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【コミカライズ企画始動!】あやかしダンジョン配信記~底辺配信者の俺、妖怪の地遠野にて美少女座敷わらしと共にダンジョン配信したらバズって大変な事に~  作者: 十凪高志
第九章 魔物愛護団体とオークションダンジョン

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第178話 モンスターの楽園

 オークション事件から数日。


 マヨイガには、奇妙な日常が戻ってきていた。

 いや、日常と呼ぶには少々ホラーが過ぎるかもしれない。


「しくしくしくしく……うっ、ひっく……俺の……俺のつるつるでぴかぴかな美貌が……漬物石の重みで……」


 マヨイガの庭に鎮座する古い井戸の底から、おっさんの嗚咽が絶え間なく聞こえてくる。その声は水面に反響し、不気味なエコーとなって辺りに響き渡っていた。知らない人間が聞けば、間違いなく井戸の底に地縛霊がいると勘違いするだろう。

 まあ、ある意味で地縛霊みたいなものだが。

 元凶である雲外鏡は、お仕置きとして現在マヨイガの庭の井戸に漬物石に括り付けられた状態で沈められている。

 俺も子供の頃によくやられた。


 そして、もう一つ。

 井戸から響くおっさんの声以上に俺の精神を削ってくるのが、縁側から突き刺さる殺意のこもった視線だった。


 じとーっ、という擬音が聞こえてきそうな、ねっとりとした怨嗟の視線。その視線の主は、俺が例のオークションで助け出した少女、火角紅葉だ。

 彼女はオークション事件の後、行く当てがないと言い張るので、一時的にマヨイガで保護することになった。

 しかし、その日からずっとこの調子なのだ。俺が視界に入るたびに、まるで親の仇を見るような目で睨みつけてくる。


「ねえシュウゴ、なんだよあの子! 視線だけで人殺せそうなんだけど!」


 千百合が、心底うんざりしたという顔で愚痴をこぼす。その気持ちは痛いほどわかる。


「俺に言われてもなあ……」


 ため息をつきながら、俺は紅葉の方に向き直った。


「えーと……紅葉さん?」

「……何よ」


 返ってきたのは、絶対零度の声。氷のナイフで抉られるような鋭さだ。


「あの、何か俺、しましたでしょうか。もし何か失礼なことがあったなら謝りますけど」

「別に!」


 ぷいっ、と彼女は顔をそむける。その声には明確な棘があった。


「あんたに関係ないでしょ。あ・ん・た・に・は!」


 強調された最後の言葉が、ぐさりと胸に刺さる。

 こんな調子が、もう三日も続いているのだ。女の子って本当にわからない。ダンジョンで出会った時は、か弱く儚げな美少女、という印象だったのだが。今はぐるるる、と喉を鳴らして威嚇してくる小型犬、それも特に気性の荒いチワワにしか見えない。

 命名、ファイヤーチワワだ。


 俺と千百合が、この重苦しい空気をどうしたものかと顔を見合わせていた、その時だった。

 マヨイガの入り口である茅葺屋根の門の方から、二つの人影が近づいてくるのが見えた。


「ん? 客か?」


 マヨイガは、本来攻略者か俺たちが許可した者しか入れない特別な場所だ。今日の来客の予定などなかったはずだが。

 訝しんでいると、人影はすぐに正体を現した。


「やっほー、キチク! いるー?」


 片方ははつらつとした声で手を振る、マヨイガが出禁にしたい女ナンバーワンこと水無月ユミナ。

 そしてもう一人は、公安の田中さん(仮名)だった。


「ユミナか。それに田中さんも。どうしたんだ、こんなところまで」

「先日は、大変お世話になりました。菊池様、千百合様」


 田中さんが深々と頭を下げる。それに倣って、ユミナもぺこりと頭を下げた。


「あの馬鹿げたオークションぶっ壊し大作戦の協力ありがとう、マジでたすかったわ」

「ああ、お互い様だ。妖怪売り払うとか許せないしな」


 水面ちゃんと同じく、マヨイガの攻略者ではないが、今回の事件の関係者として特別に入室を許可したのだ。

 もっともその特別枠も今回だけだけどな。こいつは出入り自由にしちゃいけない女だ。


 しかし、その殊勝な態度はほんの数秒しか続かなかった。

 田中さんの挨拶が終わるや否や、ユミナはぱっと顔を上げ、にやりと口の端を吊り上げた。その目は、獲物を見つけた肉食獣のように爛々と輝いている。


「さて! お礼は済ませたわね。じゃあ、ここからが本題よ! シュウゴ!」


 呼び方がキチクからシュウゴに変わった。なんでだ。

 お前の好感度上げた覚えはないぞ。


「あんたに頼みたい取引があるの!」

「取引?」

「ええ! 今回、あんたと一緒に戦ったことで、私の好感度はストップ高まで爆上がりしたはずよ! このチャンスを逃す手はないわ! きっとあんたも、私の頼みなら無下には断れないはずよね!?」


 彼女は胸を張り、勝利を確信した笑みを浮かべる。


「下心、隠す気ゼロかよ!?」


 この女、本当に裏表がないというか、欲望に忠実すぎる。

 そもそもこいつへの好感度が上がった覚えはない。

 鈴珠たちに欲情してる限りこいつは敵だ。



「そもそも、本当は正々堂々このマヨイガを攻略して、クリア報酬としてあんたに要求しようと思ってたものがあるのよ。でも、このダンジョン、難易度が鬼畜すぎて全然クリアできないんだもの!」

「そりゃ、あんたが毎回、入り口近くにいる可愛い系の妖怪とか、鈴珠の姿を見るたびに『きゃー!可愛いー!』とか叫びながら全力で突っ込んでいって、返り討ちに遭ってるだけじゃねえか」

「うっ……そ、それは……不可抗力よ! 可愛いものは正義なんだから!」


 顔を真っ赤にして反論するユミナ。

 ていうか可愛いが正義というなら、その正義を襲うんじゃねえ。それを人は悪って言うんだよ。


「まあ、あんたの攻略が下手なのは置いといてだ。欲しいものって、一体なんだよ。聞くだけなら聞いてやる」

「話が早くて助かるわ!」


 ユミナは咳払いを一つすると、真剣な表情で俺をまっすぐに見据えた。そして、きっぱりとした声で告げた。


「私が欲しいのは……マヨイガの庭の一角。あるいは、あんたが管理してるっていう『供養絵額ダンジョン』の使用権よ。もちろん、レンタルで構わないわ」


 予想外の提案に、俺は言葉を失った。

 庭の一角? 供養絵額ダンジョンの使用権? 一体何に使うというのか。


「……何に使うんだ? そんなもん」

「決まってるじゃない」


 ユミナは両手を広げ、まるで世界の真理を説くかのように高らかに宣言した。


「作りたいのよ。モンスターたちの、モンスターたちによる、モンスターたちのための楽園を!」


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こんばんは。明けましておめでとうございます!今年も宜しくお願い致しますm(_ _)m
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