第28話 新宿での戦い
強い。今度の相手は音だ。音を操る。女が相手。
「ワッ」が厄介だ。
そりゃワッって言うだけであんな攻撃出来るんだからそりゃ強えよ。
一呼吸で近距離にあるもの全て吹き飛ばせる。
かと言って距離を取ればレーザービームみたいな攻撃してくるし、音でどうやってんだあれ。
遠近隙が無い。
オマケに新宿駅のド真ん前でヤッてるから、警察は来るわ一般人は逃げ惑うわ、やりにくくてしょうがねぇ。
いちおー、一般市民に被害が出ないよーに気を使ってビルの屋上で戦ってるが。
相手の方はそんなもの知ったこっちゃねぇえ。って感じだ。
・・・羨ましいな。と思った。
他人を気にせず、思うがまま振る舞う。ある意味、羨ましいよ。その罪悪感の無さが。
「ラーーーーーーーーーーーーーー」
女が声を発する。
その声が聞こえたってことは、その攻撃が俺に届いているという事。
体に熱さが走る。その後で、俺の体に切られたような傷が出来る。
傷は浅い、が、こうも食らうと、キツい。
今俺の体は、傷だらけになっている。お気に入りの学生服もボロッボロだ。
致命傷ではない、が、このままだと勝つ見込みはない。
俺はビルの屋上で、一つ、搦手で行くことにした。
「ラーーーーーーーーーーーー」
またあの攻撃が来る、しかし致命傷にはならない。
俺はそれをかわさず、そのまま反撃をする。
光を結晶化し、槍を作り、2本、それを投げる。
女は攻撃を辞め、「ワッ」と叫ぶ。槍はそのまま弾き返される。
女はどうやら、戦闘のプロではない。所々に甘さが残る。
フェイントへの反応の遅さもその一つだ。
俺はもうそこには居ない。
女はキョロキョロと左右に首を振り、俺を探している。
女が空を見上げ、俺に気づいたが、遅い。
俺はありったけの、俺の力の限界まで、光を結晶化し、巨大な結晶の塊を作る。
トラックの大きさぐらいの塊を、女の頭上に向かって、ぶん投げる。
「ワワッ」
女が防御のために衝撃波を出す。
それが狙いだ。
俺の投げた結晶の塊は、簡単に砕かれる。
砕かれた光の結晶はバラバラと当たりに散乱する。
「元に、戻れ。」
俺がそう命じると、結晶は、光に戻る。
一瞬で、同時に、全ての結晶が光になる。
「きゃっ!まぶし・・・いっ・・・」
女は光の眩しさに目を強く刺激され、その衝撃で体を丸める。
ここだ。
俺は光の結晶の剣を作り出し、
前かがみになって、露わになっている首めがけて、思いっきり剣を振り下ろす。
女を殺すことに罪悪感はあるが・・・
「ごめんな。」
バリンという音が響く。
・・・
この手応え。
首は繋がっていた。傷一つ付いていない。
砕けたのは俺の剣の方だった。
・・・どうなってんだ。音でなにかしたのか・・・?いや、切った感触は、金属をぶん殴ったような感覚だ。
「ワッ!!」
「ぐあっ」
俺はビルの上の看板やタンクや空調設備にどっかんどっかんぶつかりながらふっとばされる。
今日一番のダメージだ。めちゃくちゃ効いた。これは効いた。効きすぎるほどに効いた。
どーなってんだ。
俺は、この時、一つ、嫌な予感がした。
悪魔の契約した人間を倒す。悪魔は宝石になる。それを悪魔が食べる。
俺の体には今3人の悪魔が住んでいる。
っつーことは、まさか。
「おい、お前、お前の能力は何だ?」
答えるかどうか分からねぇが、一応聞いてみる。
女は丁寧に、優しく答えてくれた。
「私の力は音。そして体を金属にする事ができる。」
「もしかして、それは倒した相手から奪った力か?」
「そうよ。私が殺した男が使っていた力。」
「ベルゼブブ!!アモン!!」
俺が叫ぶと、俺の体から、2体の悪魔が、にょきっと生えてくる。
上半身だけ俺の両肩から出てきた。
「どうなってんだ。聞いてねぇぞ。俺にも力を貸せ。」
ベルゼブブは答えた。
「・・・断る。」
そう言ってまた俺の体にしゅっと戻っていった。
アモンは答えた。
「私は人間の戦う術に興味がある。能力的に不利なお前がどう勝つか、楽しみだよ。」
そう言って俺の体に消えていった。
・・・ふざけるな。
・・・どうなってんだ。
・・・悪魔が。悪魔に公平や誠実さを求める俺が悪いとはわかっていても、
この不条理感、理不尽感は消えるもんじゃねぇ。
俺はこう言った。
「お前らは血も涙も無い悪魔だ・・・」
俺の体の中から「悪魔だもん」
という声が聞こえたような気がした。




