341 ラキの調教
「なんだそのよくわからねー生き物は……」
ルーの呆れた視線の先で、アゲハがシャキーンとポーズをとっていた。
「ええと……元々火の下級精霊で、今はちょっと管狐で……」
「全くわからねー」
ルーは興味も無いと言いたげにごろりと横になった。ただし、お土産にと、簡易テーブルに並べてあったお団子はちゃっかり平らげたようだ。
リラックスモードに入ったルーの、ぱすん、ぱすんと落ち葉を叩くふさふさ尻尾にアゲハが目を輝かせた。必死に止めるチュー助をものともせずに、大喜びでじゃれついている。
閉じられてしまった金の瞳を残念に思うけれど、こうなればさわり放題だ。横たわる体によじ登り、まふっと大きな体を抱きしめた。ルーがわずかに身じろぎすると、柔らかな毛並みの下でしなやかな筋肉が動くのが伝わってくる。
「ルー、最近お風呂入った?なんだかすべすべするね……気持ちいい。ねえ、火山で温泉に入ったんだよ、今度また一緒に温泉しようね」
「………」
一人でおふろに入ったのかな?しばらくルーの丸洗いをしていないから獣臭が強いだろうと思ったのに、触れる毛皮はふわふわと滑らかで、臭いもしない。
『ふわふわだねー』
シロも横たわって、ぽすっとルーの体に顎を乗せてにっこりした。
『さすが神獣よねえ……この毛皮、本当に最高だわ』
『むぅ……スオーだって、お手入れしたらふわふわ……』
モモと蘇芳もオレの側に陣取った。蘇芳の毛並みもふわふわして気持ちいいよ、お手入れもしようね。
「ピッ!」
――ラピスも~!
ぐいぐいとオレの首元に体を押しつけたラピスとティア。ルーとはまた違った柔らかな毛並みと高い体温がくすぐったい。既にすやすや眠っているポケットのムゥちゃんも、そっとふわふわ毛並みに埋めてあげた。
「……てめー、俺の体をなんだと……」
うっすら開いた瞳がじろりとオレを睨んだ。ルーは最高級のお布団よりも、もっと最高な寝床だよ。
漆黒の毛皮にふわりと頬も伏せれば、じんわりと温かさが伝わってきて、うっとりと目を閉じた。するすると滑らせた手が段々と温かくなってくる。
「……勝手に俺の上で寝るんじゃねー」
「……寝てない!寝てないよ?!」
ハッとしてよだれを拭うと、ぶんぶんと頭を振った。ちょっと日が傾いた気がするけど、寝てはいないはず……。
『あうじー!ここ、おみじゅー!』
し、しぃっ!!
慌ててアゲハをポケットに突っ込むと、ごしごしとルーの毛皮を拭っておいた。
――ユータ、起きたの!そろそろ街に行くの?
ね、寝てないってば!でも、そうだね……夕方までにはハイカリクに戻ろうって話をしてたんだっけ。
ラキとタクトは一緒にいるらしいから、ちょっと羨ましいなって思ったんだ。明日の休みはオレも一緒にお泊まりできたらいいんだけど。
オレはどこかじっとりした視線を受けながら、またね、とルーに手を振った。
「おわっ?!」
ドアを開けた途端、大きな固い物がぶつかってきて、ガシリとオレを捕まえた。完全に浮いた足がぷらぷらして、だんだん大きくなってきた身長差を思い知らされる。
「うおおーユータぁ!会いたかったぜ!!」
ひしっとオレを抱きしめてぐりぐりするタクト……その万力のような締め上げはマリーさんを彷彿とさせた。
ビシッ!
「いてぇっ!」
タクトの頭がガクンと後ろへのけ反り、緩んだ両腕から無事に脱出成功!ラキ、お見事……跳弾すら操るとは……腕を上げたね。
「タクト、集中~!ここ終わったらユータと遊んで良いよ~」
「ふぁい……」
真っ赤になった額をさすりながら、しおしおと机に戻ったタクト。随分素直に勉強するようになったんだなと………ちょっとばかり背筋が寒くなった。
「ユータ、おかえり~もっとギリギリまで家にいるかと思ったよ~」
「ただいま!いっぱい遊んだからもういいんだ!」
能面のような顔で課題をこなすタクトを尻目に、オレは今回のお土産を広げた。
「わ!いいな~火山行ったんだ~!サラマンディモン?この石いいよ~!」
さすがラキ、素材を見ただけで火山に行ったって分かるんだね。マリーさんとセデス兄さんに教えてもらって、素材に良さそうなものを見繕ってもらったんだ。
「ラキたちはお休みの間依頼受けてたの?」
「そうだね~なるべくタクトの避けてる依頼をこなして、あとは長期依頼に向けてタクトの集中講座やってたよ~!僕はタクトお父さんを手伝ったりね~実りのあるお休みだよ~」
「そ、そう……」
そりゃあタクトがやつれるわけだ。でもおかげで長期依頼はたっぷり行けるかもしれないね!
「ラキの手伝いって……」
『あえはー!』
『ダメー!お話の途中で入ったらダメ!もっと格好良く且つ見せ場なシーンで登場しなきゃ!』
そろそろ我慢できなくなったらしいアゲハが、ぴょこんと胸ポケットから飛び出してきた。チュー助に抱えられてきゃっきゃと手足をばたつかせている。
「………ユータ、なにそれ~?管狐じゃなくない~?」
「う、うん……火の下級精霊だったんだけど、いろいろあってこうなったの」
「なにがあったらそうなるの~」
オレのしどろもどろな説明に、ラキがふう、とため息をついた。
「また変なのが増えたね~装備品増やさなきゃ~」
ラキがぶつぶつ良いながらアゲハをじっと見つめている。
「わあ!装備品作ってくれるの?!」
「うん、そういう話だったでしょ~?取り付けたい魔石があれば教えてね~」
ラキには、オレとみんなの装備品、と言うべきか装飾品と言うべきか、何か身につけられるものをお願いしてるんだ。形状はモモもいるからお揃いにするのは難しいけど、魔石を揃えたら、それはお揃いって言ってもいいよねって相談していたんだ。
「魔石はね、オレのこの指輪とお揃いがいいんだ!」
掲げたオレの指に嵌まっているのは、ラキが試作に作ってくれた、生命魔法の魔石が嵌まった指輪。
「うーん、その魔石はとても手に入りにくいから……みんなの分揃えるのは難しいんじゃないかな~」
「大丈夫!オレが手に入れるから!」
「………どうやってかは聞かないでおこうかな~」
うきうきするオレから、ラキがそっと目をそらした。
「ねえ、このお団子は食べちゃっていいの~?」
「いいよ!紅茶も淹れて貰ってるから、一緒に食べようよ!」
スイートポテトもどきのお団子に、よく合う紅茶を収納に入れてあるんだ。いそいそとティーカップに注ぐと、ふわりと良い香りが漂った。
「美味しいね~!こっちのは形が違うけど……あ、これも美味しいよ~!」
「こっちはオレが作ったの。オレの故郷ではこんな風に食べていたんだよ」
懐かしくなって、サラマンディアでお芋をたくさん買っておいたんだ。思った通り、見た目は違うけれどサツマイモによく似た甘いお芋だ。
丁寧に裏ごししたお芋のねっとりとした食感に、香ばしい焼き目。こっくりと甘く、食べ応えのあるスイーツだ。新鮮なバターと生クリームを使ったスイートポテトは、地球で食べていたよりずっと美味しく感じた。
「なあ……俺もここにいるんだけどさ……そろそろそっち行っていいか?」
「終わったの~?」
「………まだですぅ!!」
頑張れタクト……オレにはただエールを送ることしかできないよ……。哀れなタクトの背中を見つめて、オレはそっと目頭を押さえた。
シロ:(ぴたりと寄り添う)ね、タクト、それ早く終わらせて一緒に遊ぼうね?ぼく、ここで待ってるからね。
タクト:うおおおーシロ、お前だけだぁーー!!
ラキ:タクト、泣いてたら進まないよ~?
タクト:うおおおおー!!
ついに!もふしら漫画版が発売されますよ!!既にamazonさん等で予約が開始されてます!
ウキウキしますね!!かっこいいカロルス様が目の前で見られる~!依頼したらきっと一枚ウン万円のイラストが…あんなお手頃価格で入手できるとか!!幸せですか!!!(笑)






https://books.tugikuru.jp/20190709-03342/