強襲
「くそっ全然減らないな。フィリス、お前ももうちょっと何とか出来ないのか」
「これでも、フィーが出来る範囲でやっていますよ!村人にはなるべく怪我をさせない様に戦うのは大変なんですよ!」
「確かにフィリスと言う通り怪我をさせずに対処するのは大変だね」
ユウトを送り出し残ったガルフとフィーは、あの後からずっと襲ってくる村人たちと戦っていた。
しかし、ガルフにとって村人は相手にならないので戦うというよりはユウトの元に村人達が行かない様に時間を稼いでいるだけであった。
だがその際に怪我をさせることは出来ないので、なるべく少ない攻撃で村人を対処してそのうちに村人たちが疲れて動けなくなればいいと思っていたが、意外とこの村の人間は体力があるせいで、思うように出来ていなかったのである。
そして、更に厄介なのが村人たちの奥にいる神官共である。神官が心術を使って村人たちを援護しているせいで、ただでさえ元気な村人達が疲れたとしてもすぐに戻ってしまう。
神官達がいなければ、もっと楽なのだがフィリスの事もあるので思い通りに戦うことが出来ず、現在の様に戦わざるをえない状況となってしまったのだが、その中でもなんとか突破方法が無いかガルフは考えていた。
だが、ガルフ以上に焦っていたのは神官達であった。
「まずいぞ。こいつは強いぞ。早く教皇様が来て下さらないと我々もどこまで戦えるか分からないぞ」
「だが我々は教皇様が来るまでは耐えるしかない。それに、幸い奴は連れにお荷物がいる。そのおかげで奴はここまで来ることが出来ない」
「だぁーれが、お荷物ですか!」
フィリスが放ったファイアボールが神官に当たる。
「ぐぁあああ‼」
神官の体に火が付きその熱で苦しむが、急いで仲間が火を消す。
その瞬間に、ガルフが神官を狙って攻撃するが複数の神官により対処される。
「よくやったお荷物!もう一回さっきみたいにやってくれないか」
「変なこと言っているとガルフにも打ち込みますよ!」
その時だった。明らかに違う強さを持つものが近づいて来ている。
「フィリス。俺の傍から離れるな」
「えっ」
その気配を感じ取ったガルフはフィーを自分の傍に寄せた。
そしてそれを言ったとほぼ同時に、ガルフとフィーの目の前には明らかに人とは言えない何かがそこにいた。
その存在に最初は神官達も戸惑うが何かに気づきすぐに頭を下げる。
その姿は最早人間離れしており、どちらかというとモンスターの姿に近くなっていた。
そしてこの場で頭を下げる神官達に手を挙げ応える奴はここで考えられる限りあいつしかいない。
「私が来るまでの間、随分と暴れてくれたようだな」
「おまえが教皇か?」
「ああ、そうだ」
ガルフはその答えに息を飲んだ。
ここに教皇がいるということは、ユウトはやられたということになる。
ガルフはあえて確かめる為、教皇に問う。
「ユウトはどうした?」
「ああ、あいつか。あいつは死んだよ」
ガルフは一瞬その言葉に調子を揺さぶられたがすぐに元に戻した。
「嘘です!ユウは簡単には死にませんし、恐らく別の何かで倒れただけです」
フィーは教皇の言っていることを信じようとしていなかったがガルフは教皇の言っていることに嘘は感じられなかった。
「そうか。それが聞ければ十分だ」
ユウトが死んだかどうかは別として今回の標的が目の前にいるのであれば、ガルフは王国から命令を受けている者として全身全霊を持って標的である教皇をこの国から排除しなければならない。そしてガルフは槍をさらに力強く握った。
「フィリス。俺にしがみ付け」
「え?」
「いいから早くしろ」
フィーは言われると少々不満げであったがここは言われた通りにガルフの背によじ登りしがみ付いた。
「おやおや、背中の盾を用意したのか」
「うるせぇよ。フィリスに傷を付けさせる訳にいかないからな」
「そうか、なら私は手加減をしないが守りきってみせろよ」
「うるせぇよって言っているだろ」
「つくづく私を怒らせる口を持つ者ばかりやって来たのだな」
先に動いたのは教皇であった。それに合わせてガルフも手に持つ槍を握りしめ教皇の攻撃に立ち向かった。激突するお互いの武器の衝撃で家や木々は音を立て先ほどのまでの戦場から全く違う戦場へと変化していた。
その迫力に村人たちは教皇の洗脳による戦う気持ちよりも、この場から一刻も早く逃げなければならないという気持ちが上回り村人たちは二人からとにかく離れるようにして遠くに向かって逃げ出した。
神官達も二人の迫力に茫然としてしまい、村人たちを追う事も教皇を援護もすることも出来なかった。
そしてその二人は両者一歩も譲らない剣戟を繰り広げていた。
教皇の両手剣による連撃を食らいつき槍で対抗するガルフであった。その一進一退の攻防がお互いを時に攻め時に守っていた。
「お前強いな」
「当たり前だ。俺は王国の命令を遂行しないといけないからな」
剣を槍に当てた時の衝撃を利用して教皇はガルフと距離を取り剣に力を込めガルフに向かって渾身の心術を放つ。
「デモンズボルト‼」
教皇の剣から放たれた黒雷に対して、フィーがガルフを呼ぶ。
「ガルフッ」
しがみ付くフィリスの言葉に応えるようにガルフも応える。
「ライコウ‼」
ガルフも同様に槍から雷撃を放つ。
そして相殺されたお互いの心術は消え去り、教皇はすぐさまガルフに切りかかろうとするがガルフもまたその攻撃に反応して、すぐに教皇めがけて攻撃を仕掛ける。
だが、その時教皇は狙いを変えており、その狙いに気づいたガルフはとっさに回避しようとするが間に合わない。
そしてガルフの左腕を教皇の剣が切り裂いた。
「ぐっ」
痛みに、ガルフは思わず声を出す。だが痛みよりも腕が痺れて感覚が鈍くなったことがガルフにとって一番の痛手であった。
「おや、本当に庇うとは。これは思った以上に戦いやすいな」
教皇はその口元を歪めながら、ガルフに語りかける。
「はっ。腕一本動かなくなったからって調子に乗るな」
ガルフは残った片腕で、教皇に切りかかる。そしてその力は予想以上の威力に教皇は後退して距離をとった。
「ガルフ。大丈夫ですか?」
いつもはガルフに対して容赦なく言っているフィーだが、この時ばかりはガルフの事を心配していた。
「心配するな。こんな奴には俺は負けないよ」
「意外としぶといな。しかし時間も無いし。おいっ!お前ら今すぐに聖堂に倒れている奴を連れて来い!早く行け‼」
先ほどまで全く役に立っていなかった神官達は教皇に言われた直後、急いで聖堂へと向かうのであった。
「お前一体何をするつもりだ」
「私は死人の力を利用する事が出来る。聖堂で倒れている奴を使えば、さらに私は強くなることが出来る‼それが整えば、お前など敵ではないわ」
「へぇ。それは怖いな。でもそうなるといいね」
ガルフはこの状況でも笑みを浮かべられる程の余裕は残っていた。




