悪役令嬢とそのメイド、騎士を介抱する。
野外訓練3日目の夕食の最中、魔物の夜襲による足音に警戒する私達の目の前に現れたのは魔物ではなくまさかの人間、しかも騎士様てあった。
騎士「………。」
2人『………。』
私達を敵と判断し警戒をしているのだろうか?はたまた、私達が此処で野外している事に驚いてるのだろうか?
分からない、兜を被ってるせいなのか素顔は疎か、表情さえも分からず仕舞いだ。
しかし何故、騎士様が此処に居るのだろうか?流石に迷子は無いわよね…そう思っていると騎士様の杖代わりとしていた剣がドサッ、と地面に落ちる。
セリスティア「………へ?」
騎士様はまるで糸の切れた操り人形見たいに一気に前倒する。
セリスティア「えええええええっ!!!?」
突然騎士様が倒れた事で私達は一気に驚きながらも、私達は騎士様を介抱し始める。
セリスティア「ちょっ!だ、大丈夫ですか!?確りして下さいませ!ど、どうしよう、レ、レイラ!取り敢えず近くの川へ行ってお水を汲んで来て頂戴!!此方の方は私が見ておくから!!」
レイラ「か、畏まりました!!」
レイラは急ぎ桶を手に持って、近くの川へ水を汲みに向かった。さて、その間に私はこの騎士様をどうにかしないと。
セリスティア「真似事で申し訳有りませんけど、取り敢えず脈拍を確認と鎧を脱がせますのでじっとしてて下さいね。」
私は騎士様の甲冑の右篭手部を外し、右手首に軽く摘みながら脈拍を調べる、うん、とくに何も問題さ無さそう見たいな感じね、なら身体の方が害に掛かってる感じかしら?
それはそうと、次は鎧の方を脱がさないと…。
胴体の部分は確か背中の調整式のベルトをゆるく外して、上から脱がすんだよね、レイラに服を着替えさせられる時と同じパターンに似てるから簡単で安心したわって…。
セリスティア「………ん?」
変ね、ただ普通に鎧を脱がすだけなのに何かが引っ掛かって抜けないっ!
セリスティア「っ〜〜〜せぇぇぇのっ!!」
スポッ。ばいんっ!
鎧を脱がせると大きな弾力が上下左右に大きく揺れる。引っ掛かったのはソフトボール並のサイズを持った大きな胸だった。
更に鎧を脱がしたと同時に被っていた兜がカランと外れ落ちる。
セリスティア「なっ!!」
女騎士「はぁ……はぁ……はぁ………。」
騎士様は騎士様でも、女騎士様だった。
恐らく着ていた鎧のキツさのせいで苦しんでいたらしく、外すと乱れた呼吸だけど時間が経つ度にゆっくりと安定した呼吸へとなる、身体が落ち着いて来た証拠だ。
それにしても、この女騎士様は何故この様な所に?脱がした鎧兜を見たところ純銀製。けど、何処かで見たような気が…。何処だったっけ……。
セリスティア「って、今はそんな事を考えてる場合じゃない!取り敢えず服を脱がして、怪我があるかどうか調べないと!!」
女騎士様の着ているシャツのボタンを外そうと両手を近づかせた瞬間、女騎士様は寝た切りの状態のまま瞬時に左手で私の右手を素早く掴んだ。
セリスティア「ヒッ!?」
女騎士「はぁ……はぁ……ん、んんっ………。」
ゆっくりと瞼を開けて、眼が合った。ルビーの様な綺麗な瞳で私を見つめて。
女騎士「………あ、たは……です、か?」
セリスティア「え?」
今、彼女は何て言ったのか?小さな声で良く聴こえ無かったが、彼女は同じ事をもう一度私に言い向けた。今度は私の耳に聴こえる様な質量の声で。
女騎士「………貴女は、天使様です、か?」
セリスティア「………はい?」
そう言うと騎士様はパタリと私の掴んだ手の力が抜け落ちて、そのまま意識を失った。
セリスティア「えっ!?ちょっ、大丈夫ですか!?」
私があたふたと慌てながら彼女を起こそうとする、その時だった。
ぐぅ〜〜〜〜〜。と何処からか腹の鳴る音が聴こえ出す、一応言っておくけれど私じゃない、何しろ夕食の途中だったからね、じゃあ、もしかして…。
女騎士「………。」
セリスティア「あーーーそう言う事ね。」
結果、騎士様は何1つ怪我は無く、ただ単にお腹が空いていただけであった。
それから暫くして、近くの川で水汲みからレイラが戻って来た直後に私は騎士様が倒れた原因は怪我ではなくて只の空腹で倒れた事を伝え、本来ならば明日の朝食用に保存したガルフ肉の串焼きを調理する様にお願いした。
レイラが焚き火で串焼きを作ってる最中、焼き立ての音と肉の美味しそうな匂いにピクピクと鼻に反応したのか、死んだ人間が生き返った見たいに騎士様は一気に起き上がり意識を覚醒させ、空腹で我を忘れたのか焼き立ての串焼きを大食らい始めた。
女騎士「ガブッ!!ガッ!!ガッ!!」
2人『………。』
女騎士「ガツガツガツガツむぐっ!!?」
セリスティア「レ、レイラ!彼女にお水を!!」
レイラ「は、はいっ!」
レイラは急ぎ、食べた肉で喉を支えた騎士様に水を差し出すと、騎士様は直ぐ様に水を一気に飲み干す。
女騎士「ゴクゴクゴクッ……ぷはぁ〜〜。」
セリスティア「え、えっと、あの、大丈夫ですか?」
女騎士「ああ、多少死ぬかと思ったが何とか助かったよ。本当に感謝するよ。」
礼を言うと騎士様は再びガツガツと串焼きを食べ続ける、彼女の話によると数日前から所持金と食料が底を付き、飲水以外何も食せずに現在まで空腹の状態のまま、この森に迷い歩いていた処を私達と遭遇したそう。
するとレイラは、彼女の着ていた鎧に何か見覚えがあるのかと思い、騎士様に聞き出した。
レイラ「あの、失礼ながら、その置かれた鎧の左胸元に記された炎の様な印、もしや貴女様はセトランド王国直属の『炎の騎士団』の方では?」
セリスティア「炎の騎士団!?」
炎の騎士団って確か…。
この『CRYSTAL SYMPHONIA』の攻略対象が1人であるフレイジェルの父、クリムゾン・F・フレイローズが率いる国王直属の騎士団、団員其々に特徴の大型盾を持ち構え、防衛力最強と言われたあの。
その炎の騎士団に属する女騎士様がどうして…。
レイラ「そう言えばまだ自己紹介がまだでしたね、レイラ・スクルドと申します、クラリスロード貴族家に仕えしお嬢様お付きのメイドで御座います。そして私の隣に居られる御方はクラリスロード家令嬢にして私の主、セリスティア・K・クラリスロード様で御座います。」
カレン「これは御丁寧な挨拶、誠に痛み入ります、カレンと申します。とある事情により家名を名乗り上げる事は出来ませんが何卒呼び捨てで構いませんので。」
家名を名乗れない事情となると、恐らく騎士団、クリムゾン騎士団長に迷惑が掛かる為に名前だけを名乗ったのね。
セリスティア「改めてセリスティアよ、さっきレイラが言った通りの貴族令嬢だけど此方もセリスと呼び捨てで構わないわ、宜しくねカレン。」
カレン「ああ、宜しく頼むセリス。処でセリス、先程、貴族令嬢と言っていたが、何故この様な魔物が潜み住んでいる森の中にレイラと共に居るのだ?」
セリスティア「ええ、実はね…。」
私は自分が父に強く頼んでこの森の中で自分磨きの為に野外訓練を行っている事をカレンに話した。
カレン「成程、つまりセリスは自分が強くなる為に屋敷から離れ、危険を覚悟に此処で実践訓練を行っていると言う事なのか、9歳でありながら凄いな。」
セリスティア「まあね、因みに先程カレンが食べていた串焼きに使った肉は私が倒したガルフの物なの。驚いたでしょ?」
カレン「確かに美味かった。我々騎士団が支給される兵用の干し肉と同じ塩味だが、噛み応えや肉汁の質量さめ悪くない。私には到底出来やしないよ。」
レイラ「御自分で自炊は出来ないのですか?」
カレン「生憎、家事全般は苦手な質でね、我が家は代々、炎の騎士団に属する家系で訓練以外、女を磨く時間は余り無かったからな。」
そう言われたってそんな筈が無い、炎の様な燃え盛る緋色の赤い髪。
ルビーの様な真っ赤な瞳は眼に写り込んだ者を見惚れされるかの様に。
そして美しい顔付き、私が男だったら完全に惚れていたのかもしれない。
カレン「ん?どうかしたかセリス?」
セリスティア「い、いえ、何でも有りません…。」
何て事だ。私も無意識に見惚れてしまった。
カレン「ふぅ、ご馳走様でした。本当にとても良い食事だったよ。」
セリスティア「気に入ってなりよりだわ、あ、何でしたら明日の夕食もガルフ肉にしょうか?」
カレン「それは本当か!?い、いや、しかし、流石にセリスに借りを作りっぱなしのままでは騎士としての立場がな…何を礼すれば良いのやら……。」
御馳走になった御礼を何にしようか迷い悩むカレン、その時だった。私の脳裏にある閃きが現れた。カレンの騎士としての技術を私に叩き込めれば、より凄い実力を得られるかもしれない。
セリスティア「何でしたら1つだけお願いが有るわ、正直これは御礼代わりと言っては何だけれど、私に剣を、ううん、戦い方を教えてくれない?」
カレン「セリスに戦い方を?それなら別に構わないがどうして私に?」
セリスティア「私は今から2年後にエンディミオン魔法学園に入学する予定でね、入学までに自分自身を磨いてるけれど、何時までも独学だけでは限界があってね、だからカレン、貴女の騎士としての技術を私に教え欲しいの、1日でも早く強くなる為に。」
そうセリスティアの覚悟の籠もった真剣な眼差しが、カレンを見つめる。
カレンはセリスティアの眼に嘘偽りが無い事を察すると同時にセリスは何か理由があって強くなろうとしてるのだろうと。
カレン「良いだろうセリス、お前に戦い方を教えてやる。そして一応行っておくが私の指導は厳しいぞ、覚悟は出来てるな?」
セリスティア「はいっ!宜しくお願いします、師匠!!」
確して私は野外訓練3日目の夜にて介抱した炎の騎士団所属の女騎士カレンに弟子入りをしたのであった。