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マーペリア辺境伯軍の恋愛奮闘記  作者: 宇水涼麻
第三章 新人研修
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4 模様替え

 3日遅れて、後発隊も無事に到着した。後発隊も到着すれば、すごい人数となる。


 この夏のマーペリア領地は大変な賑わいだ。寄宿舎に入りきれなかった中堅層の兵士には、宿を1つ借りきって対応した。それでも足りないので、上位軍人を20名選び、宿を1つ借りきった。

 あと、一月もすれば、毎年恒例の魔獣討伐訓練があり、それで王都へ帰る決断をする新人と魔法士が50名ほどいるだろうから、宿の貸し切りも一月ほどなら問題ない。宿側からすれば、一月は満室なのだから、ありがたいことこの上ない。


〰️ 〰️ 〰️


 後発隊が到着して3日目、騎士団中堅層たちの手が空くのを待っていたのは、軍人たちの中堅層だった。新人たちを鍛練場の中の大外を走らせて、自分達は、模擬戦を始めた。

 カザシュタントにもその報告が届き、カザシュタントとフレデリックがその場へ向かう。ダニエルは、今日も魔法士軍団の練習に付き合っている。二人が鍛練場へ入ると、動きを止めて敬礼する。


「みんなの力を確認に来たんだ。そのまま続けてくれ」

 カザシュタントの指示で、模擬戦は、交代しながら、どんどん進む。カザシュタントの脇では、フレデリックが勝敗やら、それぞれの気になる癖やらをメモしている。カザシュタントもフレデリックに気がついたことを言っていく。

 新人たちは、指示された分を走り終わると、自分たちも、その隣で模擬戦をはじめた。カザシュタントとフレデリックは、彼らの間を歩きながら、一人一人に気がついたことなどを注意していった。

 新人たちは、カザシュタントに直接教えてもらえたことに感動していたし、軍人たちもカザシュタントの指摘が、自分たちの気が付かなかったところだったので、気を引き締め直していた。


 午後からは、カザシュタントとフレデリックも中堅層たちと模擬戦に加わった。我先にと、二人へ挑む。軍人たちも元騎士団たちも、夕方には、ボロボロであった。


〰️ 〰️ 〰️


 その頃、城内では、ヴィオリアとセシルが張り切って、模様替えをしていた。セシルは、昨日は、花屋へ戻り泊まってきた。朝、登城すると、早速ヴィオリアと部屋へと引っ込んだ。当初のフレデリックの心配を他所に、別宅が建つまで、辺境伯城内で暮らすことにセシルが賛成してくれた。しばらく別居まで覚悟していたフレデリックは、顔には出さず、かなり喜んでいた。


 フレデリックが、今まで使っていた部屋は、1人用なので、寝室と居間と二間続きの部屋へと引っ越すことになった。その前に、カーテンやら、ベッドカバーやら、家具やらを、倉庫にあるものの中から、セシルの好きなものを選び、模様替えするという。


「セシルさん、その家具はそのまま、新しいお家で、使ってね。だから、本当に気に入ったものを選ぶといいわ」

 ヴィオリアがわくわく顔で言う。普段男勝りに見えるヴィオリアもこういうことを楽しめるとは、やっぱり、女の子なのだ。


「夏は、もう少し、爽やかな色のカーテンにしたいわね。私たちの部屋も変えよう!セシルさん、午後から買い物へいきましょう!」


「いい生地屋さんを、知ってるんですよ。フランにも好みを聞いておきますね」


「あら?カストにも聞くべきかな?お買い物は、明日にしましょう。今日は家具の交換ね。とりあえず、ベッドは急がないと」


 ヴィオリアの方が張り切っている。一人娘だったヴィオリアは、姉ができたようで、セシルとの話が楽しくてたまらないのだ。セシルは、男どもだけでなく、淑女たちをも虜にする魅力があるようだ。


 そして、夕方、「お掃除が終わらなかったから」と、花屋へ帰ろうとするセシルをフレデリックは、強引に食事へ誘い、町への下りていった。フレデリックにしてみれば、ずっと城内にセシルがいたはずなのに一度も顔を見れなかった寂しさが積もっていた。食事の後、花屋の前までセシルを送る。


「ずっと近くにいたはずなのに…」


 抱きしめようとするフレデリックをセシルが押し返す。


「あなたが王都に行っている間、私は淋しかったわ。あなたも我慢しなさいっ」

と、子供を叱るように優しさを込めて言う。


「わかった。明日は来る?」


「明日は、ヴィオさんとお買い物よ。お買い物が終わったら、お城へ行くわ」


「城に着いたら、連絡がほしいな」

フレデリックがセシルを正面から、両手で腰を抱き、引き寄せる。


「ヴィオさんの前でこんなことできないでしょ?明日も、お夕食に誘ってちょうだい。おやすみなさい。」『チュッ』


 そう言って、セシルはフレデリックの唇にかるーく自分の唇を触れさせ、フレデリックの腕から逃れた。花屋へと入っていき、閉める間際に、振り返る。


「フラン、また明日ね」

扉を閉めて、家の奥へと入っていった。


「そっか、明日も会えるのか」

そう呟いて、フランは城へとご機嫌で戻っていくのであった。


 こうして1週間がすぎ、セシルが城で、暮らし始めた。セシルは、時間を見つけては、花屋のお手伝いに行っている。


〰️ 〰️ 〰️


 3週間が過ぎる頃には、魔法士たちは、走り込みはまだまだだが、魔法練習はだいぶうまくなってきた。


 魔法士の上位者は、5メートル先の的とは別に1メートル先にも的を置き、盾役者が走って来る前に手前の的に中級魔法をぶつけ、盾役者を避けるようにまでなっていた。下位者も、軍人たちの早さにでも盾に当てられるようになっていた。


 魔法士たちの休憩時間には、ベルトソードとモリアスが更に上の練習をする。片方が盾役になり、盾は相手に向けて持つ。二人が平行して走り、走りながら詠唱して、その盾に当てる。走りながら盾に正確に当てるのは難しい。

 それでも、はじめは、初級魔法だったし、走りも遅かった。今では、かなりのスピードで走り中級魔法を当てている。盾役者も盾に防御魔法をかけ続けているので、これも耐久練習になった。

 何人かがこの練習に混ざるようになってきたが、走っている途中で酸欠になり倒れる者までいた。詠唱するだけでも大変なようだ。

 

 魔法の属性にも、難しさが関係しているようだ。生活魔法なら、断然火と水が便利だし、魔法士たちも、火魔法水魔法が得意な者が多い。だが、森で火魔法はご法度だし、水魔法で足元をぬかるみさせれば軍人たちの命に関わる。自然に、氷魔法か風魔法がいいということになるが、王都では派手さが大切だったので、火柱や水攻めの練習ばかりしていたのだ。属性だけでなく、ランス系統(槍)ボール系統を当てるというのも練習していなかった。

 そう思えば、かなりの上達ぶりだ。

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