表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/22

第10話 やさしい午後

 俺の部屋で舞ちゃんが勉強をしている。一応俺が勉強を見ている形では有るけれど、たまに質問される程度で、ほぼ彼女一人でも問題ないペースで進んでいる。

 …………二年生の教科書なのに。


 一度勉強したはずなのに、舞ちゃんが出来ない問題は正直、俺にも難しい。なので俺も復習という形でせっせと勉強することになっている。



 そんな春休み。


「舞ちゃん、そろそろお昼にしようか?」


 舞ちゃんが顔をあげる。


「そうだね。そうしよう、なにか作るね」


「ありがとう、お願い。なにか手伝うよ」


「うん、お願いね」


 俺一人だとパンとか麺類だけになっているだろうところ、“凝ったものでなくても良ければ”ということで、毎日舞ちゃんに昼食を作ってもらっている。

 おかげで充分おいしい昼食が食べられる。きっといいお嫁さんになれるに違いない。






 食器を片付けてリビングへと戻ると、ソファーに座ってテレビを見ていた舞ちゃんと目が合う。彼女はニッコリ微笑んで自分の膝をぽんぽんと叩く。ショートパンツから伸びる白い足が眩しい。


「今日も?」


「あたりまえです。さあ、どうぞ」


 あきらめてソファーに横になり彼女のふとももに頭を乗せる。柔らかい感触が伝わってくる。膝枕ってやつだ。

 お昼を作ってもらうかわりに膝枕をしてもらうことになった。――おかしい。労働と対価が間違っているような気がする。何故だ?

 とはいえ、この膝枕、一度してもらうと心地よくて落ち着く。食後とあってそのまま寝てしまうこともしばしば有る。一方的に得しかしてないんだけど。

 …………やっぱり、意味がわからない。


 彼女は嬉しそうに頭を撫でてくれる、気持ちいい、やばい。

 今日はちょっと眠い、というか寝る―――------………‥‥‥・・・






 ……起きると舞ちゃんと目が合う。


「おはようございます」


「……おはよう」


 まだちょっと、ぼぅっとする。身体を起こし時計を見ると一時間ちょっと寝ていたみたいだ。


「ゴメンね、寝ちゃった」


「全然いいよ。私で良ければ、いくらでも寝ていいよ」


「いやでも、舞ちゃんなにも出来ないじゃん」


「悠くんの寝顔を見ていらるし。それに私の身体が気持ちいいってことだよね? 嬉しくって」


 間違ってはいない。間違ってはいないんだけど…なんか違う。


「それ、他の人の前で言わないでね」


「う~ん、そうだよね。私の身体が気持ちいいって知ってるのは悠くんだけでいいよね」


「いや…………。もう、それでいいや」






「そろそろ散歩にでるけど、どうする?」


 食後の休憩を取ったあとは二人で散歩に出るのが日課になっていた。少しは外に出て運動しないとね。


「行くよ、もちろん。ちょっと着替えるね」


 舞ちゃんは膝丈のスカートとパーカー姿に着替えてきた。これはこれで可愛い。俺もジャケットを着ながら声を掛ける。


「んじゃ、行こう。今日は川のほうでも歩こうか」


「うん」


 天気もいいし少し遠出することにしよう。





 堤防に登ると遠くに山が見え、風が吹き抜けていく。


「ぅわ~、風が気持ちいいね」


「そうだな~」


 そのまま手を繋いで歩いていると、河川敷で子供たちが遊んでいるのが見える。それを見て、三人で遊んでいた頃を少し思い出した。


「悠くん、川まで降りてみない?」


「いいよ」


 舞ちゃんと川辺に行くなんて、何時以来だろう、懐かしいな。


「悠くん、石投げ得意だったよね~」


「そんなことないぞ。男子は皆やってたから同じくらいだろ」


 まあ、あの頃の舞ちゃんから見たら上手く見えたのかもな。


「そうかな~? ちょっと投げてみてよ」


「いいけど」


 良さそうな石を探して拾う。


「久しぶりだな」


 久々だったけど上手く跳ねてくれる。


「ほらほら、上手いよやっぱり」


 舞ちゃんに褒められるのが嬉しくて、調子に乗ってしまう。




「腕が少し痛い」


 投げすぎた。


「大丈夫?」


 舞ちゃんが腕をさすってくれる。


「大丈夫、大丈夫」


「帰ったら揉んであげるね」


「本当、大したこと無いから。心配してくれてありがとう」


「本当? 痛かったらいつでも言ってね」


「大丈夫だから。さぁ、行こう」


 再び手を繋いで歩き出す。







 帰り道、自転車に乗った女の子が声を掛けてきた。


「あれ、舞華ちゃん? 元気……そうだね。デート中かな?」


 俺たちの方を見て、にやにや笑っている。舞ちゃんの友達かな?


「えと、デートというか、お散歩」


「散歩って、デートとは違うの?」


「ちょっと違う気がするけど、どうだろ?」


 舞ちゃんが尋ねるように俺の方を見たので答える。


「俺も違う気がする、気分の違いかな。それで、お友達?」


「うん、早川葵ちゃん、同じクラスの」


「はじめまして、笠原先輩。話はよく聞いてますよ、舞華ちゃんから」


 どんな話になってることやら。悪くは言われてないだろうけど、大げさになってるんだろうな。でも舞ちゃんの友達だし仲良くしときたいな。


「はじめまして、早川さん。よろしくね」


「よろしくしましょう、先輩。ぜひアレコレ聞かせてください」


 早川さんの目が怪しいんだけど。


「え、えーと……」


 アレコレってなに? アレコレって。なに期待されてるの?そんな話すようなことしてないから。


「そ、それで、葵ちゃんはお買い物?」


 焦っていると、舞ちゃんが話に割って入ってきて話を変える。


「お母さんに『休みだからってゴロゴロばっかりするなっー』て言われて無理やり」


「そうなんだ。頑張ってね」


 舞ちゃんが手を振りながら言う。


「なに? 早く行って欲しいの? ふーん、二人きりがいいんだ」


「え? いや、そんなことないよ。お買い物なら早く行ったほうがいいかなーって思っただけ。うん」


 舞ちゃんが少し慌ててて可愛い。


「まぁいいや、それもそうだし。明後日ちゃんと聞くからね。それじゃ先輩失礼します。舞華ちゃんもまたね」


「うん、じゃあ早川さん元気でね」


「またね、葵ちゃん」


 早川さんは元気に去っていった。




「明後日会うの?」


「もうすぐ新学期だから、文房具とか買いに行こうって。もう一人、高橋翠ちゃんと一緒」


「そういえば。もう新学期か」


 うっかりしてた、俺も色々買いにいかないと。


「だから、昼からちょっと出かけるね。あ、お昼は一緒だから」


「了解」


 丁度いいから俺もその日に買いにいくか。一人で家に居ても寂しいしな。


「そしたら俺も昼から出るから、途中まで一緒に行こう。駅前でいいの?」


「うん、駅前だよ。ふふ、一緒におでかけだ」


 舞ちゃんが少し嬉しそうだ。帰りも合わせられたらいいな。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ