なでなで
ユウトはフィーに風呂場まで案内してもらいユウトは久しぶりのお湯に浸かることが出来た。
「くっはぁー。やっぱり最高だな」
この世界では初の風呂となり気分は最高にいい。以前風呂に入ったのはユウガとの特訓の時だったので、あの時からとなるとその空いた期間はかなり長い期間であったと思える。
そしてこれからこの風呂も毎日あると思うと更に気分が良くなるユウトであった。
その後は体をしっかりと温め終えて風呂を出て、着替えをしようとした時にユウトの着替えの近くにフィーが用意してくれたのかそこには知らない着替えが置いてあった。
ユウトはありがたく使わせてもらおうとしたが、
「これは、ちょっと大きいかな?」
用意されていた服は上に関しては着られたのだが、下に関してはベルトが無いと落ちてしまいそうなので、遠慮させてもらうことにした。
そして風呂場から出て家の中を歩いていると、フィーとエアリスの声がしたのでその部屋の中に入ると、二人は仲良く会話をしていた。
「あっユウ。戻ったのですね」
「ユウト、気持ちよかった?」
「ああ、最高だったぜ。それで二人は何を話していたんだ?」
「今日の王都観光の話ですよ」
フィーとエアリスはユウトが第五騎士団の支部に行っている間に王都を観光していたのだ。
「フィーちゃんの案内してくれるところが全部楽しい場所だったから私ずっと楽しかったよ」
「フィーとしてはエアリスが喜んでくれて嬉しいですよ」
「いいなぁ。俺なんか役に立つ話は多かったけど楽しくは無かったからな」
ユウトは、第五騎士団の支部で起こった出来事を思い出していたが、ほとんど心を削り取られるイベントばかりであった。
その後は、三人でミリア―ナからもらったお土産である料理を食べてからユウトはフィーに用意いてもらった自室で休んでいた。
自室の広さは充分な大きさで、前の世界で住んでいた部屋よりも大きい気がしたぐらいである。
結局今日は移動とミリア―ナさんとの話でほとんど時間を使ってしまった。俺としてはもっとこの世界の事を聞いておきたかったのだが、完全にタイミングを逃してしまい聞くことが出来なかった。
しかし、これからも時間はあるのでその時に聞けばいいだろう。
そして今日の疲れもあったせいで今の俺はそれなりに眠い。
今日はもうやることはないし寝てしまおうかと思っていると、扉を軽く叩いてからエアリスが部屋にやって来た。
「ユウトちょっといい?」
「こんな時間にどうしたエアリス」
「あのね。ユウトと少しお話がしたかったから来たんだけど今いいかな?」
「もちろんだよ。俺もエアリスと話がしたかったからさ」
エアリスは部屋に入りベッドに座わる、
「ユウトは明日から学園という場所に行くそうね」
「まさかこっちでもそういう場所に行くとは思ってもいなかったよ」
「その学園っていう場所は、勉強をしに行く場所なんでしょ」
「そういえばエアリスってずっと村にいたから学校とか知らないのか」
「うん。でも勉強は村でしていたよ。だけどいっぱい子供達が集まる場所で勉強する学園という場所は知らないの」
ユウトは前の世界で高校生だったので、今回の学園に行くことになったことはそれほど気にしなかったの
だが、エアリスはずっとあの村で過ごして来たので学校や学園の事を全く知らない。
「とりあえず明日から俺はその学園に行かなきゃいけないらしいから、まずは行ってみてその後どうなるかだな」
ユウトが学園に行くということがミリア―ナに言われた最初の任務であるので嫌でも行かなければならない。
「そうしたら、ユウトはこれから学生になるのよね」
「そうだけど、俺は騎士としてもあるらしいから、正確には騎士兼学生だな。しかしこれからの成り行きがどうなるか、全然分からないよ」
「そうね。でも私はまさかこんな成り行きになるなんて思ってもいなかったわ」
「確かに、成り行きが変わりそうな時なんていくらでもあったからな」
この時二人は、今までの出来事を思い出していた。
だが、その間にどんな苦難があったとしても二人が、今ここにいることはその苦難に打ち勝ったからである。
「そういえば、エアリスに教えてもらいたい事があるけどいいか?」
「いいよ。なんでも聞いて」
「この世界の歴史とか現状とかって知っているか?」
「歴史は、あんまりだけど、現状ならある程度話せるかな」
「それならさ、この国って今どこかと戦争とかしてないか」
「たまに大型モンスターの襲来とかは聞くけど、戦争の話とか最近は聞かないかな」
「良かった、無いってことはそれなりにこの国は平和なのか」
ユウトはエアリスの言葉を聞いて安心する。もし戦争があればきっと騎士である俺は戦地へ行かなければならない。もしそうなったらその時は仕方がないが、出来ることなら行きたくはない。
「でも、隣の国は最近いろいろと不安定だって村長も言っていたから、少し不安かな」
「たしか隣の国ってあの教皇がいたところだろ」
「うん。そのはずよ。でもあの国の事ってあんまり知らないから、知っていることは村長に聞いたことぐらいかな」
「それでも、何も知らない俺にとってはいい情報だったよ」
教皇がいた国ということにユウトは興味をもった。あの教皇は村で召喚術を確立させて国に帰る事を夢見ていた。だが、それは俺が結果的に阻止したが、実際のところその国の状態を知らないと何も言うことは出来ない。
また今度ガルフかミリア―ナさんに聞ければいいけど果たして教えてくれるかどうか。
「ありがとうエアリス。それなりに俺の疑問が解決出来てよかったよ」
「うん。それならよかった。それでね、私もユウトに聞きたい事があるけどいいかな」
エアリスはずいっと体を前のめりにしてユウトに向かって言う。
その感じからして、どうやらこれが一番の目的だとユウトは思い、
「俺に出来ることなら何でもいいよ」
「それなら私の頭を撫でて……くれないかな」
「はい?」
「だから! 撫でてって言っているの! 私も恥ずかしいから何度も言わせないでよ!」
「ごめん、ごめん。エアリスがまさかそんなことを言うなんて思ってもいなかったから聞き間違いかと思ってさ」
「私だってこんなこと言いたくなかったよ……。でもフィーちゃんにあんなことを言われたら気になっちゃって……」
「あんなことって?」
「ユウトが私よりも撫でるのが上手いって言われたの。私だって村で子供達の頭を撫でることがあったのに、ユウトが上手いって悔しいじゃない」
エアリスは本当に悔しそうに言う姿を見てユウトはただ事ではないと思い、
「俺が出来ることなら何でもするから、言ってくれ」
「なら私の頭を撫でてみて」
「……いいのか?」
「いいから早く」
「では……遠慮なく」
ユウトはエアリスに近づきその頭に触れる。その時エアリスがビックっと動いたことに一瞬驚いたが、そのまま手を当て撫でる。
エアリスのさらさらで艶のある髪を撫でていると撫でているユウトも気持ちいいと思える程エアリスの髪質は上質であった。
「どっどうだ、エアリス?」
「……確かにいいけど私だって負けてないんだからね。でもありがとうユウト。これでユウトの実力が分かったよ」
「そうか、それなら良かった」
俺はこの時何が良かったのかが自分でも分からなかったが、自然と口から発してしまっていた
「それじゃ、私はもう自分の部屋に戻るね。後今日のお礼は今度するからね」
「おっおう。分かったよ」
「おやすみユウト」
「おやすみ」
ユウトはエアリスを見送ると大きく息を吐いた。あんな悔しそうなエアリスを見たのは始めてだった。それにしてもまさかあんなに頭を撫でることに対抗心を燃やすとは思ってもいなかったことだ。
そしてユウトは思わず自分の手を見たがすぐに思った事を忘れ、灯りを消して寝るのであった。
エアリスは、ユウトの部屋を出て自分の部屋に戻る為に廊下を歩いていた。そしてエアリスはこの時思っていた。完敗だったと。
なんであんなにユウトのなでなでが、上手いのかは分からないが、その技は確実に私の心を癒やしていた。
そしてもう少し撫でられていたら私は確実に夢の世界に送られていただろう。
悔しいがここは負けを認めるしかない。そしてまた今度撫でてもらおうと思うエアリスであった。




