選択する話
目の前が真っ暗になったはずなのに、私は真っ白い空間に居た。
「私、死んじゃったのかしら」
ここは、あの世とこの世の狭間なのだろう。走馬灯とか見るのかな?
『狭間なのは正解。でも、まだ死んでない』
「誰?」
『誰でも良いし、誰でもない。まだ死んでないのは事実』
どこからか声が聞こえてくる。聞き覚えがあるようで、知らない声だった。
『ここで貴女は選ばなくてはならない』
「選ぶ?」
『そう。過去か未来を』
「過去か未来?」
『過去に戻ってやり直すか、このまま未来に行くか』
過去に戻ってやり直す?
『みんなのトラウマにならない過去を作ることが出来る』
「え?」
『記憶を持ったまま過去に戻れる。クロードに優しくして、クリストファーにベタベタしないで、カイムにも失言しない。そういう過去が作れる』
それって、悩み解決って事?
『そう。過去を選ぶなら』
魅力的な話だ。私はトラウマ製造しないで成長できるって事か。
『過去を選ぶ?』
「待って。過去を選んだ場合、今の私はどうなるの?」
『このまま刺されたことが原因で死ぬ』
う~ん。それは嫌だな。
『選べるのはどちらかだけ。過去か未来か』
だったら私は・・・。
「未来を選ぶわ」
『どうして?せっかく、やり直せるのに?』
「やり直したい気持ちはある。でも、それって向き合うって決めた私を否定する事。他の事も否定する事になる」
『否定して何が悪いの?』
「悪くは無い。でも、私が否定したくないの。私の事を。それに、未来はもう決めてあるから」
『そう。貴女は未来を選択するのね』
「うん」
『じゃあ、目覚めなさい』
そうして私は目覚めた。
目が覚めると、そこは寮の自室のようだった。
「アンリ?気が付いたの?」
「セリーヌ・・・!?」
「良かった!!今、お医者様を連れてくるわ」
何故セリーヌが居るのだろう。そんな疑問を他所に私は医者の診察を受けた。
診察の後にセリーヌから話を聞いた。なんと、私は2週間も意識が無かったそうだ。それは実家まで連絡が行くはずだ。動けない両親に代わってセリーヌが駆けつけてくれたらしい。
「ありがとう」
「本当に心配したんだから!あ、男どもは締め出したから。ここは女子寮です!!って」
部屋には豪華な花が3つ活けられていた。駆けつけた面子はなんとなく予想が着いた。
私を発見したのはカトレアだそうだ。やはり、手紙の事が気になって中庭に来てくれたところ、傷害現場を目撃したらしい。シャルロッテ・アーベルはすぐに拘束されたと言う。
「あの人、様子が異常だった」
「人を刺すなんて異常者よ。考えないで、取りあえず休んで」
「もう元気なのに・・・」
私が休んでいる内に月日は過ぎ去り、あるイベントが近づいていた。そう。卒業パーティーだ。
私が選ばなくてはならない日。未来を選んだ意味のある日だ。
約束の通り、セドリック先輩がエスコートに来てくれた。
「アンリ君。心配した」
「ありがとうございます。もうすっかり大丈夫です」
今日の私はお気に入りの青いドレスに髪をハーフアップにしている。事前に青いドレスを着ると話していたためか、セドリック先輩は青いチーフを胸ポケットに入れていた。
卒業式の後に卒業パーティーが始まった。卒業生代表としてクリストファーが挨拶する。みんなが思い思いに踊ったり食べたり飲んだりしている。
そんな中、私とセドリック先輩、クロード、カイムにクリストファーが中庭に出た。口火を切ったのはクリストファーだった。
「アンリ・ムシュー。答えを聞かせてくれるかな」
「はい。私の答えは」
私の選択した未来は・・・。
「セドリック先輩・・・よろしくお願いします」
そう。私はセドリック先輩を選んだ。あの白い空間で過去と未来を選択させられた時、父と母が離婚せず、隣国へ行かなかったらセドリック先輩に会えない。そんなのは嫌だと思ったのだ。
「3人に対しては思うところもあるのだけれど、これは恋とかそういう気持ちではないの。ごめんなさい」
「謝る必要は無い。君が決めることを認めると言ったんだ」
「あ~あ。真実の愛が勝てなかったなんて・・・」
「・・・ああ」
選ぶのは本当に辛かった。でも、自分の気持ちには嘘はつけない。
「夢みたいだ・・・」
「夢にしないでください・・・セドリック」
「ありがとう。アンリ」
「僕、来年ベザント国に留学に行こうかな。それで、思いっきり邪魔したい」
「クロード、諦めろ」
「「「さようならヘンリエッタ」」」
さようならヘンリエッタ。もう、貴女の事は思い出さないかもしれない。でも、私の一部には変わりないから。
「ありがとう。さようなら」
こうして私の1年間の留学生活は終わった。そして、ベザント国でこれからの未来は続いていく。愛する人と共に。
最後までお付き合いいただきありがとうございました。
とりあえず完結です。




