アスト・ヴェルホロウ
完結目指して頑張ります。(ひとまず完結しました)
ご意見、ご感想お待ちしております。
馬車や冒険者が闊歩する大通りに面した、とある旅宿の一室。
一組の少年少女がいがみ合っていた。
「言いがかりはよしてくれよ」
「証拠ならあるわ! これを見なさい」
少女が紙束を見せる。
そこには少年の悪行がびっしりと書かれていた。
紙をめくるごとに彼の手が震える。
「こんなの嘘だッ」
七枚目で叩き落とす。
バサッと床に散らばる紙を踏みつける。
「僕を貶めるつもりだな!?」
「いい加減にしてください! あなたはもう十三歳です。いつまで姉さまに助けてもらうつもですか!」
「う、うるさい!」
「今日という今日は見過ごせません!」
言葉から断固とした決意を感じる。
少年は舌打ちをする。
「姉ちゃん助けてよ! フレイヤがまた僕を虐めるんだ」
「あなたは...っ!」
少女、フレイヤは拳に力が入る。
「あなたがいると姉さまの邪魔になるんです!」
「ふぇっふぇ...なに言ってんだよ。俺は姉ちゃんの邪魔がしたいんだからそんなの当然だろ」
「―――ッ!!」
「俺は本当は天才だったんだ!? なのに姉ちゃんが俺の才能を奪うから!!」
彼は嫉妬で狂っていた。
「姉さまの力は努力で掴んだ物です! 才能なんて奪ってなどいないっ。あなたの弱さは、ただあなたが弱かっただけです」
「なんだとこのアマッ!?」
少年の怒りが爆発する。
喧嘩になると踏んだフレイヤは迎撃のために拳を構える。
しかし。
「姉ちゃん! 姉ちゃん来てよ!」
「......はぁ」
脱力する。
男としての矜持もなく、姉に助けるを求める姿に呆れを通り越して感情が沸いてこない。
ダッダッダッダ、と階段を上がる音が響く。
「どうしたのアストっ!?」
「姉ちゃん!!」
入ってきたのは可憐な美少女だった。彼女は少年―――アストの姉だ。
彼女はアストが無事だとひと安心する。
「これは...どういうことなの?」
「フレイヤが僕を虐めるんだよ!」
「そうなのフレイヤ?」
「違います。弟さんの悪行を問いただしているだけです」
床に広がった紙を一枚拾って姉リセルに見せる。
読んだリセルの表情が暗くなる。
「ねぇアスト。お姉ちゃん何度もこういうのはダメだって言ったよね?」
「仕方ないだろ。だって僕、弱いんだからさ」
「弱いからって盗みや恐喝をして良い理由にはならないの...ねぇお願いアスト。もう少し真面目に―――」
「うるさいうるさいうるさい!」
「お願いだからアスト、ね」
「だからうるさいんだよ!」
「...とりあえず謝りにいきましょう。お姉ちゃんも一緒に行くから」
アストの悪行は軽度だった。
問題にならない小事なのは意図した必然だ、とフレイヤは心の中で唾を吐く。
「お姉ちゃんだけが行けよ! そもそも僕の才能まで奪うからいけないんだ!
僕は何も悪くない! わかってよお姉ちゃん。たった一人の家族じゃないか」
家族。
その言葉にリセルは弱かった。
「ね、お願いだよ姉ちゃん。一生のお願い」
リセルは説得を諦めて、散らばった紙を集める。
彼女は唇を噛み締めながら部屋を出て行く。
残されたフレイヤにアストは卑しい笑い声をあげる。
「ふぇっふぇ。ほ、ほらこれで問題解決だ。姉ちゃんが金を払ってくれる」
「あなたはっ!」
「姉ちゃんが稼いだ金の半分は僕のものだ! 才能を奪ったんだから当然だよ!」
「ふざけないでください! この愚図がっ!」
「ち、ちがう! 僕は愚図なんかじゃない。正当な主張をしているだけだ!」
「姉さまをこれ以上困らせるな、この寄生虫!」
「―――ッ!! お前、女の癖に僕を侮辱しやがって。もう怒った―――脱げよ」
「.........は?」
「ほら! ぬ、脱げよ! 男の怖さを、お、教えてやる」
アストはずる賢い。
先の悪行被害も知人友人内でおさまっている。
リセルが頭を下げて賠償すれば許される問題だった。
それがいま崩れた。
「脱ぐわけ無いでしょ!」
「姉ちゃんに言うぞ! 姉ちゃんきっと悲しむぞ!」
悲しむだろう。
弟の不出来さに。
「フレイヤは姉ちゃんに命を助けてもらったんだろ。恩返しがしたくて僕たちについて来たんだ。ならほら、僕に奉仕しろよ」
「...意味が分かりません」
「くそがっ! いいから脱げよ!」
ここまで堕ちたかとフレイヤは匙を投げる。
「もう知りません。勝手にやってください」
部屋を出ようとした動かした足が、次のアストの言葉で停止する。
「じゃあ姉ちゃんにしてもらお」
心が一気に凍りついた。
「ふぇっふぇ...姉ちゃんならきっとヤラせてくれる」
我が侭なアストは十三歳になった。
異性とのそういう行為に興味を抱く年齢だった。
「ふざけないでくださいっ!」
振り返ったフレイは鬼の形相だった。
アストはビクビクと怯えながらも気持ち悪い笑みを浮かべる。
「じゃ、分かるだろ。フレイヤが相手してよ」
ぎり、と歯を食い縛る音が響く。
フレイヤはリセルに命を助けてもらった過去があり、多大な恩義を感じている。
それこそ身を捧げるほどに。
「...条件があります。もう二度と姉さまに迷惑をかけないでください。いっそ関係を切ってください」
「ふぇっふぇ。分かった。その条件で良いよ」
ニチャっと豚のように唇を歪ませて了承する。
フレイヤは覚悟を決める。
(これで姉さまが救われるなら...)
屈辱に耐えながらローブを脱ぐ。
「ふぇっふぇ!」
アストの視線が全身を舐める。
フレイヤは腰紐を解く。
するとロングワンピースの裾がふわっと広がる。
ごくり、とアストが喉を鳴らす。
「くっ」
フレイヤは葛藤する。
彼女はアストと同じ十三歳。
異性に裸を見せたことなど両親ぐらいだ。
外道に素肌を晒す事に大きな抵抗感がある。
(...姉さま)
しかしそれをリセルへの想いで押しつぶす。
白魚のような綺麗な手が、小刻みに震えながらワンピースの裾を掴む。
上に持ち上げようとして止まる。
視界が一瞬でも遮られるのが嫌だった。
フレイヤは掴んでいた裾を離し、代わりに鎖骨から手をワンピースの内側に入れて、肩へと移動させる。
指の動きに合わせてワンピースがズレていき、左肩があらわになる。
服はスルっと袖まで落ち、ワンピースから左腕を抜く。
最後に右肩からワンピースを外すと、あっさりワンピースは床に落ちる。
「ぉおおお!!」
「...ぐっ」
アストの目が大きく見開く。
窓から入る日差しによって輝くフレイヤの肌を、食い入るように凝視する。
彼女の金色の髪が、恥辱に歪んですら美しい顔を隠す。
「ふぇっふぇ」
アストがカエルのようなうめき声を出しながら下着姿となったフレイヤに近寄る。
最初は脱ぎ終わるまで鑑賞するつもりだった。
しかし艶姿に惑って我慢できなかった。
「ぼ、僕が脱がしてやる」
「―――っ!」
ぷっくりと肉が付いた、赤ちゃんのような手が柔肌に触れる。
興奮した、生暖かい息が吹きかかる。
そしてついに、アストの手がフレイヤの聖域を汚そうと伸びる。
「―――ぃやぁああああああ!!!!」
「ぐへっ!!」
最後の一線を前にして、フレイヤは感情を抑えきれなかった。
悲鳴が轟き、勢いよく押し飛ばしてしまう。
Lvとステータスによって強化された腕力によって、アストはベッドの角に激突した。
「...ぅう、いた、ぃ」
頭から血が流れる。
アストの視界がおぼろげに滲みだす。
フレイヤは殻に篭もるように、自身を抱きしめて泣きだす。
助けることも、助けを呼ぶことも出来なかった。
薄れゆく意識の中アストが最後に聞いたのは扉を蹴飛ばす音だった。
「―――どうしたの!!」
駆けつけた姉の声は、もう聞こえなかった。
.........。
......。
...。
「ぅう」
俺は後頭部の痛みで目が覚める。
反射的に頭を触ろうとして、腕が動かないことに気づく。
「あれ?」
縄で縛られていた。
「どういうことだ?」
視線を動かすと怯えて泣く少女と、その少女を優しく抱きしめる美少女が視界に入った。
そして二人を隠すように二メートル近い熊のような大男が現れる。
男と目が合う。
その瞳は真っ黒に燃えていた。
とりあえず日本人感覚で苦笑いを返しておく。
「この下種がっ」
「ぶへっ!!!」
思いっきりぶたれた。
なにこれ!?
吹き飛んだ俺は、男に無理やり立たされる。
「ここまで堕ちるとはなっ!!」
「げほっ!!」
今度は腹に拳が突き刺さる。
痛みで立っていられず、片膝をつく。
「フレイヤちゃんの痛みはこんなもんじゃないぞ、アストっ!」
アスト?
「―――ぐっ!!」
再び顔面を殴られた。
「今度ばかりは許せん! 気が済むまで殴り続けてやるから覚悟しろ!」
「ふぉんなはかな!?」
(そんな馬鹿な!?)
「回復はしてやる」
男の体が一瞬光ると、体の痛みが和らぐ。
いや、和らぐどころか無くなっている。
「...魔法、なのか」
「もう一発だ!」
「ぐはっ!!」
もしかしてあれか。異世界、転生、いや憑依なのか...。
「おら、食らえ強姦野郎!」
「ぐべっ」
なんて最悪な異世界憑依だよ!!




