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第三話 精霊と魔法のこと

 魔法とは何か。

 というより、この世界の魔法とは何かというのを俺はちゃんと理解していなかった。

 先生はその辺りをざっくり簡単に分かりやすく話してくれて助かった。元々、この世界の魔法は精霊から力を借りて発動するもの、つまり精霊魔法と呼ばれるものだったらしい。魔力が高いものであればその力で精霊をねじ伏せ、意のままに魔法を行使することが出来ると聞かされてゾッとしない話だなと思った。誰かに押し付けられて力を使わなきゃならないなんて、そんなのは俺だったら真っ平ごめんだ。


「御二人の高祖母(こうそぼ)様は優れた土の精霊の使い手でございました」


「高祖母?」


「高祖母様ってえっとー」


「御二方のひいおばあさまのご母堂に当たる方です。土の精霊の力は領地を持つ貴族ならば欲してやまないもの。土が豊かになれば、作物もよく育ちますし結果領地が潤いますからね」


「へー」


 なーるほど。なんか四大精霊の中でも地味な方かと思ってたけど、意外と人気が高いんだな。地の精霊。


「今日はちょっと変わったものをお持ちしておりますので、御二人ともこちらにいらしてください」


 そう言って先生は手のひらにのるくらいの大きさの水晶玉を取り出した。おおーっ! ファンタジーっぽい!


「これは精霊との相性が見られる魔道具です。手をかざして魔力を込めると具体的に見えるようになっているんですよ。例えば」


 そう言って先生が目を閉じて意識を集中させると、水晶玉の中には泡立つような水の球がぷよぷよと浮かんでいるのが見えた。


「私には水の適性があります、ということがこれで見られるわけです。御二方も見てみたくありませんか?」


「見たい!」


「見たいですわ!」


 我も我もと義姉上とふたりで先生のところに近付いて、それから水晶玉は義姉上にそっと渡した。


「義姉上からどうぞ」


「いいんですの? ヴィリバルトの方が先に見たいのではなくて?」


「義姉上が見終わったら、僕もお借りしますから大丈夫ですよ」


「そう? では」


 内心すごーくうずうずしていたのは分かっていたから、ここは察しがいい義弟の振りをして譲るのが得策だと思われる。義姉上がわくわくしている姿も可愛い。うん。

 手のひらに集中させた魔力が、水晶玉に取り込まれると淡く輝いた後マッチの先に灯るような小さな炎がその中に揺らめいているのが見えた。


「マルガレーテ様は光と炎の適性をお持ちのようですね」


 おおお。勇者みたいだな。かっこいい! でも義姉上はちょっと不満そうだ。


「どうしたんですか?」


「もっとかっこよく輝いたりとかするかと思ったのに、わたくしの魔力量ではこれが限界ですわね」


 ふむ。と真剣に考えている義姉上は何か考え込み始める。


「炎なら攻撃力アップの魔法とか使えるようになるかしら……」


 脳筋。脳筋だった。魔法で攻撃とか欠片も考えていない脳筋全開の考え方だった。さすがです。


「ヴィリバルトもやってみて」


「あ、はい」


 そうして渡された水晶玉を見つめながら、手のひらに魔力が集中するのを意識してみる。これだけは出来るんだよな。この屋敷に来ることのきっかけになったのだって、何か知らんおっさんたちがこれに似た魔力計とかいうやつを持ってきたことだったし。

 水晶玉の中は急に暗がりになり、その中心には土の欠片みたいなものがふよふよと浮いている。


「これは! ヴィリバルト様は闇と土に適性がおありのご様子ですね。さすがラッツィンガー家の御血筋です。この年齢でこれだけのお力をお見せいただけるとは」


 土の欠片はさっき先生が見せてくれた水と同じくらいの量に見えた。なるほど? 大人と同じくらいの量を俺が出せるから相対的に見て多いってことか。ていうか、闇と地ってなんか偏見だけどラスボス的なイメージしかないな。


「すごいですわ! ヴィリバルト!」


 不意打ちで首に抱きつかれて思わず足がよろけてしまったが、男子の意地でなんとか持ちこたえてみせた。ていうか義姉上いい匂いです。


「地属性が使えるなら防御力アップが出来ますわね! わたくしたち、二人そろえば無敵ですわ!」


 しかし考え方は脳筋のままだった。分かってはいたのにちょっと悲しくなるのは何でだろうか。


「それぞれの適性が分かったところで、明日からは少しずつ魔力の鍛錬も始めますのでよろしくお願いいたしますね」


「はい!」


「よろしくお願いします!」


 でも何やかやと言っても、ファンタジー世界の王道、魔法を扱えることになった俺は、とてもテンションが上がっていた。うれしい。うれしいな。隣で嬉しそうに笑っている義姉上の顔を見るのもとても嬉しいけど、頑張ろうって思えたんだ。





 その夜。

 このお屋敷に来てから初めて、厨房でミルクを一杯貰ってくることにした。

 精霊とか妖精の類に対して、俺は見たこともないし知っているわけではないのだが、不思議大好きっこだった前世の妹が見せてくれた本にこんな記述があった。


(妖精たちに力を借りる時には対価として枕元にミルクを一杯置いておくといい。そうすれば妖精たちはあなたの力になり、悪さをすることは無くなるだろう)


 まぁ、眉唾ものである。でも、この世界は本当に魔法の力があるというのなら、試してみてもいいんじゃないかな、と思ったんだ。

 枕元にそっとミルクを置いて、今日一日の出来事に感謝をする。魔法で何か怪我をすることもなかったし、義姉上は今日もめっちゃかわいかったし、いいことばかりだったと思う。


「土の精霊ノーム。明日からもまた、俺に力を貸してください」


 目を閉じて手を組み、そう口に出してみた。


(よかろう)


 どこからともなく声が聞こえた気がして、俺は目を開いてきょろきょろと周りを見渡してみた。でも特に何か変わった様子はなかった。


「……気のせい、かな?」


 そして布団に潜り込んだ俺はあっという間に眠りに落ちてしまった。

 翌朝になってコップに注いでおいたミルクが無くなっているのを見て、本当に驚いたのは言うまでもない。


魔法の適性のお話なども出てきたりして。

ヴィーとマルガレーテの魔法適性はなんとなくで決めました。

あと一回くらいで幼少期は終わる予定です。

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