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第26話 女子高生の部屋に四大天使がやってきた


私は自分の部屋が、好きじゃない。まず狭い。そして古い和室で、


柱も天井も、妙に歪んでる気がする。


それが私が自由に出来る小さな世界。私の縄張り。


今、そこに帰ってきて、ホッとしている。とんでもない非現実に巻き込まれ、


夢を見ているような浮遊感。それが、やっと地に足ついた気がした。


カバンを掘り投げ、上着を脱ぎ、靴下を脱ぎ、カッターシャツの上のボタンを2つ外す。


そして、ベットの上にドバっと寝転んだ。仰向けになり、ため息を付きながら、天井を見る。


全身に血が流れるのを感じる。ああ、疲れた。


挿絵(By みてみん)


私は考える。今日起きたことを。


一十の事を。


七祭。きっと、そこに行く人間は、みんな、きっと、真剣なんだ。


もしかしたら、MCも、参加したのかも知れない。


人は、法律とか、道徳とか、倫理観とか、社会とか、


そんなものを超えて、叶えたい願い、欲望がある。


そういう人達がいることは、実感として、理解できた。


・・・それが一十。ミラー。


私は・・・どうしたいんだろう。止めたい。そんな事に、一十が参加することは許せない。


そんな事は間違ってる。人を殺して、願いを叶えるなんて、間違ってる。悪いことだ。


でも、私には力が無い。ただの女子高生だもん。悪魔を倒すような、そんな力は持ってない。


大人だって、警察だって、軍隊だって、きっと、止めることは不可能だろう。だって悪魔いるんだもん。


無力。無力な人間は、何も言う権利がない。


ああ、そうか。わかる。願いを叶えるためなら、悪魔とでも取引する人の気持ちが。


「止めたい。辞めさせたい。一十を、取り返したい。七祭を・・・壊したい。」


ぼそりとつぶやく。


けどそれは、自分が無力だということを再確認するだけだった。


ため息を一つ吐く。


その時、部屋の空気が、急に、涼やかになった。


クーラーをつけてるわけじゃないのに、まだ夏の終わりで、蒸し暑かったのに、


コレは・・・悪魔と出会った時の・・・


がばっと身を起こす。


きょろきょろと部屋を左右に見渡す。


おかしい。静かだ。静かすぎる。ボロい木造建築の家だから、外の車の音とか、


バンバン聞こえてくるはずなのに、鳥の声も犬の声も、何も聞こえない。


異様な雰囲気を感じていると、


急に、ぱっと、眩しいと思った時には、そこに居た。


深い青のスーツの、肌が白い、長い黒髪の・・・男が、座った姿勢で、宙に浮いていた。


肌が白い。白人とか、美肌とか、そーいうんじゃなく、本当に真っ白い。コピー用紙のような白。


そしてありえないほどの真っ赤な目。クレヨンで塗りつぶしたかのような赤い目。


黒い髪は光を全く反射しない。平面にしか見えない。


絶対に人間じゃない。


「悪魔・・・」


そう思った。


私がそういった後、その存在は、眉をピクリとし、息をふーっと吐いて。答えた。


「お嬢さん。私は、天使だ。悪魔じゃない。」


「・・・」


て、天使。いや、悪魔が居るなら、そりゃ天使も居るだろう。でも、羽が生えてないし、スーツだし、


急に出てくるし、頭に輪っかもないし、わかるわけ無い。


「それは、すみませんでした。天使さん。なんの用ですか。」


マスターメビウス、リリス、ミノタウロス、それに続いて天使。


完璧に変な世界に入ってしまった。河童も出てくるんじゃないか。


「私の名はガブリエル。四大天使の一人。いや、一人というのはおかしいな、人間じゃないんだから。一匹、一個、一柱、うーん、まぁ一人でいいだろう。」


「私はミカエル。」


ガブリエルと名乗る天使が自己紹介を終えると、突然もう一つの声がした。部屋の隅を見ると、長身の、緑のスーツの男が立っていた。


「俺はラファエル。火を司る天使。」


天井に、逆さまで“座って”黄色いスーツの、ドレッドの髪の男が現れた。


「ウリエル。」


小豆色のスーツの・・・女?が私の部屋の学習机の上に座って現れた。


全員、信じられないほどの美形だ。まさに絵に書いたような美しさ。いや、絵にもかけない美しさだ。


それが、ただの木造建築の、ただの女子高生の部屋に居る違和感がすごい、浮いてしまっている。


挿絵(By みてみん)


「つまり・・・あなた達は・・・四大天使って・・・事で・・・」


ガブリエル「そうだ。君に、力を貸そう。君の願いを叶えよう。」


つる「私の願い・・・?」


ラファエル「七祭を破壊する。」


ラファエルが天井からニヤニヤとしながら答える。


つる「・・・言った。言ったけど・・・」


ウリエル「・・・」


ミカエル「・・・」


この二人は喋らないようだ。ウリエルはこちらをみているが、ミカエルは私を見ず、目をつぶって腕を組んで壁にもたれている。


ガブリエル「私たちとしても、アレは止めたいんだ。」


つる「じゃあ・・・」


ガブリエル「なぜ自分たちで直接行かないのか?だろう。それはちょっと事情があってね。」


宙に浮いていたガブリエルは、すっと地面に降り、地面に座った。


ガブリエル「七祭は、悪魔が人間界と魔界につながる門、その門の鍵を破壊するための儀式なんだ。」


つる「私が聞いていたのは・・・」


ガブリエル「願いを叶える、だろう?それも事実だ。それで人間に戦わせる。その結果悪魔の目的を叶える。二重の構造になっているのさ。」


つる「・・・その門が壊れたら、どうなるんですか?」


ガブリエル「わからない。魔界の法則が人間界に流れ込み、人間界が変質するのは確かだ。だがそれで何が起きるかは予測不可能なんだ。」


ラファエル「七祭はあくまで、人間が戦う儀式だ。そこに天使が直接殴り込んじまうとなー。ま、俺は別にそれで良いんだが、


悪魔も直接戦う事を許すわけで、そーなると、どーなるかっつーと、」


部屋の隅で黙っていたミカエルが口を開く。


ミカエル「戦争だ。」


ラファエル「俺は別にそれでも良いんだけど。そーなっちまうと、まぁ、天使が勝ったとしても、人類は滅ぶな。確実に。」


つる「滅ぶて。」


あまりのことに思わず口に出てしまった。四大天使にタメ口が出てしまった。


ガブリエル「君は知らないだろうが、実際、何度か人類は滅んでる。大陸が一つ海に沈んで消えてしまったこともある。


なので、なるべく戦争にならないよう悪魔と天使で協定が結ばれたんだ。」


つる「滅んだて。ムー大陸的な?」


本当に頭がくらくらしてきた。誰も知らない歴史の真実をポンポン言われて、私まだ16才。16年しか生きてないのに。


ガブリエル「人間を滅ぼすことは私たちの本意ではない。悪魔にとってもね。だから、」


つる「つまり、人間に力を貸すことで、代理戦争的な、間接的な戦いをやってるってことですね?」


ラファエル「へぇ、お前、頭いいな。大学出てるでしょう。」


天使も冗談を言うということに驚きがある。思ったよりも人間的なんだな、と思った。


つる「・・・なぜ私なんですか?16才の、ただの女子高生ですよ。」


ガブリエル「例えば、私たちが強力な力を持つ人間に力を貸して介入したとしよう。それは、天使主導の攻撃となり、まぁ最終的に戦争になって地球が滅ぶ。」


つる「あー、つまり、」


ガブリエル「人間が、七祭を止めたい。辞めさせたい。と願わなければ、我々は動けない。」


さっきの、アレだ。私が、言ったあのセリフだ。


アレで、四大天使を呼んじゃったんだ。


ガブリエル「というわけで、私たちは君に力を貸そう。四大天使四人・・・四匹?四個・・・四枚・・・まぁ四人でいいか。


四人の力があれば、大抵の悪魔は消滅させられるぞ。」


ウリエル「七祭と崩壊させるには、七人の悪魔か、七人の人間のうち、どれか一つを殺せば、分解する。」


今まで黙っていたウリエルが急に喋って、私はちょっとビックリした。


男なのか女なのかわからない、不思議な声だった。


つる「私は・・・誰かを殺したいわけじゃない。」


もし七祭を止めるために、一十を殺せというのであれば、私は嫌だ。


ガブリエル「なら悪魔を消滅させれば良い。悪魔は消滅させた程度で、殺した程度で消えないからな。」


つる「うん・・・?どういう事?」


ガブリエル「悪魔も死んだら死ぬし、消えたら消える。でもまたいつか復活する。それが悪魔さ。」


人間の考え、常識は通じないんだなぁ。と思うことにした。


この辺を真面目に考えても意味がない、悪魔と天使が居るんだから。


つる「ちょっと、考えさせて。」


今私に必要なのは考える時間だ。


考えてもしょうがないかも知れないけど、


とにかく、こんな問題を即断即決するのは無理だ。


本当は誰かに相談したいけど、こんなの誰にも相談できない。


ガブリエル「良いだろう。待とう。君の気が済むまでね、それまでこの部屋の外の時間は止めておこう。」


ガブリエルがそういった後、私は窓の外を覗いた。


何もかもが止まっていた。


雲も、木も、車も、人も、全部固まっている。


私は、ベットに寝転び、考えることにした。


その間、天使は何をするのかと思ったら、私の部屋のものを触っている。


気難しそうなミカエルは本棚の少女漫画を読んでいる。


ラファエルは消えた。


ウリエルは机の上に座って、教科書を読んでいる。


ガブリエルは何処からかけん玉を取り出し、遊んでいる。


挿絵(By みてみん)


・・・なんなんだコイツラは。子どもか。


そう思いながら、私はどうするか考える。けん玉のカチカチという音を聞きながら。


うるせぇな。石投げたろかこいつら。

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