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022 「術式展開! 魔鋼体結界!」

 新年、あけましておめでとうございます。

 今年も、少女と魔界のエンブレムをよろしくお願いいたします!

 ……と言っても、今月来月あたりに完結は迎えそうですが。


 実は前作を書きまくっていた時期に、もう投稿してあったこの作品。実は1月10日で投稿して一年です。更新が遅かったことが証明される……!


 では、22話、どうぞ!

 キファルガスは俺たちが憑依すると、すぐさま斬りかかってきた。しかし、キファルガスとはいえ、所詮は焦りに任せた攻撃。隙だらけの攻撃は俺でも躱すことが出来た。

「で、ルメナ。これからどうするんだ? 正直、俺の力じゃキファルガスは倒せないんだけど……」

『そんなの承知よ。作戦としては、左手だけ私が使う。他は自由に使って』

「何でまた左手だけ……」

『今から使おうとしている魔法はちょっと展開に時間がかかるの。それまで耐えて。耐えられたら、私たちの勝ちはすぐそこ。つまりは、あなたが最大限動けて、私が最低限魔法を展開するにはそれが一番なの』

「……ああ、分かった」

 要するに、時間稼ぎなわけだ。ルメナが魔法を―効果は知らないが―展開するまでに、躱すなり受け止めるなりして、万全の状態で挑めるようにする。展開できれば勝利はすぐそこ、とルメナが言うくらいなら、切り札になってくるのはまず間違いないだろう。

 つまり今は……防御は最大の攻撃なり、ってわけだ。


 キファルガスはそれからも一方的に斬りつけてきた。しかし、やはり隙だらけなのは変わらず、躱すことも簡単だし、漆黒剣が情緒に反応すると分かっていれば、受け止めることもさきほどより断然楽にできた。彼女の愛する故郷、魔界を救いたいと心から思っているからだ。

 その攻防が続く間も、ルメナは黙々と魔法を展開している。

『剣哉』

 と、キファルガスに注意している最中、ルメナが話しかけてきた。

「どうした?」

『だんだんとキファルガスの動きが繊細になっているから気をつけてほしい。それと……彼の狙いは明らかに左手。少しでも展開がずれたら発動しない魔法だから、意地でも左手だけは死守して』

 ということは、ずっと前からキファルガスが恐れていたことは、このルメナが発動させようとしている魔法というわけなのだろう。やはりこれが鍵を握っているみたいだ。


 そうと分かれば左手を守りながら時間が経つのを待たなければならない。ルメナの言った通り、だんだん躱しやすかったキファルガスの攻撃も、危うく斬られるという場面が多くなってきた。

 そうなってからは受け流すことが多くなり、どっちにしても結果は変わらず、左手はきちんと守れていた。



 しかし、突然に劣勢が回ってきた。

 足が硬直して、全く動かなくなってしまった。前に進もうとしても、棒状の足は曲がることもない。

『どうしたの!?』

 なおも左手で魔法を描き続けるルメナが驚いていた。

 もちろん、俺自身も驚いている。でも理由はハッキリとしていた。生まれてから運動など体育の授業だけの俺にとって、ここまで歩き、走って戦うのはハードすぎた。インドアの最終形態がいきなりこんなに動けば、足が悲鳴をあげるのも無理はない。

 その瞬間、躱すことは愚か、受け流すことさえも難しくなった。キファルガスの剣を受け止めて、自分がサイドに移動し、俺の剣を傾けてキファルガスの剣を滑らせる。それが、それまでにやっていた方法。しかし、足が言うことを聞かなくなってしまった以上、その方法は実行できない。

「……もっと運動しとけばなぁ……」

 そう、ポツリと呟いた。今更になって、この世で一番面倒くさいと思っていたことが必要だったと気づかされる。

 その言葉の意味を察したのか、ルメナは俺が零した声を聞くと、何も言わずに魔法の展開に集中し直した。


 こうなってしまった以上、対策法は一つしか残っていなかった。

 ――キファルガスの剣を受け止める。

 先ほど、成功している行動ではあるが、明らかに状況は違う。今度受け止め、支えるのは、漆黒剣を握る右手のみ。添える左手はない。

 力で打ち勝とうとなど思ってはいない。気持ちで勝つ。それしか方法はない。

 魔界を守りたいという俺の気持ちが、キファルガスの俺たちを破壊したい気持ちを上回れば、勝機はきっとある。


 冷静さを取り戻しつつあるキファルガスが、呼吸を整えて、再び斬りかかってきた。光のような速さも、慣れてしまえばこっちのものだ。とりあえず剣を受けることは容易い。

 そして事実上力のぶつかり合い、理論上気持ちのぶつかり合いが始まる。右手で持った漆黒剣は先の方が情けなく下を向いてしまっている。

 ずっしりと重い力が上からのしかかる。左手がないだけで、かなり受ける力は変わっていた。

 しかし、漆黒剣独特の能力により、耐えることは出来た。跳ね返すとまではいかなくても、これだけ出来れば十分だ。

「ルメナ、あとどれくらい?」

『もう少しで完成する! だからあとちょっと踏ん張って!』

 彼女の言うあとちょっとが、どれくらいかは不明ではあるが、とりあえず耐え凌ぐことが出来そうだ。それだけで少し安心だ。


 しかし、そう簡単に行く相手ではないことを忘れかけていた。

 キファルガスはずっと押し続けていた剣を一旦引き、勢いをつけて再び剣を振りおろした。それを何回も繰り返し始める。

 普通に押し続けられるよりも辛いのは一目瞭然。一回一回の攻撃が重くのしかかる。


 そこで、キファルガスの力は、俺の気持ちを超えてしまった。


 漆黒剣の防衛を突破し、ルメナの操る左手へと向かう。ここで剣を受け止めてしまえば、今まで描いてきた魔法は全て白紙。かといって斬られたら――死ぬ。

 その左手に向かおうとした瞬間――。


『術式展開! 魔鋼体結界!』


 澄んだ可愛らしい声が響いて、俺の周りを結界が包み込んだ。ピンクと紫、緑で作られた魔法陣は、魔界の道を思い出させる。


 そして、ふと気がつけば、俺はキファルガスの真後ろにいた。

「……え?」

「くそっ……!」

 呆ける俺と、舌打ちをするキファルガス。

『魔鋼体結界。魔界に存在する最高峰の魔法よ。一時的に身体能力を最大限まで高めて、戦うの。足ももう動くでしょ?』

 言われてみると、簡単に曲げ伸ばしが出来る。


『さぁ、あなたの力は魔鋼体結界でキファルガスと同等。思い切り戦っちゃいなさい!』



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