表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/8

第7章:解決

 2月12日(日)、この日は3人とも7時に起きた。


 しっかり朝ごはんを食べ、今日はどこに行こうかと悩んでいた時、突然龍の携帯が鳴り出した。

 番号はどこかの家から。


「はいもしもし。」


「あっ、もしもし。照美の母です。お早う。」


「お早うございます。どうしたんですか?朝早くから。」


「それがさっき思い出したことがあるの。」


「何ですか!?」


「照美ね、そういえばO.Tがどうとかってぶつぶつ言ってたの。何かの役に立てばと思って。まだ警察にも言ってないのよ。」


「それはすごい手がかりですよ。ありがとうございます。何としてでも助けますから。それじゃあ。」


 電話を切るとすぐに翔太と晴起に事情を説明し、必死に考えた。


「そういえば今までに殺された子もO.Tに会うって言ってたな。なぜそこに気づかなかったんだ!それにしても、何かの暗号か?それともイニシャルか?…なんだろう?」


 晴起は頭をぐしゃぐしゃと掻いた。


「小野の奴だったらO.Tなのにな。」


 翔太はさもおかしそうに言った。


「何で?」


「それは小野先生、つまり小野ティーチャーだからだよ。笑えるだろ?」


 龍の顔は笑っていなかった。むしろ尊敬のまなざしを送っていた。


「それだよ!天野さんは生徒で、しかも友達が少ない。つまり彼女を簡単に呼び出せる人物。それは先生しかいない。ってことはOだから、お・お・小野、岡……?岡だ!岡は担任だし、理由は簡単に作れる。晴起、岡の家を調べて!」


「分かった、ちょっと待って。えーと、岡、岡っと。あった。丁度、N小学校から南西の位置にある。」


「ビンゴだな。早く行こう。俺の指が火を噴くぜ!!」


 3人は早まる気を抑えながら走った。岡先生の家に着くと、門を開け、翔太がインターホンを押そうとした時、ガラスが割れる音が聞こえてきた。


「俺が見てくるから、その間に岡先生を呼び出しておいて。」


 龍が庭に行くと、1つの消しゴムが落ちていた。


 それはクマの絵が描かれているかわいらしい消しゴムで、見覚えがあった。


 それはまさしく照美の消しゴムだった。


 その間に翔太はインターホンを鳴らし、岡先生と話していた。


「安倍と森永どうしたんだ?」


「えーと岡先生に天野さんのことについて聞きたいと思いまして。」


「天野のことは知らないな。今も連続誘拐犯のところにいるんじゃないのか?早く見つかるといいな。」


「先生、なぜ連続誘拐犯と知っているのですか?」


「それは…ニュースでやってたからだ。」


「本当は先生が犯人じゃないのか?」


 翔太は声を荒げた。


「教師に何てこと言うんだ!さぁ帰りなさい。」


「分かりました。また来ます。」


 翔太と晴起が門を出た後、龍がいないことに気付いた。


「あれ?龍は?」


「庭にいるんじゃねーのか?…行ってみようぜ!」


 翔太は言うなり、庭の方へと駆け出していった。


「しょ、翔太!待ってよ!」


 遅れて晴起も後を追った。


 すると、庭には険しい顔をした龍がいた。

 龍の手には消しゴムが握られている。


 突然、頭に龍の声が聞こえてきた。


「翔太、晴起!天野さんはこの中にいる。」


 龍の目線の先には1つの小さな窓ガラスがあった。

 しかし、真ん中が割れていて赤い雫が垂れていた。


「あれは…血?」


「そうみたいだ。天野さんが危機を感じて割ったらしい。どうやって助けたらいいんだ…。」

「そういう時は俺に任せろ!」


 翔太はそう言うと、壁に向かって指を鳴らした。

 指からは巨大な火の玉が出た。


 その火の玉が壁に当たった瞬間、壁が一瞬で焼け、崩れ、穴が開いた。


「どうよ!すげーだろ。」


「…す、すっげーよ。何時の間に修行したんだよ。」


 晴起が感心していると、龍が突っ込んだ。


「そんなことより早く行こう。天野さんが待ってる。」


「はいはい。龍の愛しい人のために僕は戦うぞ!その前に警察に連絡しておこう。」


 晴起が警察に連絡している間に、龍と翔太は乗り込んだ。



 時は少し戻り、翔太と晴起が帰った後、岡 雄一は、


「あいつら、なぜ分かったんだ?それよりも早く天野を始末しなければ。」


 雄一は、玄関の隣の部屋に入り、奥に置いてある本棚の中の一冊を奥へと押した。


 すると、本棚がスライドし、1つの扉が出現した。扉を開けると、照美が手を赤く染め、必死に痛みに耐えていた。


「お、お前!何をしたんだ?」

 窓を見ると、真ん中が割れていた。


「くそっ!腕をもっときつく縛っておくべきだった。」


「…お、岡先生?何でここに?もしかして、あの日呼び出したのは先生?」


「そうさ!気付くのが遅かったな。殺したい奴を呼び出すのに本名を教えるバカはいないからな。O.Tって良く出来てるだろ。」


「そ、そんな…。だ、誰か助けて。」


 照美は恐怖のあまり大きな声を出すことは出来なかった。


「そんな顔をしなくてもすぐに終わるよ。」


 雄一の手には、日本刀が握られていた。

 刀を抜き、鞘を捨て、両手で構えた。

 そして照美の前に立ち、刀を振り下ろした。


「龍君!助けて!」


 照美は心の中で叫んだ。


「その気持ち、確かに届いたぜ!」


 ふと、そんな言葉が頭に響いたような気がした。


 すると突然、壁が揺れ、穴が開いた。


「な、何だこれは!だ、誰だ?」


「先生、俺だよ!」


 翔太が自分を親指で指しながら言った。


「あ、安倍!こんなことして済まされると思うのか?っていうかどうやった?」


「こうやったんですよ。」


 そう言うと、指を鳴らした。今度は小さな火がすごいスピードで雄一に向かって飛んだ。


 雄一は反応できず、火の玉に吹っ飛ばされた。

 雄一が起き上がる前に、龍が照美を抱きかかえ、晴起と翔太の隣に下ろした。


「ありがとう。安倍君、森永君、…龍君。」


「良いってことよ。…ん?何で龍だけ下の名前なんだ?」


 照美は気付き、耳まで真っ赤になっていた。横を見ると、龍はもっと真っ赤になっていた。


「おい!お前ら、何呑気に話してる!こうなっては1人も帰すわけにはいかないな。」


 雄一は日本刀を持ち直し、4人目掛けて走り出した。


 翔太が指を鳴らそうと構えたが、雄一の姿はなかった。


「どこ行った?」


 ふと、気配を感じて翔太は後ろへと跳んだ。

 飛ぶ前にいたところには、雄一が立っていた。


「なかなかいい感覚してるね。実は私も能力者なんだよ。姿を消すことが出来るんだ。すばらしい能力だろ!この能力であの邪魔者も排除したのさ。」


 4人は誰のことを言っているのか分からなかった。


「何だ?分からないのか?小野先生だよ。天野をさらった後に、あいつに見つかってね。」


「お前が小野先生を殺したのか!」


 龍は、怒気を露にした。


「神武が起こった顔を見たのは初めてだな。まぁ話はここまでにしよう。君たちには死んでもらう。」


 翔太が開けた穴から外に逃げても良かったが、外に被害が及ぶのを避けたかったため、3人は外に出ようとはしなかった……晴起を除いては。


 晴起は、恐怖のあまり、逃げ出した。


 雄一は姿を消し、龍目掛けて日本刀を振り下ろした。


 龍は横に飛び、攻撃を回避した。

 次も、その次も。


 不思議に思った雄一は、


「なぜだ?なぜ避けることが出来るんだ?」


 口を開いたのは照美だった。


「それは私の能力のせいですよ、先生。私の能力は人の能力を打ち消すことが出来るの。しかも永遠に。もう先生は能力を使えないわ。」


「何だと!くそっ!まずは天野!お前から死ね。」


 雄一は、怖い表情で照美に向かって突進した。


 翔太は雄一に向けて火鉄砲を放ったが、焦りのあまり関係ないところに当たった。


「くそ!全然当たらねー。」


 照美は雄一の気迫に押されて動けずにいた。


 照美に刃が当たりそうになった時、


「やめろ!」


 雄一の頭に響いた。


 雄一は突然のことでびっくりし、動きが一瞬止まった。


 そのチャンスを龍は見逃さなかった。


 雄一の後頭部を鞘で思いっきり殴った。


 雄一は倒れ、晴起によってパソコンのケーブルで手足を縛られた。


 もちろん雄一は生きているはず…。


 5分後、警察が到着し、雄一は逮捕された。


 4人は事情聴取を受け、開放されたのは午後8時を廻ってからだった。


 結局、壁の穴については話さなかった。


 それは、雄一の家から爆弾が見つかったからだ。


「やっと解決したな!俺ってば大活躍じゃねー?」


「そうだな。翔太にはかなり助けられたな。もちろん晴起にも。それに比べて…はぁ。」


 何を言おうとしたのか理解した翔太と晴起は、龍に声をかけようとしたが、


「そんなことないよ!龍、…神武君もよく頑張ったよ。それにカッコ良かったよ。」


「そ、そうかな?ありがとう。そうだ、手は大丈夫?」


「うん、全然痛くないよ。」


 本当は痛かったが、心配かけまいと思い、嘘をついた。


 翔太と晴起は2人きりにしようと、じゃあと言うとさっさと帰ってしまった。


「あの2人…。俺が家まで送るよ。」


「ありがとう。」


 照美は顔をほころばせた。


 照美の家に行くと、両親は家の外で待っていた。


 母親は、照美を見つけると走り、照美に抱きついた。


 そして大きな声で子供のように泣いた。


 龍は両親にかなり感謝され、食事に誘われたが、3人で食べて欲しいと言って断った。


 そして、そのまま帰宅。


 家に着くと、疲れが押し寄せ、そのまま眠りに落ちた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ