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凡人の異世界転移物語  作者: 小さな枝切れ
第四章 忍び寄る暗雲
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忍び寄る暗雲

第4章最終話です。

「これで全部だよ」


全てを話した俺は皆んなの反応を見る。

皆んな思うところがあるのか、黙って考えているようだったがレイチェルだけ頭にハテナマークをつけたような顔をしている。


「うん、分かった。

じゃあ次は皆んなでルー姉さまの夢を叶えるの」

「我の夢だと?」

「うん、住む場所探すんでしょ?私の夢も叶ったんだから、ルー姉さまの夢だって必ず叶うよ!」

「レイチェルはそれでいいの?」

「サハラはサハラ、ルー姉さまはルー姉さまよ?」

「サハラ様、ルースミア様、私もついていきます」

「しゃあねぇなぁ」

「サハラ、新天地はお預けになったようだな」

「そうみたいだね、皆んなこれからもよろしくお願いします」

「最強のドラゴンが仲間ならどこだって行けるぜ!」


仲間は俺とルースミアを受け入れてくれたみたいだった。



話が終わり皆んなの落ち着きを取り戻したところで、スレイドが話を切り出してきた。


「ところでよ、カイの親父さんって名前何て言うんだ?

赤帝山に挑むぐらいだから有名だと思うんだよな」

「お父さんの名前はケルヴィンです」

「おい、まさかケルヴィンって氷結の狼って言われたケルヴィンさんか⁉︎」

「はい」


スレイドはケルヴィンに憧れて冒険者になったらしい。

ちょうど10年前に赤帝山に仲間と向かい、そのまま戻ってこなかったそうだ。


カイに気になってどうして奴隷になったのかを聞いてみたところ、彼女の父親が赤帝山に行ってしばらくして彼女の母親が病気で倒れ病に苦しむ母親の面倒を見ていたが、面倒を見ながらでは働くことも出来ず、次第に生活が苦しくなり生活資金がなくなって借金をし出し、しばらくした頃に母親がなくなったそうだ。

貯まった借金を返すあても無く奴隷に身を落としてしまったという事だった。


「ルースミア、もしカイのお父さんが使っていた武器とか分かれば形見としてカイに渡してあげられないかな?

カイは分かる?」

「ケルヴィンさんの武器なら俺が知ってるぜ!

二つ名の由来にもなった、フローズンデスって言うシミターだ」


詳しいな、まるでファンか追っかけみたいだな。


あるか分からんぞとルースミアは言うと鞄をゴソゴソしだす。

そして一本のシミターを取り出し、これかと見せてきた。


「お父さんが持っていた剣!やっぱりルースミア様の所で…」

「この剣には我も記憶がある…

実に忌々しい剣だ。

我に傷を負わせた数少ない武器よ」


ルースミアに傷を負わせるってスゲェな。

と言うかルースミアって魔法の武器以外はダメージ受けないとか言わないよな。


しばらく憎々しげにシミターを見るとカイに手渡した。


「貴様の父親は我に傷を与えた数少ない戦士だったぞ」


受け取ったカイはシミターを抱えるように持つと祈るように目を閉じた。


「お父さん、お父さんの剣で今度は私は大切な人達を守る為に使わせてもらうね」


カイは静かに言うと、鞘からシミターを引き抜く。

刀身から微かに冷気が流れていて、見ているだけで凍りつきそうだ。


「その剣は切りつけた相手に凍傷を負わせて傷の治りを悪くし、放っておくと悪化させ死に至らしめる魔剣よ」


説明を聞いて思った。

えげつないな。





夕飯を食べてそれぞれノンビリしていた俺たちの元に駆け込むようにギャレットが宿に訪れた。


「どうしたんですか慌てて」

「大変な事態が起こった!ヴィロームがオークの手によって陥落した!」


マジすか。


「私は一刻も早くヴァリュームに戻らねばならないが、諸君らに報告だけはと思い寄らせてもらった。

皇帝は事態を重く見て即座に軍を派遣することになったが、私は一足先に孤立無援になったヴァリュームに報告する義務がある。

すまないがここでお別れだ」


それだけを言うと足早に去っていった。

とりあえず皇帝には会わずに済んだのかな?そんなお気楽なことを考えていたら、レイチェルが慌てだした。


「父さまと母さまが!私も戻る!戻らなきゃ!サハラお願い、父さまと母さまを助けたいの!」


そうは言われてもな…

グリーンドラゴンの森を抜けたって2週間弱かかるし、ルースミアにまさか飛んでもらうなんてそれこそパニックどころか終末騒ぎになりかねない。


「レイチェル、向かうのは構わない。でも間に合うかは分からないよ?」

「それでもいい!何もしないで指をくわえているだけよりも行動を起こさないで後悔するよりずっとマシだわ」

「サハラ、我が「ルースミアそれはダメだよ。パニックどころか終末騒ぎになる」」

「ならよ、そのままルースミアちゃんがオークを始末しちまえば国を救ったドラゴンとして祀られるようになるんじゃないか?」

「それもダメだ。権力者って言うのは救われた時は確かに感謝すると思う。

でも、平和が訪れた時その強大な力が脅威に変わっていくんだ」

「そう言えば、お父さんも強くなったら人々から尊敬されたけれど、怖がられてもいました」

「そう言うもんかねぇ。俺もそれぐらいの存在になりたいもんだぜ」


ここで俺は皆んなに言ってなかったこと、オークの背後にダークエルフがいる事を教えた。


「あいつらは根っからの戦士で隠密行動にも長けた暗殺者だ。

中には加えて魔法まで使ってきやがる」


うんちくありがとうスレイド。


それを聞いたところで行く事を止めるようなレイチェルではないため、急遽俺たちもヴァリュームへ向かうことになった。


とは言え既に夜、今から出るのか明日の朝出るのかで話になり、明日すぐに馬車を買いそれで向かうことに決めた。


翌日になり宿を引き払った俺たちは朝一で馬車を購入できたまではいいが、そこで予想外の事に御者を出来る者がいなかった。


「誰も馬車操作出来ねぇのかよ」

「スレイドが出来るんじゃなかったの?」

「すまん、そこまで考えてなかったぜ…

そうだ!リーダー、賢人の腕輪で…ってもったいねぇか」


何を言ってんだ。馬車操作のためなんかに賢人の腕輪なんか使えるかよ!

っと待てよ。


「ちょっと皆んなは馬車に乗ってくれるか?

もしかしたら、動かせるかもしれない」


そう言って皆んなを馬車に乗せると、俺は御者台に乗り馬に話しかける。


「馬の友よ、急いでヴァリュームへ目指すために君達の力を貸して欲しい」


馬車に繋がっていた2頭の馬は俺の言葉を聞いて、いななきをあげると馬車を動かし出した。

おお!ドルイドの獣との交流の力が使えた!


後ろの馬車にいたスレイドが何したんだと驚いていた。

帝都を出ると馬達は大きくいななきをあげると勢いよく飛ぶように走り出した。



なんだか結果的に大事に巻き込まれてる気がする。

ヴァリュームに行けば恐らくオークやダークエルフと戦いになるかもしれない。


俺はこの先、“俺自身に起こるとんでもない出来事に気がつくはずもなく”ヴァリュームに向けて馬達を走らせた。




いつもありがとうございます。


まず次回更新ですが、8日月曜日の17時を予定しています。



ついに第4章終わりました。

次回から第5章でして、今までと違って“たぶん”シリアスな展開が多いと思います。



それでは

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