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123/124

123、心の準備が……

 彼は私をジッと見ていたが、軽くため息をついた。


「いや、まぁ、アマゾネスの女性は多くの伴侶を持つ慣習があるのはわかっている。オレも文句を言える立場じゃねーからな。お互い様か……」


「リュックさんのことは、名は伏せて公表させてもらいますわ。ローズが神族になったこと、そして同じ神族の伴侶候補がいると民には伝えます。その上で、二人目以降の伴侶の地位を得たい者には、ハロイ島の学園への留学し、ローズに直接アプローチするように伝えればいいわね」


「それで構いません」


「ローズも、それでいいわね」


「ええ」


「そうと決まれば忙しくなるわね、ふふ」


 母は、女王の顔ではなく、母親の顔をしていた。私が随分、悩ませてきたのね。反省……しなければならないわ。



「じゃあ、私達はハロイ島に戻るわ。ミューには何も言わずに置いてきたから、拗ねているだろうし」


「そう、ワープワームの準備……は、不要ね。リュックさんに運んでもらえばいいものね」


 なんだか母は意味深な笑顔をみせた。


(何よ? 便利な道具だとでも思っているの?)


「では、皆様、これにて失礼いたします」


 彼は、母とお婆様にキチンとした礼をした。そして、私の方を向き、自慢げな表情を浮かべた。

 まるで、キチンと挨拶ができたことを褒めてくれとでも言っているようだ。


(まるで子供ね)


 私の頭の中を覗いたのか、彼はムッとした表情を浮かべた。そして、私の腰に手を回した。


 ふわっと浮かび上がり、私達は天井をすり抜けた。空に浮かんだ瞬間、私は淡い光に包まれた。寒くないように、バリアね。そして、ハロイ島へ向かって加速した。





「ローズ様ぁ、どこに行ってたんですかぁ〜」


 ハロイ島の湖上の街、マスターの店に戻ると、ミューが半べそをかきながら駆け寄ってきた。

 店には、クラスメイトも揃っている。おそらくミューが、騒いで集めたのね……。


「アマゾネスに戻っていたわ。周辺の戦乱はおさまったわよ」


「女神様の城兵が、さっき派遣されたって聞きましたぁ。もう鎮圧されたんですかー?」


「そう、じゃあ、後は安心ね」


 店にはマスターが居た。マスターは旧帝都の調査には行かないのかしら。彼が、マスターが女神様の指令を受け……あっ、ティアさんもいるわね。


 そろそろ、夕方のバータイムのようだが、テーブル席には、ティアさんが子供達と一緒に大きなパフェをつついていた。



 私がティアさんに気づいたのがわかると、彼女はこちらにやってきた。今日も、頭には猫耳がついている。


「ティアさん、こないだは母にいろいろと話してくださってありがとうございました」


「ふむ。いつか話さねばと思っておったから、ちょうどよかったのじゃ。あのあと、大変だったようじゃな」


「はい……」


 すると、マスターもこちらへ近づいてきた。


「ローズさん、おかえりなさい。無事でよかったです」


「マスター、ただいま。マスターもアマゾネスを守ってくださってありがとうございました。あのバリアは、城の魔導士が必死に維持しているようです」


「ふふ、いえいえ。そうですか、よかったです。でも、アマゾネスは魔導士の数を増やすべきかもですね。傭兵という形なら受け入れやすいのかな?」


「そうですね。また、母に進言してみますわ。それにしても、クラスメイトが……」


「ミューさんが、学園に行って、ローズさんが消えたっていう話をしたそうで……」


「やはり、ミューだったのね」


「ひゃっ! だって、ミューに内緒で、マスターやティアさんと出かけて、二人が戻ってきたのにローズ様が戻らないからですぅ」



 私はクラスメイトの方を見ると、みんなが心配してくれていたのがわかった。ホッとした表情の人もいれば、不機嫌な顔をしている人もいる。


「ローズ、だいたいの状況は、ルークが調べてくれたからわかった。旧帝都が妙なことになってたんだな」


「アルフレッド、そうね、私達にはどうにもできなかったわ。アマゾネスは、簡単に滅ぼされる可能性が高いことがわかったわ」


「ローズさん、俺、爺ちゃんにこの件の話をしたんです。他の星から来て地上の一部を理不尽に奪おうとすることは、魔族にとっても許しがたいって言ってました」


「そう、大魔王様が……」


「たぶん、爺ちゃんは、地上の一部を支配した他の星からの移住者の、その次の行動を危険視しているんだと思います」


「地底にケンカ売るということだろうな」


 珍しく、タクトが口を開いた。ルークさんの考えを理解しているという主張かしら。ルークさんの方を向いて、彼が頷くのを待っているようだ。


 ルークさんが苦笑いしながら、軽く頷いた。すると、タクトは、ホッとした顔をしていた。


「なぁ、ルーク、それならローズちゃんの要請で、俺達が人族の国を守りに行っても大丈夫だな」


「バートンさん、そうですね。クラスメイトで力を合わせれば無敵な気がしますね。怪我人はシャラさんがいれば安心ですし、ノーマンさんは結界術士だし」


 シャラさんはニコニコと頷き、ノーマンはチラッと見て目をそらした。反論しないということは肯定ね。


 頼もしいクラスメイトに、私はなんだか胸が熱くなった。この島に来てよかった。こんな友達ができて……。



「おい、ちょっと待った! 学生は勉強が大事なんじゃねーのか。ローズのことは心配しないでいーから」


 なぜか不機嫌な彼が話に割り込んできた。


「リュックさん、でもクラスメイトの中では、いまローズの国が一番ヤバイから……」


「まさか、ルークも狙ってんじゃねーだろーな?」


「ん? 俺が何を?」


「ローズだよ。言っとくけど、ローズはオレの彼女になったんだからなー。手ぇ出すなよ」


「リュックさんが彼氏? えっ、恋人? ローズさんは、別の人のことが……」


「シャラさん、いろいろあったの。どこまで話していいのかわからないんだけど……」



 すると、パフェを食べに戻っていたティアさんが、テテテと再び駆け寄ってきた。


「ローズ、おぬし、正気か? 頭でも打ったのか? リュックなど放っておけばよいのじゃ」


「ティアさん……頭はどこにもぶつけていませんわ」


 彼女は、ジッと私を見ていた。きっと頭の中を覗いているのね。彼は女神様に、何も伝えていなかったのかしら。


「ふむ。騙されておるわけでもなさそうじゃな」


「オレがローズを騙すわけねーだろ。おまえと一緒にするんじゃねーよ」


「なっ!? 隠し事ばかりしておるくせに。シャラ、ローズの想いびとは、コイツだったのじゃ。所長も怪盗も、その正体はリュックじゃ。皆、騙されておったのじゃ」


「ええ〜っ!?」


 クラスメイトは、一斉に叫んだ。


「ちょ、おまえ……はぁ、ありえねー。また、コイツらの記憶を消さなきゃならねーじゃねーか」


「リュックさんが、所長? マジで? でも全然違う」


「はぁ、アル、魔道具だよ。魔道具科のラボの試作品の変装眼鏡」


「じゃあ、怪盗の仮面も?」


「いや、あれはベアトスの魔道具だ。多言語を理解できる翻訳機能付きだから」


「リュック、諦めるのじゃ。コソコソ隠していても、ローズが知っている限り、すぐにバレるのじゃ。それが嫌なら、ローズを諦めるのじゃ」


(えっ? 私?)


「チッ! んなことできるかよ。はー、もー、女神と関わるとロクなことねーな。なんでこんな時間にここに居るんだよ」


「パフェが大きいからじゃ。なかなか子供達が食べ切れぬからの」


「あー、付き合ってられねー。ローズ、行くぞ」


「えっ? どこに?」


「決まってんだろー。さっきはローズの家に行ったじゃねーか」


「ん? 家というか、アマゾネス城ね」


「だから、次はオレの家だろーが」


「へ?」


 彼は私の手をつかんで、店の奥へと進んだ。そして、奥の階段を二階に上がろうとしていた。


「ちょ、ちょっと、どこいくのよ」


「オレの部屋だよ。おまえに見せなきゃ、不公平だろーが」


(不公平の意味がわからない)


 私はクラスメイトの方を振り返った。驚いた顔と、ニヤニヤした顔が混在していた。

 ティアさんは興味をなくしたのか、子供達の所に戻ってパフェをつついていた。

 マスターと目が合うと、やわらかく微笑まれた。


「遠慮はいらねーぞ」


(ちょ、ちょっと、心の準備が……)



【次回予告】

明日投稿予定の分で、完結します。ずっと読んでくださってありがとうございます♪



【次作予告】

本日、夜8時以降になると思いますが、新作「世界を制圧した最強魔王、家出する 〜副題省略」の投稿を始めます。ジャンルはハイファンタジーです。


長い戦乱で遊びを忘れた人々に、遊ぶ楽しさを教え伝えようとする、魔王の戦後復興物語です。家出した魔王を連れ戻そうとする配下から逃げ回りながら、各地を旅する中で、神のたくらみに気づき、そして……(この先は秘密)


こんな感じの、のんびりほのぼのストーリーです。よかったら、ぜひ読んでみてください♪

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― 新着の感想 ―
[一言] このままだと…ノクターン案件ですね…(*´・ω・`)b
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