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デート?

リセルとのプライドを賭けた勝負を申し込んだ翌日。


「英気も養ったし、そろそろダンジョンに行くとするか」


 グラムが腰を上げた。


「とりあえずマコトは何もしなくていい。様子見だな」

「無双したいんだけど」

「抑えろ」


 ダンジョンの仕組みや雰囲気、陣形を肌で感じるための探索だと説明してくれた。


「マコトは頂上を目指したいのか?」

「踏破すると何かあるの? 金銀財宝とか?」

「分からん。伝承ではダンジョンそのものが手に入ると言われているが、いかんせん誰も制覇してないからな」

「俺にも冒険心とか名誉欲がそこそこあって、だから目指したい気持ちはある。でも命を賭けるほどじゃないかな」

「なるほどな。オレらと変わらんな」


 グラム達は生活資金の獲得と魔物討伐によるダンジョン外の安全確保を目的としている。

 だから未知の階層への挑戦はあまりしないと教えてくれた。


「悪いな。お前なら頂上に行けるかもしれないのに」

「そんなに難しいんですか? グラムさん」

「おい口調、あと名前」

「あ、すいませ―――いや、ごめん」


 これからパーティーを組むのだから仲間だ。

 そう言ってグラムに口調をダメだしされたのは昨日。

 癖でさんを付けてしまった。今後は気をつけよう。


「勇者や英雄が挑んでも最上階にすら到達できていねぇ。最強の未知なんだよ」

「それは凄い」


 この世界の歴史は最低でも三千年以上ある。

 洞窟の壁面に描かれた絵文字の年代から数えて三千年。

 言葉が出来て、国が興って今とそう変わらない文化水準からは千年ちょっとだ。


 その間、誰も最上階に到達できなかった。

 前人未踏の魔の深奥。

 だから無闇に挑むものじゃない。


「今回は上層と呼ばれ出す25階層までいくぞ。準備に入れ」


 グラムはギルドに報告と依頼を受けに。

 リセルは食料の買出しに。

 フレイヤは荷物の点検を。


「俺はどうしたらいい?」

「マコトは...そう言えばまだ武装を揃えていなかったな」

「支援魔法が強いからな」

「オレ達の支援魔法は基本フレイヤが担当だ。今日は様子見だけど、今度からはマコトも前衛に入れ」


 だからいまのうちに揃えておけ、とお金を渡された。


「そうだな。リセルちゃんと一緒にいけば、変な物を買わされずに済むだろ」

「ああ分かったよ。よろしく、リセル」

「う、うん。任せて! (ねぇねぇフレイヤ)」

「(どうされました姉さま)」


 二人がコソコソと囁き出す。

 内容が聞こえず、むずむずする。

 悪口じゃなければいいけど...。


「(これって...で、デートだよね!?)」

「(いいえ。買出しです)」

「(で、でも周りから見たら...こ、恋人だよね!?)」

「(いいえ。姉弟です)」


 内緒話が済むと、なぜかリセルはしょんぼりしていた。


 俺と二人になるの嫌なのかな...?


 二人だけだと気まずいのかもしれない。


「グラムも外に出るし途中まで一緒にどう?」

「そうだな。マコトに依頼の受付を教えるのもいいかもしれねぇな」


 よし。これでリセルさんも安心して―――。


「...はぃ」


 凄い落ち込んでる。


「依頼は今度私が教えますので姉さまとマコトさんは買出しに行ってください」

「フレイヤ!! ナイスっ」

「ん? あーそういうことか。そりゃオレが悪かったな。ま、そういう訳でマコト、頼んだぞ」


 一連のやりとりを理解できなかったけど、リセルが笑顔だから頷いた。


 .........。

 ......。

 ...。


「武装って、高いな」

「うん。なにせ登録しちゃえばメンテナンス不要で、進化もしちゃうからね。最初が高くなるのは仕方のないことだよ」


 鎧や剣、槍、弓が所狭しと陳列した武装屋は寒かった。

 客の数は少なく、店内も薄暗かった。

 客単価をあげないと生活できないそうだ。


「えっーと。マコト君は武装を二つに防具を一式だったよね?」

「《ショートソード》は継続だな」

「あれ、進化してないの? ステータス画面で詳細を開いてみて」


 武装魔法詳細

 壱 《ショートソード》

 ランク:1

 習熟度:1000

 説明:なんの変哲も無い短剣。

 効果:なし

 条件:なし

 進化:《なし》


「進化が《なし》...え、でもマコト君強いよね。進化条件は満たしているはずなのに」

「術者の素質や習熟度が必要なんだっけ」

「うん。《ショートソード》なら習熟度を100、Lvを5以上にすれば色つき 《ショートソード》に進化できるのに」


 初期習得の五色称号に応じた進化をする。

 俺の場合なら《ブラックショートソード》に成るはずだった。


「異世界人、だからかもしれん」


 この世界の魔法はイメージが重要だ。

 支援魔法の習得が理解だったのだから、武装魔法にもきっと近いシステムが組み込まれているはずだ。

 なにせ『黒』の称号を手に入れたのはアストであって、俺ではない。

 意識に色付きなる考え方が根付いていない。


「ま、このままでいいよ。パニックベアを殺せるぐらいのステータスがあるから」

「そうだけど...」


 リセルは不満のようだ。

 結局、弓と矢を購入した。

 弓と矢はワンセットのイメージがあるから、一つの武装魔法に登録される。


 あとは防具だったのだが...。


「あのリセル...着せ替え人形じゃないんだから」

「っ! ご、ごめんね」


 あれも着てみて。

 これもいいかも。

 あ、それもいいね。


 いくつも試着されてリセルが頬を染めたり、首を縦に振ったりとやっている内に時間がかかった。


「これが良いと思う」

「じゃ、それで」


 鋼色の防具。

 ベストのようなスリムさの胸鎧。

 両腕に篭手、両膝に亀の甲羅のようなプレート。

 それらには一筋の赤い線が入っている。


「『赤尖塔』に行くなら赤がラッキーカラーなの」


 ご利益があるのだそうだ。


「その顔...信じてないなー」

「あまりそういうのは、な」

「転生させてもらって、それは不義理じゃないかな」

「そう言われるとそうだな...」


 リセルに押される形で購入した。

 防具は軽いので、街中でも着ておくことにした。


「あ、もうこんな時間!?」

「誰かさんのせいでな」

「んっ...そうですよー私のせいですよー」


 あ、やべ...失言だった。


 なんとか言い繕わないと。


「そうだな」

「はっきり肯定しなくてもいいじゃない...むぅ」

「リセルのおかげで楽しかった。つい時間を忘れちまった」

「......」

「選んでくれてありがと。大事に使うよ」

「ど、どど、どういたしまて...」


 そして真っ赤なリセルと一緒に大急ぎで食料を買い込みに行った。

 俺はラッキーカラーを信じることにした。

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