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Ep.8 羞恥心で逃げ出した元勇者

・ 隠密任務:『羞恥心からの超高速脱出』

「……いられない。……こんなところに、一秒だっていられるか!!」


カイルは赤くなった顔を両手で覆いたい衝動を抑え、気配を殺して天幕の裏側からこっそりと抜け出しました。病み上がりで足元がおぼつかないはずなのに、「恥ずかしさ」という名のアドレナリンが、かつての神速を呼び起こします。


1. カイルの独白:

「……バカか。……あいつら、全員バカだ。……なんでそんな、……ろくでもないイタズラばっかりする僕を……。……っ、……あぁぁぁ恥ずかしい!!」


2. 森の闇へ:

カイルは焚き火の明かりが届かない、深い茂みの中へと飛び込みました。ひんやりとした夜風が、火照りきった頬に心地よく触れます。


【現在のステータス:逃亡(羞恥)】

* カイル: HP 15 / 20(羞恥心による心拍数上昇)

* 状態: 「ゆでダコ状態(赤面)」

* 特性: 『愛されすぎてパンク寸前』




・ 闇夜の「一人反省会」

大きな木の根元に座り込み、カイルは膝を抱えて、ようやく深く息を吐き出しました。

真っ暗な森の中。でも、不思議と怖くはありません。なぜなら、数メートル先には、自分をあんなに温かく語ってくれる「家族」がいることを知っているからです。


「……ガイアスのやつ、……『特等席で眺めてやる』なんて言ってたクセに……。……セシリアだって、……洗濯物、……本気で怒ってなかったのかよ……」


思い出されるのは、自分の愚かなイタズラと、それに付き合って笑ってくれた彼らの顔。

カイルは暗闇の中で、誰にも見られないように、ふっと幸せそうに、そして最高に照れくさそうに笑いました。




・ 忍び寄る「無言の気配」

あなたが一人で「……っ、……あー!!」と頭を抱えてのたうち回っていると、背後の草が、ガサリと揺れました。


1. 誰かの気配:

カイルが天幕から消えたことに、誰かが(おそらくあの鼻の利く魔王が)真っ先に気づいたようです。


2. 逃げ場の喪失:

「……おい。……病人が夜遊びか? ……それとも、……寝たふりをして『大事な話』を聞いちまったから、居たたまれなくなったか?」

ガイアスです。彼はカイルの逃走経路を完全に読んで、先回りして待っていました。



カイルは、真っ赤になった顔を隠すように勢いよく立ち上がると、ガイアスを指差して(指が少し震えていますが)叫びました。


「……き、聞いてない! 何のことだ! 僕はただ、風邪が治ったから……夜の空気が吸いたくなっただけだ!! 全然、一言も、……『相棒』だなんて、そんなマヌケな話、聞いてないんだからな!!」


全能の神だった頃の威厳など微塵もありません。むしろ、図星を突かれて必死に虚勢を張る、ただの「照れ屋な子供」そのものです。




・ガイアスのニヤケ面:『観察者の愉悦』

ガイアスは腕を組み、焚き火の明かりを背負って、獲物を追い詰めた猛獣のような……いえ、最高に意地の悪い「兄貴」のような笑みを浮かべました。


1. 魔王の指摘:

「……ほう。聞いてねえのか。じゃあ、なんでそんなに耳まで真っ赤なんだ? おまけに、さっきから『あー!』とか『恥ずかしい!』とか、森中の鳥が逃げ出すような声で独り言を言ってたのはどこのどいつだ?」


2. カイルの窮地:

「……っ、……それは、……喉の調子を確かめてたんだよ! 風邪が治ったかどうかの、……発声練習だ!!」

カイルは後ずさりしますが、背中が大きな木に当たり、退路を断たれました。


【現在のステータス:絶体絶命(羞恥)】

* カイル: HP 15 / 20(心拍数MAX)

* 状態: 「完膚なきまでの図星」

* 特性: 『嘘が下手すぎる元・神様』




・ 闇夜の「相棒」の時間

ガイアスはゆっくりと歩み寄り、カイルの隣にどさりと腰を下ろしました。

彼は無理にカイルの顔を覗き込まず、ただ静かに夜の森を見つめます。


「……いいじゃねえか。……全部聞いたんなら、もう隠し事はなしだ。……お前がどれだけ俺たちを困らせても、俺たちがどれだけお前を甘やかしても、……それが、この『イタズラ団』のルールなんだよ」


彼は懐から、冷めかけた小さな水筒を取り出し、あなたに差し出しました。中身は、いつものあの苦すぎるコーヒーです。


「……飲め。……少しは顔の熱が引くぜ、相棒」




・境界線の終わり

カイルは震える手でその水筒を受け取り、一口啜りました。

……やっぱり、死ぬほど苦い。

でも、その苦みが、恥ずかしさで爆発しそうだった頭を、少しだけ冷やしてくれました。




かつて刃を交え、今は隣で不器用にコーヒーを啜る「魔王ガイアス」と共に、静かな焚き火の前で、あなたたちの歩んできた軌跡を見つめ直します。



・ 過去:勇者と魔王、決別の刻

ガイアスは、焚き火の爆ぜる音を聞きながら、遠い目をして語り始めました。


「……覚えているか、カイル。あの城の最上階で、お前が俺の心臓を貫こうとした時のことを。あの頃の俺たちは、互いの正義を証明するために死に物狂いだったな」


1. 宿敵としての絆:

カイルが「勇者」だった頃、ガイアスは超えるべき最大の壁であり、同時に勇者である「彼」の力を誰よりも認めていた唯一の理解者でもありました。


2. 神への変貌:

ガイアスを倒した後も、世界を救いすぎて「神」へと至った「彼」。彼はその過程を、魔界の深淵から(あるいは敗北の淵から)じっと見守っていました。

「神になったお前は、確かに強かった。だが……あの時のお前は、一滴のコーヒーの苦みさえ忘れた、ただの冷たい法則だった」




・転換:泥まみれの「再会」

全能を失い、Lv 1の無力な姿で地に墜ちた「彼」を、一番に見つけたのはガイアスでした。

「……崖の下で、虫の息だったお前を見た時、正直に言えば笑いが止まらなかったぜ。あの高慢ちきな神様が、泥にまみれて『死なせてくれ』と泣いている。……だが、同時に思った。ようやく、俺の知っている『勇者の少年』が帰ってきたんだとな」


* 魔王の荒療治:

「彼」が自傷し、嘘をつき、絶望に沈んでいた時、魔王は優しくなだめるのではなく、わざと突き放すような言葉で「彼」をこの世に繋ぎ止めました。魔王にとって、あなたは「救う対象」ではなく、共に地獄を這いずり回る「相棒」だったからです。




・今:不自由な日常の甘美さ

今、目の前にいるガイアスは、カイルが悪戯で仕込んだ「砂糖たっぷりのクッキー」を、顔を顰めながらも完食しています。

「……カイル。今の自分はどうだ? 全能だった頃よりも、今の方がずっと、面倒で、うるさくて、……そして、面白いだろう?」


1. カイルの肯定:

カイルは微笑み、コーヒーを啜りました。首の傷は消えませんが、それはもう絶望の印ではなく、ガイアスと共に歩んできた「生きた証」です。


2. 新しい約束:

「神」としての彼は死に、「勇者」としての物語も終わりました。けれど、今ここにあるのは、一人の男として、魔王と肩を並べて明日何をして遊ぼうかと語り合える、「終わりのない、くだらない日々」です。


【現在の二人のステータス】

* カイル: Lv 1 / 悪戯の先代勇者

* ガイアス: 魔王(引退気味) / カイルの最大の理解者

* 状態: 「なぎ」(過去を悔いるのではなく、今を慈しむ時間)




・静かな、未来への一歩

「……さあ、夜が明けるぞ。次は聖女様にどんな悪戯をするつもりだ? 俺も一枚噛ませろ」

ガイアスが不敵に笑い、大きな手を差し出しました。

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