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この5日の間に私の身に起きた異常なまでの寝汗と、今、起きているこの奇異な現象とが、何らかの因果関係にあったりするのだろうか?
と美香は思った。
あるとも言えないし無いとは言い切れなかった。
その自信もなかったし、寧ろあると考えた方が自然にすら感じられるくらいだ。
そうでなければ脱水症状になりそうな程の、汗をかくわけがない。
枕カバーもシーツも絞れば汗が滴り落ちる程の量だった。
そうしなかったのは洗濯したほうが早いからだ。
けれど今思えば、あの汗の量は尋常じゃない。
つまり私はこの5日の間で、何か得体の知れないものに取り憑かれたのだ。
幽霊とか悪霊や悪魔などは微塵も信じていないが、
今の自分が置かれている現状を鑑みれば、このような超常現象に苛まれているのはそう感じるのは当然の事のようだった。
「寝汗をかく前日、何があった?」
「6日前、いや、その前もだ。私は何をどうして何をした?」
そんな事思い出せるわけが…と思ったが、6日前は、営業をサボってオープンカフェでお茶をしていた時、三越と出会ったのだ。
豪奢な着物を着こなし、凛とした佇まいは美香に金持ちを想起させた。
話しかけて来たのは三越の方からだった。
他にも空いてある席はあるのに、何故か相席を所望した。
「別に構いませんよ」
ぶっきらぼうな言い方だとわかっていた。
が、三越は嫌な顔一つ見せず、微笑みながら美香にお礼を言った。
カフェラテなのかブラックなのか知らないが手にした物をテーブルに置き、椅子に座った後だった。
三越の肩に、キラキラ光る物が伸びていた。
私は糸くずだと思い、三越の肩へ手を伸ばしてそれを取ってあげた。
「糸くずが付いてましたよ」
「あら、嫌だわ」
「せっかくのお召し物が台無しになりかねませんから」




