少し昔ばなしをしようかな [少年、空を疾る]
やあみんなー。げんきー?
りせた。だよー。
毎日暑いよねぇ。
チリリンと風鈴の音が、涼し気な風を運んで……こないねぇ。
風流を無理矢理感じなければならないとは。なんてこった。風鈴すら、機能不全だな。
まぁ脳が機能不全起こしてるような、自転車暴走BBAよりはいいけど。害悪ってわけじゃないから、さ。チリンチリンうるせぇんだよ、アイツら。害虫と変わらねぇよ。捕まれ。
そんで、ちょっと思い出したんだけどさ。
前、外国のひとがやってるYouTubeで、『日本の自転車はタイヤが綺麗過ぎる』って言われてたんだよ。
『どこもかしこも舗装してあるから、タイヤに土が付いてない! ヤバすぎ!』
なんだってさ。
筆者、それ見て、ふと思い付いたんよな。
『アスファルト舗装のせいで、温暖化……というか、灼熱化してね?』と。
土に比べると、圧倒的に熱いもんな、アスファルト。触るとヤケドするぜ! って感じある。キラリと光ってやがるもんな。黒いけど。
まぁ、走りやすいんだけどさ。アスファルト舗装。
おかげで幼少期も。三輪車から二輪自転車に乗り換えて、翼を手に入れた気になって……2キロ先にある駅を越えて、ぐるっと市内を走り回った幼稚園児だったからなぁ。
走りやすかったんだと思う。道路。そうじゃなければ、あんなの無理だったろうしな。
てか、砂利道やら土の道とか、あんまり馴染みないもんなー。
だから。
ある日、いつも走ってた友達の家付近の道端で、何やら作業してたおっさんがいたんだが……。
筆者は、そんなことは何も気に留めず、いつも通りにT字路を曲がろうとして。
——ズルンッ……! ブワッ……ガシャーン!!
ってなったんだよな。
本当に突然だった。
「おおい。大丈夫か? ボウズ」
って、おっさんに言われたけどさ。
どうも、そのおっさん、モルタル練ってたっぽいんだよな。
材料こぼしまくってて、道路、砂だらけになってたんだ。
滑った瞬間は——勢いよく、後輪が吹っ飛んでいった感覚だったなぁ。
中々の浮遊感と、衝撃だった。
しばらく喋れなかったもんなぁ。
「……だいっ……じょ……ぶっ……」
とか、呼吸もままならない感じで答えた記憶がある。
てか、原因作ってたのはおっさんだってことにも、当時は全然気付かなかったわけなんだけどね。
それから、2年ほど経ち。
筆者は、少し大きくなった。幼児は卒業である。なんせ、小学二年生だからな。立派な少年だ。
当時、流行っていた遊びがあった。
自転車の曲乗りである。
手放し運転や、前輪を上げるウイリーや、後輪を上げるジャックナイフ——なんかである。
特に、ウイリーで何メートル進めるか……というか。誰が一番進めるか……という勝負が熱かった。熱かったのだ。
——それは、とある日。
学校に集合して遊んだ帰り道だった。
元気いっぱいの少年は、自転車を精一杯漕いで、帰路を進んできていた。もちろん、技の練習は欠かしていない。
道すがら、ぐんぐんとスピードを上げて、ウイリーをする。少し、走行距離が伸びた。練習の成果である。
(やっぱり、スピードだ! スピードがあれば、たくさんすすめる!)
少年は、まだまだ拙い脚力で、とにかく頑張っていたのだ。
少年の家の前には、地下道がある。国道の下を通してあるトンネルだ。
階段式ではなく、下り坂上り坂だけなのだが、あんまり大きくはない。
その頃ちょうど、下り坂入り口中央に、車止めが設置された。
つまり、歩行者、自転車、バイクくらいしか通れない仕様に変更されたのである。
そして、人通り自体も少ない場所だった。
そこに、差し掛かった瞬間。
——ピィンッ……!
と、脳内に電気が走った。
そう。
閃いたのだ。閃いてしまったのだ。ナイスなアイデアを。
(この坂で加速してウイリーしたら……めっちゃいけるだろ!)
少年は、腰を浮かせて、全力でペダルを踏み込んだ。
空気を切り裂く感覚。
いまだかつてないスピード。
まさに、疾走。
(これは、いける……!)
高鳴る鼓動は、運動によるものだけでは、なかった。
——ここだ!
下り坂の終点。ぐんっと、ハンドルを握る手に力を込めて、前輪を上げた。
——ブワッ……!
浮いた。
……後輪も。
(あ、これ、アレだ……。E.Tだっけ……)
少年は、空を——疾った。




