第55話 エピローグ
「作ってきました。チキン南蛮タルタルソースあえを挟んだ斬新なサンドイッチを。」
「確かに・・・チキン南蛮を挟んでるのは見たことがないな。俺はソーセージサンド。」
「それホットドックじゃない?私は卵焼きを挟んだたまごサンド。」
「わたしはお好み焼きサンド。広島風だよ。」
「斬新すぎる・・・俺はチャーハンを挟んだチャーハンサンド。どうだ。」
それぞれの持ち寄ったサンドイッチをみんなで食べる。
いつもの河原で。
それを食べ終えた後、俺は言った。
「霧島永。」
AKが振り向く。
「なんでしょうか。」
「手を出せ。」
AKは、?と言った感じで、右手を差し出した。
俺はそれを両手で包み込む。
「お前が好きだ。結婚してくれ。」
「・・・」
「・・・」
「・・・」
「・・・!!???」
AKの白い肌が、真っ赤に染まっていく。
俺は手を引っ張り、AKを俺の胸に引き寄せる。
「あっ、いやっ、うそっ、まって、そんな」
俺は無理矢理にAKの唇に、唇をくっつける。
AKは息を止めている。
それを見る周りの人間も、驚いて、停止している。
俺はそのままAKを押し倒す。
「俺はお前が好きだ。好きなんだ。」
「~~~~!!」
「あっ、揉んでる。」
「アーハッハッハッハ!!」
「なっ・・・何やってんのよ!!このっ・・・バカーーーーーーーーー!!!!!!」
「はっ。くだらないな。」
「ああ。くだらない。」
マスターメビウスは、石の部屋で、一人、零す。
「それこそが、人間にとって、最も価値のある事。」
「ああ、だから私は、人間が好きだ。」
マスターメビウスは、その部屋に、奇妙な雰囲気を感じた。
ピクリと、マスターメビウスの耳が反応する。上の方についている耳だ。
鉄の匂いがあたりに漂う。石しかない部屋で、だ。
ボボッ、っと炎が吹き上がる。青い炎だ。
その炎が消えると、そこには、一人の悪魔が居た。
着物の十二単のような、大きなシルエットの、
白い肌、黒眼の無い白い目、平安の女貴族のような姿。
「サタン・・・」
マスターメビウスは顔に一つ汗を流しながら、そう答える。
「・・・」
黒目のない目で、マスターメビウスを睨む。
「様・・・」
それを聞くと、サタンは表情を和らげる。
「何をしておる。」
その声は、わざと、ふざけているような、奇妙な抑揚の喋り方だった。
大仰な、能のような喋り方。
「私は何もしておりませんよ。見ての通り、人間を見て、楽しんでいるのでございます。」
マスターメビウスも、わざと、大袈裟に身振り手振りで答える。
ふざけているのだ。
「地獄の門の鍵を、破壊するために、妾が、700年掛け、天界との調停、取引きし、代償に邪神の侵攻を防ぎ、
四方八方走り回り、お膳立てをしてやった、七七鍵肉祭を、お前は、何を、しておるのか、と、聞いているのじゃ。」
サタンの表情は変わらない。
喋り方には怒りの感情もない。
ただ、圧倒的なまでの、圧力があった。
「残念でしたね。まさか、人間の願いを叶えるのに全ての力を使い切るなんて、想定外のことは起きるものですね。」
「ほっほっほ。よい。よい。では、お前には、反省してもらおう。」
「いえいえ、私は、それはもう、今すぐに腹でも切ろうかと思うぐらい、反省していますよ。」
「まさか、お主にそんな残酷な事は、させられぬよ。妾は、慈悲深いからのう。」
「ええ、存じ上げております。サタン様は天界の天使とは違い、地獄の天井よりも、深い心をお持ちでいらっしゃると。」
マスターメビウスの言葉を無視して、
サタンはゆっくりと、着物の裾から、指を見せる。
その人差し指が、マスターメビウスを指す。
「・・・あっ、やめっ」
引きつった笑顔のマスターメビウスが、何か言う前に、ポンッ、という音がした。
その音ともに、マスターメビウスは、5センチほどの、“箱”になった。
その表には、絵が書いてある。
その側面は一面だけ茶色く塗ってある。
そう、ご存知、マッチ箱だ。
そのマッチ箱が、ひとりでに浮いて、サタンの眼の前にふわふわ浮いて移動する。
「さて・・・海にでも捨てるかのう。早ければすぐに、今日にでも、長ければ1000年、2000年漂う事になるかのう。」
そう言うと、マッチ箱はサタンの前から消えた。
そして、石の部屋には、誰も居なくなった。
誰も居なくなった石の部屋は、ゆっくりと、ゴリゴリと、石が擦れる音を出しながら、閉じていく。
またいつか、七祭が行われるその時まで。
未完成悪魔機械化事典 七祭 終わり。




