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大鍋が焦げついたので、幼馴染みと共に魔道具探しの旅に出ます  作者: 輝久実


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タイトル未定2026/06/09 20:02

浮遊島での大収穫から数日後。


エターナル・コアと山盛りのスカイ・マッシュルームを載せた魔導浮遊馬車は、再び王都へと舞い戻っていました。


「おいおいおい! 本当に持ち帰ってきおったか!」


ガイルの工房にコアを差し出すと、偏屈な老職人は見たこともないほど目を丸くし、それから子供のように飛び跳ねて喜びました。


さっそくガイルの手によって、白銀の馬車の心臓部にエターナル・コアが組み込まれます。


ウィィィン……と、馬車全体が心地よいハチミツ色の光に包まれ、次の瞬間、内装の魔導コンロや作業机の魔力出力が劇的に安定しました。さらに、御者席にはこれまでの地上用のレバーに加え、空を滑空するための新しい魔導舵かじがニョキッと生えてきたのです。


「完成だ! これぞ世界に一台の『天空魔導馬車・パエリア号』だ!」


「ちょっとガイルさん、名前のクセが強すぎない!?」


「いい名前なの。ポポは気に入ったの!」


新しい旅の相棒(兼我が家)を手に入れ、メルたちのテンションは最高潮です。こうして、王都での短い準備期間を終え、2人と1匹はいよいよ、世界中の未開の地を巡る本当のグランドツアーへと出発することになりました。


それから、数ヶ月後――。


砂漠のオアシス、氷の洞窟、巨木の森。


パエリア号は、エターナル・コアの無限の魔力で世界中の空を駆け巡り、メルたちは行く先々でたくさんの珍しい素材をギルドへと送り届けていました。


そして今、馬車は美しい南の島々の海をまたぎ、夜のクジラたちが歌う静かな外洋の上を、ゆっくりと自動飛行しています。


「ふにゃあ……お腹いっぱいなの。ポポは一足お先に夢の世界へ行くの……」


今日の夕飯だった「南国フルーツとローストポークの甘酸っぱパエリア」を平らげたポポは、ふかふかの毛布に包まれて、キッチンの隅で気持ちよさそうに寝息を立て始めました。


馬車の小さなバルコニー。


夜風が心地よく吹き抜けるその場所で、メルは手すりに寄りかかり、海面に映る満月を眺めていました。


「……少し、冷えるな」


背後から、温かい温もりがメルを包み込みました。


リュカが自分の大きなマントを広げ、メルを後ろからすっぽりと抱きしめるようにしたのです。


「リュカ……あ、ありがとう。でも、もうすぐ王都を出て半年だね。なんだか、あっという間だったなぁ」


メルはリュカの胸に背中を預けながら、しみじみと呟きました。


「色んなところに行って、大変な魔獣にもたくさん会ったけど……リュカがいつも、私の斜め前で剣を振って守ってくれたから、私、ずっと楽しくて、美味しくご飯が作れたよ」


「……斜め前じゃない」


リュカはメルの腰に回した手の力を少し強め、彼女の首筋に顔を埋めるようにして、低く愛おしそうな声を漏らしました。


「これからは、お前の『真隣』だ。幼馴染みのポジションは、もうとっくに期限切れだろ」


「リュカ……っ」


月光に照らされたリュカの瞳は、出会った頃よりもずっと深く、隠しきれないほどの熱を帯びてメルを見つめています。


メルはもう、自分の胸のドキドキを隠すのをやめました。そっと身体を反転させ、リュカの胸元に手を置いて、その綺麗な目を真っ直ぐに見上げます。


「うん。……私も、リュカの『幼馴染み』はもうおしまいにする。これからは、世界で一番リュカの近くにいる、特等席のパートナーにしてください」


メルが勇気を出してそう告げると、リュカの顔が一瞬で驚きに染まり、それから、これまでで一番幸せそうな、甘く蕩けるような笑みがこぼれました。


「……ずるいな、お前は。そんな可愛いことを言われたら、もう一生離してやらないからな」


リュカの大きな手がメルの頬を優しく包み込み、ゆっくりと顔が近づいてきます。


波の音と、静かな馬車の駆動音だけが響く夜空の下で、2人の唇が、甘く静かに重なり合いました。幼馴染みとしての長い時間から、本当の『恋人』へと変わる、約束のキスでした。


「……うにゃ? なんだか外が急に甘ったるい匂いになったの。パエリアの焦げ付きチェックが必要なの……?」


毛布から顔を出したポポが寝惚け眼でバルコニーを覗き込み、すぐに「やれやれ」と両前脚で目を覆いました。


「やっぱり、ポポはもう寝るの。末永く爆発すればいいの……」


世界中を旅する白銀の馬車。


美味しい料理の香りと、おませなマスコット、そして世界一過保護で一途なヒーローとの甘い時間は、これからも新しい空の向こうへと、どこまでも、どこまでも続いていくのでした。

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