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王女の護衛に潜り込んだら、なぜか溺愛されています〜銀髪密偵と変人王女の新大陸遠征〜  作者: 白保仁


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プロローグ

『アストレイン王国新報』

王歴一九五年 第十七号


カトレア殿下、新大陸へ

大陸統一のその先へ――アストレイン王国、空の航路を拓く


 昨年、宿敵ルミエール王国を打ち倒し、長きにわたる戦乱に終止符を打った我らがアストレイン王国。その勝利は単なる一国との戦争の決着にとどまらず、大陸における覇権を決定的なものとした。王都には今なお凱旋の熱が残り、広場では兵士たちの武勲が語られ、酒場では新たな時代の到来を祝う杯が絶えない。


 だが、アストレイン王国の歩みはここで止まらない。王宮は今月、王家主導による新大陸遠征計画を正式に発表した。これまで航海士や探検家たちのあいだで断片的に語られるのみであった彼方の大地へ、ついに王国が正面から乗り出すのである。


 遠征の責任者を務めるのは、第一王女カトレア・アルヴェイン殿下だ。戦時において後方にとどまることなく、自ら危地に赴いて兵を鼓舞したことで知られる殿下は、その武勇と統率力によって、軍・貴族・民衆のいずれからも高い支持を集めている。今回、カトレア殿下自らが遠征飛行船団の指揮を執ることは、王家が本事業に寄せる強い決意を、何より雄弁に物語っている。


 さらに本遠征には、第二王子ルシアン・アルヴェイン殿下も同行される。温和で聡明な人柄で知られるルシアン殿下は、王都の若い貴族や文官たちのあいだでも評判が高く、近年は王宮内の調整役としてもその手腕を評価されてきた。武によって道を切り開くカトレア殿下と、柔和な知性でそれを支えるルシアン殿下。王家の姉弟がそろって新大陸へ赴くことは、今回の遠征が単なる調査事業にとどまらぬ、王国の未来を懸けた国家的事業であることを示している。


 加えて、古い航海記録や観測日誌には、新大陸に未知の遺構や古代文明の痕跡を示唆する記述も見られる。学術的観点からも本遠征への関心は日ごと高まっており、未知の資源のみならず、失われた歴史の発見すら期待されていることが、この計画をいっそう特別なものにしている。


 すでに王都西塔では、遠征飛行船団の整備が急ピッチで進められている。浮遊機関の点検、推進翼の調整に加え、物資の積み込み、空路士・測量士・医師団の選定、護衛兵の再編、さらには現地調査に備えた記録体制の整備まで、準備は着々と進行中だ。発着場には連日多くの見物人が詰めかけ、巨大な飛行船が陽光を浴びて白くきらめくたび、子どもたちの歓声が石畳に響いている。


 もっとも、この遠征には少なからぬ危険も伴う。長距離飛行における浮遊機関の不調、高高度の寒気、突風帯や雷雲域の通過、補給の問題、そして現地にいかなる民が暮らしているのかすら、いまだ明らかではない。しかし、王国がこれまで幾多の試練を越え、そのたびに新たな秩序を築いてきたことを思えば、この大事業もまた、我らの未来を切り拓く確かな一歩となるに違いない。


 アストレイン王国はいま、勝者として守りに入るのではなく、さらなる繁栄を求めて未知へと飛び立とうとしている。その先に待つのが豊穣なる新天地か、あるいは幾多の試練に満ちた辺境か、それはまだ誰にもわからない。だが確かなのは、この遠征が後の世において、王国史の新たな一頁として記されるであろうということだ。


 カトレア殿下、新大陸へ。

 その出立の日は、もう目前に迫っている。

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