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第31話 ノエマ


 〈 続いて明日のお天気情報ですっ!中継のファシミアさ〜ん?---っはい。私ファシミアでーす。今日の夜もさーむいですね〜。〉


 〈それでは明日の『 パルスマグナ 』のお天気なんですが・・・ジャン! 〉


 〈 大雪になる見込みです。うー。いつも雪かき大変ですよね〜。みなさんも、足腰痛めないようくれぐれも、お気をつけてくださいね〜。はい!それでは他の地方の-


 ピッ


 ぼふっ!


 ふかふかのベッドにうつぶせになって。

彼女の手には光る薄型の端末があった。


 部屋の明かりは、意思を勝手に読み取ってゆっくりと消えていく。


「ふあ〜あ。……夜更かししすぎると明日も学校で居眠りしちゃいそう……」


「もう寝よっか。フィリム。」


「フィー!」


「……おや……すみなさい。」


………


---


 ちゅんちゅん


 ちゅんちゅんちゅん……


 〈 ピーーンポーーン 〉


「ふあっ!」

「ああ……もう行かなきゃ!!」


ドタバタドタッ……バタンっ!


 朝っぱらから盛大にずっこける。

「……っ。」


 彼女は食べかけのバタートースト&オレンジジュースをテーブルに放置し、


 お気に入りの白いふわふわコートを羽織り、マフラーをまいて自宅であるマンションのドアーを開けた。


ガチャッ


「おっはー!ほら学校いくよー!……って。

あんた、まーたほっぺにパンついてるよ……」


ちょん。


 ぱくっ


 お隣に住んでいる同級生『 ミノリ 』が今日も同じ時間にモーニングチャイムを鳴らして。


 知らないうちにほっぺにくっついていた、食べのこしのパンくずを、有無を言わさず彼女は食べた。


「……てかなんかヒザ赤くない?!大丈夫?さっそく心配なんだけどあたし。」


「うん、大丈夫だよミノリ。ちょっとあわててて、転んじゃっただけだから。」


「じゃあフィリム、行ってくるね!」


「フィ!」


「お留守番お願い!あとそのパン食べちゃっていいからね……」


 バタン!


 と、彼女はカバンもなにも持たずに学校へと行ってしまったのであった。



---


 きーんこーんかーんこーん


 きーんこーんかーんこーん


 ・・・


 ガヤガヤ


 ガヤガヤガヤガヤ・・・


  

「ふぅ。……」


 『学校はなんだか色んな声がしてて落ち着かないんだよなあ。』


 『それに……今朝は急いでて、ぜんぶお(うち)に忘れちゃって、それで先生に叱られたし……」



 『なんだか、今日はうまくいかないなー』


「わっ!!!!!」


「ひゃあっ!!!」


「だっはっはっはーーー!どうだ、これがミノリちゃんの十八番(おはこ)。その名も──」


 『 驚く可愛い顔がみたいよ大作戦Ⅱ 』びっくりした?そう!その顔こそがわたしが今もとめているものなのよ!」


「ミノリーっ!」


「やめてよ〜もおーっ!本気でびっくりして……わたし心臓、飛び出るかと思ったんだから!」


「てかあんた今日、カバンごと勉強道具ぜんぶ忘れるとかヤバいよちょっと。もうそれ忘れ物とかのLv.(レベル)じゃないかんね。まじで。」


「もー!いじわるしないで!」


「はーい!また良い顔ごちですー!」


 そんな二人の微笑ましいやり取りを、こっそり窓際で見ていた一人のメガネ男子生徒がいた。


 くいっ。



---



「僕と付き合って下さい!!!」


「……!?」


「……お願いします!!」


「ええ?!」


「えーとっ……ご、ごめんなさい!」


 カーカーカー!


 カラスはご帰宅。

 メガネは敗北。


「え……あっああ……僕も、なんか……

 急にごめん!」


 すたすたすた……ごちん!


 彼女からの返事を聞いたその窓際メガネ男子は、かわいそうに下を向いたまま、


 早足で歩いて学校内にある木に思いっ切りぶつかって倒れた。


 そして、とうとう


 彼の甘酸っぱい青春の(いち)ページ目は、最後まで開かれることはなかった・・・





         fin.




 ………


たったったった!


「ちょーっとあんた大丈夫ー?速攻でフラれたから意識、宇宙に飛んでちゃったんじゃない?」


「おーい。メガネくーん。生きてるかー!おーい。つんつんつん」


 ミノリは窓際メガネ男子をつつきながらからかって遊んでいる。


 しかし彼女は違った。


 『長いプラチナの髪を耳にかけて、僕にそっと手を差し出してくれた。』


『胸元が……その、はだけててなんか……めちゃくちゃ良いにおいがして。もう頭がおかしくなりそうで。』



「ごめんね?なんか……その………」


「……男の子にあんなふうにいってもらえたの……わたし、初めてだったから!……」


「ちょっとだけ!びっくりしたの。」



 『そして、彼女はその友達には聞こえないように僕だけに、こっそり耳打ちした。』


「え?」

『ちょ……待っ───


 彼女の澄んだ瞳は、翡翠色をしてた。


 風が吹いて揺れたプラチナの髪は、ダイヤモンドダストなんか霞んでしまうほど、


 僕には美しく光り輝いて見えた。


 そして窓際メガネ男子の心は、真冬に打ち上げられた季節外れの花火みたいに、空に飛んでいって弾けた───



     Burst Heart


  「わたしね、じつは好きな人がいるの。」


  「だから……」


  「お友達になら、なっても……良いかな?」


     OF


  「あとね?」


  「わたしの真実(ほんとう)の名前は」


  「ノエマ──


  「リュクシエルっていうの。」


      The Girl!



   【俺は多分。いや、この先も一生】


   【あの日、一緒に見上げた星空を俺は】


   【きっと忘れられない。】


 

 闇色の海の一件から数年後───


 少女から一気に大人の階段をすっ飛ばして、

爆発するほど魅力溢れる女性となった彼女──


 高校三年生になったノエマ18才は、放課後の男子生徒のことを思い返しながら、いつものように友人と下校した。



---



「ノエマさー」


「んーなに?」


「どゅふっ!あんた好きな人いたんだ〜」


「……!!?」


 赤面するノエマ。ずっとニンマリしてるミノリ。

ノエマがそのまま下を向いて歩いていると、


 いきなり現れた電柱に頭をぶつけた。


ガンッ バサバサバサ


 ……ドサ。


 ………


ぽんっ


 っと、頭上に降って来た雪から

頭だけ出すノエマ。


「いったああ………」


「一人でなに楽しそうなことしてんのノエマ?あーもうわかった!このままあんたで、雪だるまつーくろっと!」


「やだっやめてー!」


「ほれ!」


ぼす!


「ひゃっ!つめた〜っ」



「そーれ」


べしゃっ!


「もお、ミノリ〜〜〜!!!」


えい!


 ぱしゅっ



そりゃ!

 てい!……


 子どもじみてる。だけど、どこかなつかしい。

ノエマの胸の上には、


 いつもあの龍のペンダントが揺れている。


 そして二人の吐いた白い息が、冬の星空にとけて消えていった。



 そんな二人のことなど知るよしもないフィリムは、自宅でTVを見ながらノエマが朝残していったトーストをはむっとかじって。


 彼女が帰って来るのをずっと待っていた。



---



第一章 バーストハート・オブ・ザ・ガール!

Burst Heart

Of The Girl!

これにて完結。


 ここまでお付き合いいただいた皆さま。

本当に、ありがとうございました!


『 第二章 女子高生ノエマ&アルテナ編 』

にご期待ください!!!

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