ライブ後
色々あったがカズマはライブを無事、終えることが出来た。
ライブ終わりの反省会を兼ねた打ち上げは、安い居酒屋で行われ、そこでメンバーの連中と酒を飲んだ。
最初は、いきなり改造ギターなんて突飛なものを持ち込んだから、メンバーの誰かからダメ出しされるものだと覚悟していたが、あまりそこには触れられず。
むしろ、言葉数は少なかったものの、普段無口気味のメンバーから褒められた。
「いや、今日のカズ、ゾーン入ってたよね」
「最初はギターに変な仕掛けして来たから、かかってて妙なことでも仕出かすんじゃないかと、心配だったんだけど」
こんな素直な言葉で褒められることはこれまであまり無かったので、シンプルに嬉しかったが、実のところカズマの頭は未だライブの時に訪れた不思議な感触が残ったままで、うわの空だった。
うわの空のままで
「うん、ありがとう。本当、俺どうかしてたよね。」
と、とりあえずなんか言わねばと思い言葉を返した後に、こう付け足した。
「だって、うちらのファンって、ぶっちゃけ顔ファンが多いじゃん?だから、なんか反抗したくなっちゃって・・」
と続けて、照れ臭さを隠そうとした。
「いや、いいよいいよ。今日のカズ、本当に良かったよ」
そうメンバーから言われ、ますます照れ臭くなったカズマは煙草でも吸ってくる、と言って店の外に出た。
煙草をふかしながら、もう一度ライブのことを頭の中で思い返していると、背後から声をかけられた。
ファンの連中か?
そう思い振り向くと、そこに居たのは今日、ライブ会場に向かう最中に逃走劇を繰り広げた相手でもある警察官だった。
「君、今日の昼間にギターに乗って公道を走ってた人だよね?なんであんなことしたの?僕らもこんなの見たことなかったから、必死で追いかたけど、あれって道交法違反でね」
「とりあえず署まで来てもらっていいかな?」
カズマは咄嗟に逃げようと思ったが、ギターは居酒屋の中にあり、まわりを見渡したが、放置自転車など逃走に使えそうな物も無く、さすがにこの至近距離では逃げられない。
と思い、観念した。
しかし、不思議と気分は昂揚したままだった。
警察署の取調べ室に通され、こう聞かれた。
「なんで君はあんなことをしたの?」
カズマは、どこからどう説明して良いやら分かりかねて、思わず口からこんな言葉が出た。
「あの、憧れの人に近付きたくて」
カズマの答えに警官らは困惑し、無言の時が流れた。
すると今度はカズマの耳の奥から音楽が鳴り始めた。




