第20話 どうやって帰るかが問題だ
砂浜を砂だらけ海水まみれになりながら、しばらく歩いていると、木々の向こうにぼんやりと光が見えた。
坂を上り、脇道を抜けると、街があった。道路標識を見ると、日本語で書かれていた。
それを見て俺はほっとした。外国に飛ばされてたらどうするかと思っていた
その街は、恐ろしく人が居なかった。確かに日もくれて、夜にはなってるが、ここまで誰にも出会っていない。
電灯もあるにはあるが、どれも古く、俺が住む東京、まぁ東京も森やら山やらの田舎っぽいところもあるんだが、
それに比べると、とてつもなく不気味な街だと思った。
俺は、ある標識を見つけた。
その標識には、“恐山霊場まで40キロ”と書いてあった。
・・・確か、東北の・・・
「なぁ、恐山って、どこだっけ?」
俺はAKに尋ねる。
「・・・わかんない。」
・・・まぁ、日本で、東北には違いない。
その標識からまた暫く歩くと、コンビニが見えた。
俺は人生で、コレほど嬉しいコンビニを見たことはない。ありがとう。24時間営業。
ありがとう。こんなド田舎までコンビニを作ってくれる会社。
俺が勇んで駆けると、AKに止められた。
「こんな深夜にボロッボロで血だらけの学生服で裸足の男が入ったら絶対警察に通報されるよ。」
・・・そのとおりだ。認める。
「お前も胸ぱっくり切れてるだろ。」
「そうだね。」
ということで、俺は学生服の上着をAKに渡した。
コンビニの入口の横に座り、AKの帰りを待つ。
・・・誰も居ない。真っ暗な町。待つ。ただ。待つ。
ウィーンとドアが開く。
帰ってきた。大量の袋を抱えて。
「はい、これ。」
AKは袋から、ビーチサンダルを俺に渡す。
「おお。ありがてぇ。」
これで靴無しでは無くなった。新品のサンダルは、ごわごわして、履き心地は悪かったが。
贅沢は言ってられない。
「あと、食べ物。」
肉まん。牛丼。パン。そしてお茶。
「いただきます。」
俺は肉まんを手に取る。24時間何も食ってねぇ。その上2回も殺し合いをやったんだ。
空腹は限界だった。
肉まんを三口で食べ、お茶で流し込み、
紙容器の牛丼を、もしゃもしゃと口に詰め込む。
AKの方を見ると、肉まんをゆっくり食べていた。女の子らしく、かわいいな。と思った。
AKが肉まん一つ食べ終わる前に俺は牛丼を食べきり、焼きそばパンを袋から取り出し、バクバクと食べる。
美味い。とにかく美味い。俺は今世界一美味い焼きそばパンを食べている。
AKが買ってきた食べ物を全部食べて、やっと一息ついた。という感じだ。
AKがゴミをコンビニの中のゴミ箱に捨てに行く。
さて、どうするか、帰るにしても、タクシーも無けりゃ電車もねぇ。バスもねぇ。
とにかく、今日の夜を何処で寝るか。
AKが帰ってきた。俺は立ち上がり、今晩の宿を探そう、と言う。
AKは街のある方を指さした。
「考えてたんだけど、きっと普通のホテルは泊めてくれないと思う。けど、
あそこなら、行けると思う。」
そこには、明らかに、アレがあった。
ド田舎の街にもあって、一目見りゃそれとわかる建物。
どんな人間も使うことが出来る宿泊施設。
ラブホテルだ。




