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115/124

115、三人でアマゾネスへ

「まぁ、とりあえず時間もありませんから、移動しましょう。僕がローズさんから、ポーションを大量に売って欲しいと頼まれたことにしても構いませんか?」


「マスターのポーションを売ってくれるの? ぜひ、お願いしたいわ。特にクリアポーションは貴重品なのよ。魔導兵器がなくても戦乱になるなら、ポーションは、可能な限り欲しいわ」


「あはっ、ほんとにお願いされてしまいました。これで嘘をつかなくてすみますね」


「そうね。アマゾネスは、小国だけど、貧乏ではないわ。支払いは大丈夫よ。白魔導士が少ないから、ポーションはほんとに必需品なのよ」


 私はチラッとミューの方を見た。よく眠っている。誰かが睡眠魔法をかけたのかしら。


「ミューさんは、疲れが溜まっているようですから、このまま休ませておいてあげる方がいいかと思います」


「そうね、そうしようかしら。睡眠魔法をかけてくれたの?」


「はい、シャインがかけてました。シャインも、ミューさんの横で寝てしまっていますが」


(シャインくん? いないけど……あれ?)


 ミューの足元に、水色の美しい毛並みの犬がいた。こんな犬、見たことないわ。もしかして……?


「足元の水色の子ですか?」


「はい、シャインが眠るときは、帽子を脱がせて狼の姿に戻すんです。僕と母親しか帽子を外せないようにしてあるので、店で眠ってしまったら、帽子を脱がせるのは僕の仕事ですねー」


「へぇ。シャインくんってほんとに犬……じゃなくて狼なんですね。しかも、とても綺麗」


「ですよね。母親はもっと濃い青色なんですが、シャインは水色なんですよね。二人ともキレイな色なんですけど」


「ふふ、マスターは、奥さんのこと大好きなのね」


「えっ? あ、はい。大好きですね」


 そう言うと、マスターは少し照れたような笑みを浮かべていた。ふふ、なんだか、かわいい。



 カランカラン


 店の扉が開き、タタタと駆け寄る赤い影が見えた。


(な、何?)


「ちょっと待った、なのじゃ!」


「ティアさん? どうしてそんな服? まるでサンタクロースね」


「うむ。街の子供達とクリスマスパーティーをしておったのじゃ。サンタだとわかるとは、さすがじゃの」


(思いっきりサンタクロースだもの)


「ティア様、今夜は忙しいので、またにしてください」


「なっ!? ライトはしょぼいのじゃ! 妾はまだ何も言うておらぬぞ。妾も、アマゾネスに行くのじゃ」


「えっ? ティアさんが?」


「うむ。女王に話があるのじゃ。だから妾も連れて行くのじゃ」


「ティア様、そんな格好で行くと不審者ですよ。モコモコ髭で性別不明ですし、そんなお祭り騒ぎの服で、戦乱中の国へ行くつもりですか」


「チッ!」


 ティアさんは、舌打ちをして、マスターをジト目で睨んだ後、ぽわんと清楚な服装に変わった。そして、頭には猫耳のカチューシャを付けた。


(猫耳カチューシャは必須なのね……)


「これでよいのじゃな、はよせねば始まるのじゃ、はよ、はよ」


 ティアさんに急かされ、私達は広場へ出た。外に出るとすぐに足元に、天使ちゃん達がクッションを作った。


「できれば、城へワープするのじゃ。国境はもう始まっておる」


「わかりました。ローズさん、クッションに乗ってください」


「ええ」


 私は、天使ちゃん達のクッションに乗った。その次の瞬間、城門前に移動した。





 突然現れた私達に、城の警備兵は驚いた顔をしたが、ティアさんはそれを無視して、城の中へと、タタタと走っていった。


「アマゾネスの皆さん、突然すみません。女神様の側近ライトです。ちょっと急ぎで、女王陛下にお話がありまして、国境はスルーしてこちらに伺いました。通していただけますか? というか、女神様は勝手に入ってしまいましたね」


「えっ? 今の獣人の少女が女神様なのですか」


「そうよ、地上では、ティアという名前を使われているわ。なんだか、とても急いで……えっ!?」


 話している時に、城に近い国境に火の手が上がった。火の雨が上空から降り注いでいる。かろうじて、魔防バリアが防いでいるが、こんな集中攻撃はもたないわ。


 私は頭から血の気がひいた。城門の警備兵も慌てていた。


  「ちょっと、バリアを張りますね」


 マスターは、そう言うと、左手を空に向けた。マスターの手から放たれた魔力は空高く上がり、そして、大きく広がった。


「怪我人がいるようですね……。治癒の雨を降らせてもいいかな」


「マスター、お願いします」


「はい、了解です」


 マスターは、再び、左手を上げ、魔力を放った。すると、うすい黄緑色の霧が、バリア内に広がったように見えた。雨と言っていたけど、細かな霧に見えるわね。


「とりあえず、これでいいかな。中へ通してもらえますか」


「は、はいっ! お通りください、ライト様」


「ありがとう。あ、様呼びは不要ですからね〜」


 私も一瞬の出来事に驚いたが、警備兵は、こんなとんでもない魔導士を見たことがないだろう。ポカンと呆けた顔をしている。




 城に入り、謁見の間に向かうと、その扉の前にティアさんがいた。近衛兵に止められているのかと思ったが、そうではないようだった。中に先客がいるのかしら。


「ライト、遅いのじゃ!」


「すみません、防御バリアが破られそうだったので、この国全体にバリアを張って、治癒の雨を降らせていたので……」


「そんなこと、パパッとやればよいのじゃ。遅いのじゃ。先を越されてしまったではないか」


 マスターは、扉というか壁をジッと見ていた。何をしているのかしら。


「来客なの?」


 私は、扉を守る近衛兵に声をかけた。


「はい、旧帝都からの使者です。ローズ様、あの、同行者は一体どちらさまなのですか。その少女は、謎の美少女だとおっしゃるのですが……」


 私は、チラッとティアさんを見たが、特に秘密にしているわけでもなさそうだ。こちらの会話は気にせず、部屋の中の様子を探っているようにみえる。


「彼女は、女神イロハカルティア様よ。地上では、この姿でティアと名乗られているわ。彼は女神様の側近のライトさん、私が留学している湖上の街の街長よ。そして伝説のポーション屋でもあるわ」


「えっ!」


 近衛兵は、かしずくべきか迷っているようだ。でも、二人とも、こちらを向いていない。中の様子が見えるのかしら。



 すると、ティアさんがこちらを向いた。


「中の様子は、見えるに決まっておる。使者というわりには大勢じゃの。話をする役目が2人、ビビらせ役が14人じゃ。中にいる近衛兵は8人か。客人が暴れると不利じゃな」


「ティアさん、ビビらせ役は少なくても無理よ。母も敵わなかったのだから……」


「ふむ。では、ライトに任せるか? 妾が暴れると城が壊れてしまうからの」


「はい、マスター、お願いします。でも、通常時の戦闘力って……」


「ふふっ、戦闘にはなりませんよ。大丈夫です」


「そろそろ、入ってやらねば、女王が降伏すると言ってしまうのじゃ」


「えっ!? それはマズイわ」



 コンコン!


 ドンドン!



 ライトさんの後に、ティアさんはゲンコツでノックをしていた。


 扉が少し開き、中にいる近衛兵が先客がいると断ろうとしたようだが、その隙間から、ティアさんは、タタタと中へ駆け込んだ。


「子供? 何だ? 今は重要な話をしているのだ。女王、この城の警備体制は、どうなっているのですかな」


 先客が、母に怒りをぶつけている。中の様子は、いつもとは違った。近衛兵は萎縮してしまっている。母も、顔をこわばらせていた。


「妾は、子供ではないのじゃ。おぬしらの話が長いから、待っておれなくなったのじゃ。女王に話があるのじゃ」


(ティアさん、子供のような言い分だわ)


「ガキがなんだ? なぜ、この場に通すのだ。女王、先程の返事は? それを聞けば俺達はすぐに帰ってやるが?」


 私も中に入り、母の方へとゆっくりと歩いていった。マスターは、女尊男卑の国だとわかって、扉の近くに控えてくれている。


「お母様、彼らに従う必要はないわ」


「ほう、これは美しい。王女ローズ様ですか」


 使者は振り返り、いやらしい笑みを浮かべた。


(気持ち悪いわね)



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― 新着の感想 ―
[一言] 以下にもって位 三下な…( ̄▽ ̄;)
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