決戦 3
―夜行さん視点―
「おい」と退治屋に呼びかけたものの、退治屋は黒い靄と山本さんを追って先に行ってしまった。
「あのドアホが!!!」
思わず毒づいてしまう。
あの天狗に傷を負わせるくらい人喰いの屋敷は強い、と昨日話したばかりなのにそれをもう忘れたのか!? それともそれを知っていてなお行動してしまうアホなのか……。
退治屋の場合後者だろうな……と俺は深いため息を吐いた。
「ぴぃ……」
ふいにぴーちゃんが俺の肩にとまる。
どうやら退治屋はぴーちゃんも置いていったらしい。
「……俺のことはいい。お前はあのアホを追ってくれ」
そう伝えるものの、ぴーちゃんはいっこうに動く気配はない。どうやら俺のことを心配しているらしい。
退治屋はぴーちゃんに「人を助ける」と語りかけた際に、「人」だけでなく「妖怪」も助けるという意味も含めたようだ。……無意識のうちに。
だからぴーちゃんは俺の側を離れようとしない。
それに、アイツは退治屋の中でも有名な日髙家の血族だ。今はまだまだでも、この先強くなる可能性を秘めている。それこそ――――俺より強く。
ぴーちゃんはそんな自分の主の可能性を信じているらしい。
俺は再度ため息を吐く。
まぁ、使えるもんは使うか。
「分かった。それじゃあお前も一緒に来てくれ」
「ぴい!」
俺の意図など知らないぴーちゃんが元気よく返事をした。
―雪女視点―
「大丈夫なの」
「ええ」
そう答える天狗の羽はまだかすり傷がついている。
天狗は人間に名の知れた妖怪なのに。こんなになって……。一体、『人喰いの屋敷』って何者なの。
私達も実は『人喰いの屋敷』がどうやって術をかけたのか覚えていない。どういう見た目だったのかも、何も……。
私が眉をひそめていると「どうやら着いたようですよ」と天狗に声をかけられる。
その声と共にパカラと音が聞こえたかと思うと、次の瞬間には天狗の隣に首無し馬が現れた。天狗は颯爽と馬に跨ると、私に手を差し出す。
「どうぞ」
「あ、ありがとう」
天狗の手を借りて私も馬に跨る。天狗が前に居るので自然と後ろに座る形になってしまう。
「いいの? 前で」
首無し馬の速度だと傷口に風が当たってしまう。ただでさえ羽に傷を負って空を長時間飛ぶことが難しいのに。
「大丈夫ですよ。それに女性に痛い思いをさせるわけにはいきませんから」
そう言ってから、天狗が首無し馬に合図を送る。と、ふわりと体が宙に浮かんだ。
思わずゴクリと唾を飲みこんだ。
それがこれから『人喰いの屋敷』と戦うからなのか、それとも首無し馬に乗って猛スピードで飛ぶからなのか分からなかった。
ここまで読んでくださってありがとうございます。
雪女についてですが。
雪女は基本的に主人公の陽に対してはあたり強めですが(退治屋なので。当たり前といえば当たり前なんですけれども)。他の人、妖怪に対しては結構優しいです。特に天狗に対しては、天狗が紳士的なのもあって。人一倍優しくなります。




