑うアヤト。

 まるで、それはミコトから託された沢山の糸を手繰り、自分の物としてノアを操作しているかのような。


 つまりは、ミコトの能力である《存在を消す能力》が通じない理由ということだ。簡単に客観的に……、



「それは《未来を予知する未来師》がいると考えられる」

「……ん。他には、考えなかった、の?」

「ミコトの能力は、少し特徴的でな。存在は消せても記憶は残るんだよ、つまり……それを防げるのは《未来師》と絞ることができる。ミコトが伝えたかった大切な事だ……相手が速すぎる! なんて、幾らでも対処法があることを伝えてこないよな? 増やすと、バレる可能性もある____________



 言葉の区切り、刹那にしてアヤトの真横に落雷が落ちる。

 しかし、それに驚いているのはアヤトではなく……ノアであった。フィーネも勿論驚いているのだが、アヤトは同然のようにノアへ笑みを浮かべ、



「当てるつもり……じゃないよな? 当たったはずと思ってるだろ?」

「……ん。なる、ほど、これが……貴方の能力……」



 さて、落雷が能力でいいのか? 先程のを見れば確実に殺せる威力だったが……いや、そんなことは考えなくていい。使ってこないってことは、俺には効かないってこと____________



「____________と、思ってた?」

「……っ、何っ?!」

「アヤトさん、上ですっ!」



 フィーネの指摘で即座に上を見上げるアヤト。そこにはもう、迫り来る青の落雷しか目に写っていない。


 おいおい、さっきのは何だ?! 感情を読まれたのか?! くそっ、マイシスターもギリギリだったってことかよ?! くっ、どう回避する?! 横か後か、前か! 駄目だ! 完全に、読まれるパターンだぞ、これ!



「アヤトくんっ!!!」



 声の瞬間、受けるのを覚悟したアヤトの目の前で黒い鉄槌が落雷を葬り去る。こんな芸当を出来るのは……やはり、ルウシェであり、その背後には先程は腕までだった化身が体の上半身まで顕現していた。



「……ん。その魔術、ヤエガスミの者……?」

「いえ、ルウシェはヤエガスミのモノではありません。アヤトくんのモノですっ!!!」

「うん、助かったけど、聞かれているニュアンスを訂正しような? ともあれ、サンキュウ、ルウシェ」

「いえ……ルウシェは、後のナデナデで十分です」



 あ、うん、お安いご用だ。

 さて……やっと、これたぞ。大きく息を吸って~、吐いて~、吸って____________。



「助けに来たぞ、マイシスターッ!!!」



 全身全霊の怒号。

 それは、王宮全てに響き渡るよう……目的としてたった1人の少女に伝える言葉。まるで、ここにいる存在を証明する叫びが今、そこにはあった。










 ***









「さてさて、そろそろルビィも動くの~。ノアァの為、あの方の為、全員滅ぼしてやるの」




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