宣誓
気絶したアンドリューを審判員たちが抱える。
「連れて行け。それと不正に関与したホークスのメンバーにも事情を聞く。申し訳ないがミュセル選手、あなたも一緒に来てもらっていいか? ホークスの内情を聞きたい」
「分かった。協力する…………ウエン、そういうことだから、私は行くよ。ゆっくり、勝利を祝ってやれなくて済まない」
「おかしなことを言うね。君はホークスのメンバーだろ」
「意地の悪いことを言うな。今のホークスに応援する価値などない。…………また今度、ゆっくりと話をしよう。それからこれだけは言わせてくれ。司令官としての初陣の勝利、おめでとう」
「ありがとう。ホークスはこれから大変だと思う。心配だ。ホークスが拾ってくれたから、今の俺がある。そのことは本当に恩を感じている。このまま、落ちていくのは見たくない。だから、君が支えてやってくれ。ホークスを再建してくれ。」
「そのつもりだ」と言い、ミュセルはイラム審判員たちと一緒に立ち去った。
「さて、私も帰ろうかしらね…………あっ、これ、旅行のお土産兼初勝利祝いよ。私のオススメ」
シークは俺に酒の入った瓶を渡す。
「君のオススメ、ってことは碌な酒じゃないな。俺は今でも覚えているからな。三連覇の祝勝会でアルコールが強いのに飲みやすい酒ばかり飲ませて、俺を完全につぶしたことを」
「あれ、そんなことあったかしらね?」とシークはとぼける。
「ウエン、良いギルドに会えたみたいね」
シークはフレアたちを見渡した。
「そうだね、俺はこのギルドを優勝させたい」
この宣言にシークは驚く。
「来季の話よね?」
「もちろん今季さ」
それを聞くとシークは笑った。
「あなたって本当に面白い。私もまたギルドリーグに戻りたくなったわ。またいずれ、ね」
「ああ、そうだね。またいずれ」
シークが立ち去り、負けたホークスの選手たちも撤収していく。
「さて、俺たちは民衆の前で勝利者インタビューをしないとだね。中級指揮官のフレアたちも一緒に来てもらうよ」
それを聞いたフレアたちは急にソワソワし始めた。
勝利者インタビューはとても初々しかった。
フレアは何度も噛んだり、声が裏返ったりしていた。
ヘテロは普段のように不敵に笑いながら、しゃべるかと思ったら「当然のことをしただけです」と緊張した様子で言っただけだった。
記者の質問に対しては、「あっ……」とか「えっと……」とか言って、上手く話せていなかった。
ヒューちゃんは子供のように無邪気に話すが、不適切な表現をしそうになるたびにオルフィンに止められていた。
そのオルフィンが一番、無難にしゃべっていた。
しかし、以上に俺を褒めていた気がする。
もしかしたら、俺を怒鳴ったことを気にしているのかもしれない。
最後に俺がしゃべるわけだが、話は当然、最後の一撃になった。
「私は自分に出来ることをしただけです。それよりも他のメンバーに注目してほしいですね。私が最後に試合を決められたのはヘテロが前線を維持してヒューチーヤやオルフィンが要所でホークスに痛手を負わせたからです。それに後衛のことは全てフレアがやってくれました。彼女らがいなければ、俺は勝てませんでした。ギルドは現在、最下位ですが、ここから巻き返します」
「それは最下位を脱出するということですか?」
記者の質問に対して、俺たちは顔を合わせる。
止めるなら今だぞ、と視線を送る。
しかし、誰も止めなかった。
全員が頷いた。
俺は笑い、「優勝です」と宣言した。
その瞬間、観客たちは静まり返った。
記者でさえ、固まってしまった。
「え、えっと、優勝ということはこの絶望的にポイント差をひっくり返すということですか?」
記者が困惑しながら、聞いてくる。
「もちろん、そういう意味です。そして、ここにいる皆さんに、いや、このリーグに参加している全ギルドへ宣言します。我々『ブレイブファイターズ』は残りの試合全てでダブルアップを行うと」
会場がどよめく。
少なくとも罵倒や嘲笑は起きなかった。
『ブレイブファイターズ』の劇的な勝利を見た民衆は、もしかしたら、と思ってしまう。
「どうぞ、これからも『ブレイブファイターズ』をよろしくお願いします」
「えっ? あっ! い、以上で勝利者インタビューを終わります!」
ここまで宣言したんだ。
明日の一面は俺たちじゃないと困る。
バゲッドの記事なんかに負けたくない。
この日、勝ったことにギルドメンバー全員が興奮していた。
しかし、宴会をすることはなく、ほとんどの者が宿舎に帰ると倒れるように眠りにつく。
華麗な勝利に見えて、実はギリギリだった。
魔導士の質はホークスの方が格上だった。
全員が必死に戦ったからこその勝利だった。
それは俺も例外ではなく、というか最後に放った『集束砲』のせいでずっと魔力の調子がおかしい。
体中にずっと電気が流れているようだ。
疲れているから、寝たいのに寝れない。
「そうだ」
シークから受け取った酒瓶を取り出した。
彼女のことだ、強い酒だろう。
小さなコップに酒を注いだ。
その瞬間、強い酒の匂いがした。
それを二口で飲み干す。
胃が焼けるように熱くなり、頭がグラグラする。
体の不調が気にならなくなった。
意識が遠のいていく。
「勝てて本当に良かったよ…………」
読んで頂き、ありがとうございます。
もし宜しければ、下にある☆☆☆☆☆から、作品への率直な評価とブックマークをお願い致します!
執筆の励みになります。
また異世界転生モノ『カードゲーム世界王者の異世界攻略物語』も投稿していますので、宜しければ、それらもよろしくお願いします!




