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ハルノオト〜聖女召喚の欠陥品ー俺は男だ!〜  作者: 島村都心
第二部【王立ロマリア学院1年】
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第94話 演武会開催

 学生会でメンバーが集まり、演武会の打ち合わせが開始された。

 演武会は、将来の国防を担う学院生たちが、現在の実力を披露することを目的とする。

 武技においては剣や槍その他の武器を用いた模擬戦、集団戦などを、魔術においては攻撃魔術、防御魔術を実演する。合わせて個人戦の闘技会も開催される。闘技会は武技、魔術いずれでも参加できるが、1対1の個人戦の場合、総じて魔術は詠唱時間という不利があるため、武技の参加者がほとんどだ。


 高々学生のお披露目会と侮るなかれ。学院は世界最高の教育研究機関である。

 ここで研究された新たな武技や魔術が演武会で披露されることもしばしばある。それを騎士団や魔術師団で発展させて、主力戦闘方法となったりもする。例えば、二人で魔術を行使する連携魔術や複数人で行使する集団魔術も、その種は演武会で生まれた。

 現在、武技や魔術の授業は演武会に向けての練習で真剣そのものだ。


 闘技会は希望者のみが参加するが、ここで実力を示せば王国や有力な領の騎士団などへの道が拓けるため、その道を目指す者は必死で上位目指す。


 演武会は学院内にある闘技場で三日間にわたって行われ、有観客である。

 国王陛下を始め、王国幹部、騎士団や魔術師団の団員、王都滞在中の貴族、学院生の家族などの他、一般市民も観覧することができる。王国のエリートたちは、若いうちからその成長を確認されるわけである。


 学生会は、各クラスやクラブから希望演目を聴き、採用不採用の決定、演目変更の調整、タイムテーブルの作成、舞台準備や裏方の編成、医療班の編成、資材調達、民間屋台の許可(期間中は屋台が出るのだ)、プログラムやポスター作成など、運営のすべてを学院と協力して行うのだ。チョー忙しい。故に、普通は演武会や闘技会に出場することはない。

 しかし、今年は学生会として武技の実演をやりたいと会長が言い出した。

 そう、エアウォークでの戦闘をやりたいらしいのだ。

 会長は、エアウォークに『天駆』という名前を勝手につけていた。意外と厨二だ。

 会長が言うには、これまで高さの不利があった巨大魔獣に対して、天駆は不利を解消するどころか優位にさえ立てる画期的な技術で、かつ訓練次第で誰でも使える素晴らしい技術である、これは魔獣の情勢不安が囁かれている現在、一日も早く王国に普及すべきである、ということらしい。まあ、レッドベアとかギガントマンティスとかでもデカかったもんね。

 でも、趣旨はいいけどできんのかよ…。


 聞かされたメンバーは、何のことかわからずポカンとしていた。

 そこで、訓練場に行って俺が実演して見せることになった。

 会長からは、エドとやったようなスピードではなく、最初はゆっくりやってくれとリクエストされた。

 なので初めはマギシールドを階段状に展開して行き、空中を登って見せる。

 この際、わかりやすいようにマギシールドに光魔術でブルーの色をつけた。

 1個のマギシールドに込める魔力量は少ないのですぐ消える。

 次に、マギシールドをあちらこちらに張って、それを蹴りながら急激な方向転換を上下左右に行って見せる。

 最後に、動きたい方向に瞬時にマギシールドを張りながら空中を移動して見せた。

 皆んな唖然としている。


「どうだ、お前たち」

「・・・これを我々が演武会で?」

「そうだ。言っておくがユーキの本気は今よりはるかに速い」

「マジか・・・」

「1ヶ月でできるか・・・?」


 結局、1、2年生がやると言い出し、3年生がやむなく追随する形で、とにかくやってみようということになった。ただし、今回は演武会なので、いくつかの動きの型を決めて披露することとなった。最後は少し見栄えを意識するけどね。

 こうして俺たち学生会メンバーは、授業と演武会の準備に加えて、会長命名の天駆の練習を毎日夜中まで、ボロボロになりながらやり続けたのだった。



 1ヶ月が経過して、演武会が始まった。

 早朝から学院には多くの観衆がつめかけている。

 正門は貴族の馬車の列で渋滞気味だ。

 この日は、臨時で王国の衛兵も警備に多数動員されており、構内の立ち入り可能エリアは厳しく制限されている。貴族の子弟、ましてや王族も通う学院だ。セキュリティには万全を尽くしている。

 正門からしばらく進んだところに複数の入場ゲートがあり、観客はそこで所持品検査を受け、プログラムをもらって入場する。規模的に学校行事というより、サッカーや大規模ライブなどのイベントを想起させる。

 入場ゲートをくぐると、300メートル先に闘技場がドンと聳え立ち、途中に多数の屋台が立ち並ぶエリアがある。

 貴族は、別の入場ゲートから、馬車で闘技場の側まで行くことができるようになっている。


 準備段階から大きなイベントだとは思ってたけど、いやホント、大変なお祭りだ。

 王都民の間では、年に1回の娯楽として定着しているらしい。

 つめかけた観客たちは、思い思いに屋台で食べ物を仕入れたりしながら、闘技場に入って行く。

 闘技場は円形の5階建ての建物で、簡単に言えばローマのコロッセオのような建造物だ。

 収容人数は40,000人。ローマのコロッセオが、最大収容人数50,000人と言われていたから、似たような規模かな。特に、こちらの闘技場は、1階の観客エリアは、魔術の流れ弾の危険があるため通常使用しない。ここを解放すればこちらの闘技場も50,000人が収容できる。

 闘技場には複数の入口があり、それぞれに番号が振られている。観客は自分のチケットに記載の入口から入る仕組みだ。

 2階のメインスタンドはロイヤルボックスと、上級貴族専用の客席となっている。

 メインスタンド裏手には、貴族用の社交場があり、演武会の開催期間中酒食が供されて、観戦の合間に貴族たちが社交に勤しんでいる。


 俺たち学生会のメンバーは、メインスタンド裏の社交場の隣にあるスタッフルームで、先生たちと最終確認をしている。

 スケジュールは、毎日午前中が各学年の演武。初日は1年生、二日目2年生、三日目3年生の順番だ。昼休みを挟み、午後からは闘技会が行われる。

 三日目の午後は、闘技会の準決勝と決勝が行われるが、その前に今年は学生会の演武を行う。


 国王陛下は、初日、二日目は午前中のみ、三日目は終日観覧で、闘技会の表彰まで行うとのこと。

 これは、すごい栄誉だな。

 やっぱりこれ国家行事だろうとツッコミたくなるよ。


 間もなく陛下が来られるということで、学院長とブライソン会長たちが出迎えのために部屋を出て行った。さて、俺たちも配置につくかな。

 俺の担当は治癒班だ。治癒魔術師は学院が用意しているので、俺の役割は治癒魔術師たちの差配のはずだったが、俺が治癒魔術が得意ということで、なぜかローテーションに組み込まれてしまった。

 演武会は単なるお遊戯会ではない。演武といっても実際に武器を交え、魔術を行使する。まだ未熟な学院生に怪我はつきものだ。そして闘技会の方は木剣ではなく、刃引きした実剣を使う。毎年怪我をするものが続出らしい。そして、治癒魔術師たちは交代で魔力を振り絞って治癒に当たり、最終日が終わる頃にはフラフラらしい。なので、ローテーションに一人増員できるのは大歓迎なのだとか。会長にもお願いされて、結局俺は治癒班として働くことになった。


 治癒班の待機場所は1階の人を入れていない観客席だ。通路横に配置して、怪我を負った学生がすぐに運び込めるようになっている。

 待機場所に行くと、既にテントも張られ、治癒魔術師10名が揃っていた。

 挨拶をすると熱烈歓迎を受けた。どうやらメイデン師匠の弟子という肩書きが効いているらしい。それにしても師匠はまだ戻っていない。どこに行ったんだろうね。


 ファンファーレが鳴り響いた。

 国王陛下の登場だ。

 正装の近衛騎士に先導されて、国王陛下がロイヤルボックスに入って来た。

 満員の会場全体が起立する。

 あの人が国王陛下か。ジェームス様と同じくらいの40歳くらい。金髪に青い目という王家の特徴そのままのイケメンだが、貫禄は半端ない。この国の頂点だもんな。

 元の世界でも王族には何度かお会いしたが、もっぱらスーツ姿だった。

 こちらは映画にでも出て来そうないかにもな衣装だ。王冠は被ってないのか。

 国王陛下に続いて入って来たのは入学式で見た第一王子だった。今日は王妃様は来ないのか?ちょっと見たかったけど。

 あれ?その後にいるのって、ジェームス様とエリカお姉様じゃないか?何で陛下のお供してんの?あとは知らない人たちだ。

 最後に学院長と会長が入って来た。会長の老け顔だと違和感がない。内緒だけどね。

 それにしてもあの学院長…。今日初めて間近で会ったけど、やはり妙な魔力の揺らぎを感じた。

 とても穏やかな笑顔で挨拶をしてくれて、悪い印象ではないのだけど。

 トーダに聞いてもようわからん、ということだった。


 おっと、楽団が国歌を演奏し始めた。

 観客全員が右手を左胸に当てて国家を歌う。40,000人の大合唱は迫力だ。

 国歌が終わると大拍手とともに観客が着席した。

 会長が前に出る。


「ただいまより、王立ロマリア学院、第198回演武会を開催する!」


 拡声の魔道具を使って、会長が高らかに開会宣言をした。

 そう、この演武会は、198年前に聖女様の肝煎りで始まったのだ。

 それまでの闘技場は、奴隷の剣闘士たちが命懸けで闘い、血肉が飛び散り、悲鳴や絶叫が響き渡る場所。その命のやり取りに男たちが金を賭け、欲と下衆な笑いに満ちた残酷ショーだった。

 それを聖女様が、奴隷の解放とともに廃止し、闘技場を現在の場所に移設して、未来の王国の国防を担う若者たちを披露する健全な舞台に変えた。

 かつての格闘ショーは形を変えて、素手での格闘ショーとして裏町の数カ所で開かれているらしい。地下格闘場と呼ばれている。そこでは、賭けも行われ、出場者も金を求めて参加する。血の気の多い連中のガス抜きの場として、特に取締りの対象にはなっていない。


 さあ、いよいよ始まる。

 未来の王国の担い手たちのパフォーマンスを見てみよう。



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