リベルトの街
【20】
太陽が西に傾い空が紅色に染まり始めた頃、俺たちは街に着いた。
─リベルトの街─
大きな街だった。プラネと同じく城塞都市のようだ。だが街の規模はプラネの三倍はあるだろうか。大通りにつき始めたガス灯がかなり遠くまで並んでいるのが見える。所々にはプラネでは見ることのない中世感の抜けた近代風の建物を見ることもあった。そして広い道路の奥、街の中心の方に見える群れをなした大きな建物たち。少し歩いただけでここが主要な都市であろうことは容易に想像ができる。
がしかし、それと同時にこの街に明らかな違和感を感じざるを得ない。こんなに立派な道路だというのに人通りが極端に少ない。通りに並ぶ店々もその半分程度しか営業しておらず、その接客態度もどこかよそよそしい。この街からは活気というものが感じられないのだ。そして所々に見受けられる、まるで巨大なハンマーで叩かれたのかと思うような破壊された建物。街を歩く鎧を着た兵士と思われる人の多さ。この国の状況を考えれば容易に想像がつく。
──敵襲に遭ったんだ。
道中魔物を倒せたことで浮かれていた気持ちが再び緊張感を増していく。
この街はプラネからはそう遠くはない。だが街のこの大きさ、聞けば列車も通っているらしく国にとって主要な都市であることは間違いないのだろう。戦争になった時、敵が相手国の主要都市を狙うのは考えてみれば当然のことだ。
「ひどいですね‥‥‥」
隣でセフィアが悲しげな面持ちになりながら言った。
「おそらく強力な遠距離魔法によるものでしょう。一つ一つの被害の程度が家一軒程度なのでかなり遠くから放たれた魔法だと思います」
「かなり遠くって、この魔法はどこから撃たれたんだ?」
「高位の魔導師であれば100キロから200キロ、最上位の魔導師なら500キロほど離れたところから狙った場所に魔法を落とすことができます」
耳を疑った。
「そんなものもう弾道ミサイルじゃないか!」
「はい、高位の魔導師がいれば魔素が尽きるまでは遠距離魔法を打つことができますし、魔素は数日すれば回復します。ミサイルを使うよりも魔導師に魔法を撃たせた方が低コストで済むんです」
コストがなんだか知らないがこの被害を見る限り小型ミサイルが打ち込まれたのと変わらない。平穏な生活の中にいきなりミサイルが打ち込まれたかと思うと‥‥‥考えるだけでもゾッとする。
改めてこの国が戦争の真っ只中にいるのだと痛感させられる。それと同時に彩奈を助けるのにあまり猶予がないということも思い知らされる。
この街は主要な都市だと考えられるが、それでも国の中心からはかなり離れた場所に位置している。見渡す限りでは遠距離魔法による攻撃の痕跡はあるものの、不幸中の幸いと言うべきか街の中で戦闘が行われた様子はない。
だが逆に、国の中心から離れていても主要都市であれば隣国からの攻撃を受けるほどに事態は悪化しているとも捉えられる。国の中心がいつまで保つか。おそらく今のままではそう長くはないことが想像できる。
──なんとしてでも早くアヤナの元に向かわなければ。
考えれば考えるほど焦りや不安といった様々な気持ちが心の中で渦を巻いた。
「焦ってもどうしようもありません。とりあえず今日はこの街で宿をとって明日、国の中心へ向かう列車に乗りましょう」
周りが見えなくなっていた俺にセフィアの一言が突き刺さった。その一言で俺は一気に我に返る。
確かに今焦っても何も進展はない。今やるべきことは今日の疲れを取り、明日を万全で迎えることだ。
「ふぅ‥‥‥
そうだな。焦っても仕方ないな。とりあえず宿を探そう」
「はい!」
セフィアが変わらない明るい笑顔をこちらに向けた。
それにしても一週間生活を共にしてきたせいか、セフィアがだいぶ俺の心を読むようになってきた。全くどこまでもこの少女は恐ろしい。なんてことを思いながら宿探しのため、俺たちは街の中へと歩みを進めた。
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