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核の行方 中二の終末

「なんとですね、今入った情報なんですが、あの世界的に有名な超能力者である新井健二さんが、重大発表があるとのことで、この代々木公園特設ステージに向かってくれているそうです。重大発表とはなんなのでしょうか。楽しみと共に不安でもあります。ロビン佐藤さんはいかかですか」

「えー、これはすごいことですよ。そもそも新井さんはバラエティ番組なんかに出ないですからね。これは相当でかいニュースなんじゃないかな」

「そうですよね。生卵でロッキーダイエットなんてどうでもよくなってきちゃいましたね」

「そうだねえ。生卵で痩せるわけねえじゃねえか、馬鹿野郎ってね」

「そんなこと言わないでください。元も子もなくなるじゃないですか」

「メキシコ辺りの生卵食って生死の境をさまよえばいいんだよ。そしたら馬鹿でも痩せるだろ」

「コマーシャル入ります」

 コマーシャルに切り替わった。

「どう今のコメント?またネット上で騒がれちゃうかなぁ」

 マイクをオフにしてロビン佐藤が言った。

「もう勘弁してくださいよ」

 司会を務める渡辺アナウンサーもマイクをオフにし、笑顔で答えた。

「こないだのアシスタントの娘、りかちゃんていったっけ。もう喰っちゃったの?」

「はい。売りが東北出身の純朴娘ってだけあって、あそこの締まりがすごく良いんですよ。飲めって言ったら飲んでくれたし。まあ、全体としては七十点ってとこですけどね」

「いいなあ。俺も試食したいなあ。頼むよカズちゃん」

「わかりました。話しつけておきますよ。こないだみたいに3P、もう一人呼んで4Pってのもいいですね」

「いいねえいいねえ。また獣みたいな女連れてきてよ」

「分かりました。ロビンさん好みのむっちむちで無知な女連れてきますよ」

「頼むよ。ヒッヒッヒ」

「フッフッフ」

「新井健二さん入ります」

 ADに先導され、健二が特設されたステージにやってきた。観客席からヒステリックな声援があがる。

「おれあいつ嫌いなんだよな」

 ロビンが小声で言った。

「僕もです。セレブ気取りが癪に触りますよね」

 渡辺がさらに小声で答えた。

「おつかれ~す」

 顎の上下運動で挨拶する健二に、渡辺は首の上下運動で、ロビンは立ち上がり腰の屈折で答えた。

「今日は、すごいネタがあるって聞きましたよ。放送前にこっそり教えてもらえませんか」

 猫なで声を出すロビン。

「すぐに発表するつもりなんで、今はいいでしょ」

 健二はロビンの申し出をあっさりと拒否した。

「放送入ります。5、4、3、」

 ADの掛け声でステージ上に緊張が走る。

「えー、スペシャルなゲストがついさきほどいらっしゃってくださいました。新井健二さんです」

「こんにちは。超能力者の新井です。今日は重大な発表があり、急遽出演させていただく運びとなりました」

「ひょっとして、それは北朝鮮に関連することですか。それとも噂になっている安やす子さんについてとか」

 ロビンが口を挟んできた。さっきの報復のつもりなのだろう。馬鹿に構うことはない。

 健二はロビンを黙殺して先を続けた。

「これは非常に重大な発表です。だから、心して聞いてください。そして聞いた後も落ち着いて、節度ある大人としての行動を心がけてください」

「それって、まさか北朝鮮の核爆弾が落ちてくるなんて言うんじゃないでしょうね」

 再びロビンが割り込んできた。観客から喚声がもれる。

 こいつ、頭を叩き割って欲しいのか。生放送じゃなかったら番組を一旦止めて、セット裏に引きずり込んでボコボコにしているところだ。健二はロビンの発言に一切反応せずに言葉を繋いだ。

「北朝鮮の核爆弾が、ここ東京に落下します」

 観衆の喚声は悲鳴に変わった。ざわめく会場。怒鳴り声が飛び交い、子供の泣き声が響いた。

「みなさん落ち着いてください。冷静に行動してください」

 健二の声は人々の騒乱にかき消された。

 それでも健二は叫び続けた。少しでも人々を正しい方向へ導くため、ではなく、最善を尽くす姿をカメラに残すためだ。

 怯えきった群衆は、我先にと出口に殺到する。

 転んでそのまま踏まれていく女性。口から泡を吹く中年。血だらけの子供。

 それでも健二は声が枯れるまで叫び続けた。

「みなさん、落ち着いて行動してください。まだ核爆弾は落ちてきません。だからどうか落ち着いて……」

 健二は今までの献身が徒労だったと気づいた。テレビ局のカメラマンがすでにいなくなっていたのだ。

 周囲を見回すととカメラマンどころか、ロビン斉藤や、局アナ渡辺もいない。放送は完全に機能停止していた。

 こうなればさっさと逃げるしかない。

 ステージから降りようとした健二に誰かがぶつかってきた。転倒し後頭部を打ち付けた。

「誰だよくそっ!」

 顔を上げると薄気味悪い肥満体の男が健二を見下ろしていた。

「ぼっと突っ立てんじゃねえよ馬鹿。どけっ!」

 立ち上がって怒鳴りつけた。しかし男は動こうとしない。それどころか、両手を広げて道を塞ぎ、健二を見つめて怪しく笑った。

「なんだこの野郎。そこどかねえとただじゃおかねえぞ」

 きつい剣幕でまくし立てたが、肥満男は気に介した様子がない。

 肥満男が健二に向かってゆっくりと歩いてきた。

「なんだ、なんだってんだよ……」

 肥満男の右手に握られている光物に気がついた。凶暴な歯がついた大型ナイフ。刃がアリゲーターの歯のようにギザギザと尖っている。

 なんか分からないけど、こいつやばい。

 とっさに身を翻して逃げようとしたが、一瞬遅かった。健二の脇腹に肥満男のナイフがふかぶかと突き刺さる。

「なにすんだよ。どうすんだよこれ。どうすんだよぉ」

「おまえがシャンラブの三人を殺したんだ。ウーちゃん、ドッチ、カリタカの仇だ」

 そう言って肥満体はナイフを引き抜き、今度は左胸に突き刺した。

「うおええうええ」

 断末魔の叫びと共に血しぶきが肥満男の黄色いバンダナに飛散した。

 これって、ひょっとして……

 健二の脳裏に絶望が閃いた。

 健二は最後の力を振り絞りインナーの襟元をかっ開くと、その中に鼻を突っ込み深く呼吸した。


「くせえええええええええ」


 臭源は溢れ出る血液ではなく、まぎれもなく例の臭い、デススメルだった。

ちょいと昔に書いた物なのでネタの鮮度がいまいちですね。すんまそん。


拙い文章をわざわざ読んでくれた方、本当にありがとうございます。


次作の参考にさせていただきたいので、よろしかったら感想等お願いします


P.S 宇多夢ショコラさん、丁寧な感想をありがとうございました。

 

初めての経験だったので枕カバーを塩味にしてしまいました。








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