表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

24/29

ホークスの司令官の正体

 シークはニッコリと笑った。

 

 俺とミュセルが視線を合わせる。

 シークがこんな風に笑うのは大抵、相手を虐める時だ。


「最初に質問します。あなたの名前は何ですか?」


「何を言っている、私の名前はバゲッ…………」


「あっ、そういうのはいいですから。本当の名前を教えてください」


 本当の名前?

 一体どういうことだ?


「さ、さっきから何を言っている?」


 バゲッドは明らかに動揺していた。


「私、暇になったので勉強も兼ねて、あなたの出身の大陸のギルドリーグを見に行ったんですよね」


 それを聞いたバゲッドは青ざめる。


「レベルが高くて、とても勉強になりましたわ。それに私としても元上司がどんな戦績だったのかが、気になって、調べたのです。凄いですね。二十代半ばで中級指揮官になってからは最優秀選手二回、司令官になってからは三度の優勝、名将と言うべき戦績です」


「そ、そうだろ、その実績があったから、私はこのホークスに誘われたんだ」


「誘われた? 私の記憶だと、売り込んできた気がしますけど? まぁ、それは良いです。では、なぜこんな愚将なんでしょうか?」


 シークはさらっと毒を吐いた。

 バゲッドの顔が真っ赤になった。


「それはこの大陸のレベルが低いからだ! 基本も知らない連中相手をしなければ、いけない。だから、私のように優秀な人間が負けるんだ!」


 それを聞くとシークは腹を抱えて笑い出した。


「な、なんだ!?」


「あなた、面白いですね。コメディアンになった方が良いじゃないんですか?」


「おい、話が進まない。早くしろ」

 バゲッドを馬鹿にすることが楽しくなってきていたシークに、ミュセルが釘を差す。


「ごめんなさいね。…………さて、本題と行きましょうか。私はバゲッド司令官の成績の詳細を調べたんですよ。見事な内容でした。名勝負と言われるものも数えきれないほどありました。それで疑問に思ってしまったんです」


 バゲッドは額に大粒の汗が光っていた。


「同じ人間がこんなにも変わってしまうのか、と」


 なるほどそういうことか。

 話が見えて来た。


「私は滞在期間を延長して、調べたんですよ。そして、バゲッド司令官の元ギルドメンバーと会うことが出来ました。で、その人に聞いたんですけど、バゲッド司令官はすでに引退して故郷で家族と静かに暮らしているそうですよ?」


「そ、それこそ出鱈目だ!」とバゲッドと名乗る男が言う。


「まだ認めませんか? アンドリューさん?」


 アンドリュー?


 その名前を聞いた瞬間、バゲッドの顔が白くなった。


「私、バゲッド司令官の元仲間の人に事情を説明して、直接、バゲッド司令官に会うことが出来たんですよね。で、あなたの采配の特徴や言動、使える魔法を説明したら、アンドリューという男の情報を貰えました」


「なんだと…………?」


「バゲッドさんからあなたのことを良く覚えていましたよ。だって、本物のバゲッドさんが司令官時代にあなたは参謀長をしていたんですよね? 定石を重視して、独創性には欠けるが手堅い作戦立案をしてくれた、とあなたのことを評価していましたよ。ただし、こうも言っていました。奇策には弱く、自分の思い通りにならないことがあると周りのせいにし、定石に固執してしまう。作戦を立案・提案する立場、参謀には適性があるが、自分で判断する立場、中級指揮官や総司令官には向かないだろう、と」


「そ、そんなの出鱈目だ! お前の妄想だ!」


 シークは紙の束を取り出す。

 そこにはアンドリューが顔を変え、名前や経歴を詐称した証拠やアンドリューの戦績などがまとめられていた。


「まぁ、信憑性には欠けるわよね。だから、私がこれを送った新聞社はどこもまだ公表していないんでしょうね。裏付けがきちんと取れてから、記事にしたいでしょうから」


「新聞社に送っただと?」


「可能な限りの新聞社にこれと同じ内容の文書を送ってあるわ。それが十日ぐらい前だったかしらね。新聞社は裏付けをとって、いつが一番のこの記事を出すのに良いかを考えているんじゃないかしら? 新聞社は困るでしょうね。 ウエンの伝説とあなたの不祥事、明日の一面にどっちを持ってこようか、迷うわよ」


 アンドリューは何かを言おうとするが、声が出ないようだった。

 眼球が驚くほど不規則に動き、口から泡を吐く。

 そして、気絶してしまった。


「あらら、もう少し遊びたかったのに残念」


 シークは猟奇的な笑いを浮かべる。

 俺とミュセルは苦笑していたが、フレアたちは引いていた。 


読んで頂き、ありがとうございます。

もし宜しければ、下にある☆☆☆☆☆から、作品への率直な評価とブックマークをお願い致します!

執筆の励みになります。


また異世界転生モノ『カードゲーム世界王者の異世界攻略物語』も投稿していますので、宜しければ、それらもよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 参謀か・・・。奇策に弱い、思い通りに行かないと周りのせい、定石に固執する・・・。 参謀としては優秀、司令官としては愚将。ここまで酷評されるのも珍しい。 シークさんの猟奇的な笑みに、苦笑し…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ