いらないサプライズ
はろはろー。
みんなげんきー?
りせた。だよー。
世の中ってさ。結構要らないモノってあるよね。
筆者も、よく世の中の企業さんから要らないって言われてる不用品なのだ。つらみ。
回収業者にでも引き取ってもらおうかねぇ。
リサイクルリサイクル。SDGsしようぜ。意外と使えるかも知れんのよ。我を再生してくれぃ。
……なんてね。
あなたは、要らないものとかある?
筆者的にはね、色々あるんだけどさ。
いつのだか分かんない書類とか。
借金とか。
こころの傷痕とか。
まぁ、色々あるんだけどさ。
もう少し、明るいとされているようなものでも、あるんだよね。
それは、サプライズだ。
そう。表題の通りだな。
サプライズ。
するのもされるのも、嫌なのである。
何故なのか、というと。
筆者は、結構リアクションが薄いのだ。
まぁ、事前に判っていれば、ちゃんと心の準備が出来ているので、キチンとリアクションを取ることが出来るのだが。
サプライズって、教えてくれんやんね。「やるよ!」ってさ。
だから、素の反応が出やすいんだよね。
「わっ!」
「……ん? ああ。え、なに?」
「サプライズだよ!」
「へー……。そっかー……」
ってさ。
これさ、めっちゃ不評なんだ。
そして。
角とかに隠れて、「わっ!」って驚かすヤツあるやん。
あれとかも、「おお」くらいなんだ。よくて。
驚かせがいがない! と、何度言われたことやら。
文句があるなら、事前告知しといてくれよな。『驚かすから、驚いてね』ってさ。そしたらちゃんとそれっぽくするのにさ。全く。根回しとか、準備とか、大事だろうに。ぶっつけ本番で上手くいくことの方が、少なかろうよ。と、いう話である。
——とある日。
出張で、首都高を走っていたら。
「なんか、焦げ臭くね?」
隣に座っていた上司が、そんなことを言い出した。
「そっすか?」
季節は、冬に入ったところ。窓は閉め切っている。エアコンからでも臭って来てるのだろうか?
「焦げ臭いって。エンジンとか大丈夫か?」
いつもいつも神経質な感じで、指摘の多いひとだ。
「んー……ランプとか、なんも点いてないっすけどねー……」
と、言った瞬間だった。
——ドンッ!
鈍い音が耳に届いた。途端に、ハンドルがとてつもない勢いで躍り出した。
——ガタガタガタ……!
車体がブレる。手の平をすり抜けようとするハンドルを、グッと捕まえて、壁に吸い込まれたがる車の挙動を無理矢理抑え込んだ。
「え、ちょ、な、なにそれ?! な、な、な、ちょ、やばいって!」
上司は、煩かった。チラリと横目で見ると、天井の取っ手——アシストグリップと、シートベルトを右手左手それぞれで引っ掴んでいた。
……さっきまで弄り倒してたスマホ2台はどうした。LINEだかゲームだかしてただろ。大人しくソレやってればいいよ。
「んー……。なんすかねー? ハンドルガタガタっすわ。とりあえず、端寄せますねー」
「よ、寄せるって、こ、こんなでか?! 出来るの?! 死ぬ……しぬ……!」
……出来る出来ないじゃなくて、やるんだよ。じゃないと死ぬの。アンタと心中は勘弁だわ。
煩い上司を適度にスルーしつつ、徐々に減速しながら、緊急電話のある地点に——寄せて、止めた。
社外に出て確認すると、タイヤがバーストしていた。焦げ臭かったのは、ゴムが摩擦で融けた臭いらしい。
「タイヤ、バーストしてますわ」
なるほどな。タイヤに空気がなくなると、そうなるのか。
「マジかよ……。あー……生きた心地がせんかったわ……。てか、なんでそんな平然としてんだ?」
「いや、平然とはしてないっすよ。もう23時過ぎだし。とりあえず、保険とか使えるのか探さないと……車検証は……」
……こんな時間にこんなサプライズ、要らんっての。日中より更に面倒くさいだろ。これ、今日寝る時間あるか……?
早足で車外から助手席側へ回って、ダッシュボードを開けた。
「たぶん、コピーしかないぞ?」
助手席から降りもせず、上司はヘッドレストに頭をくっつけたまま、そんなことを言った。……いや、降りろよ。
「えー……。マジっすかー。んー。じゃあ、本部長に確認取らんと、レッカーも呼べんな……」
そうして、筆者はスマホを取り出した——。
結局この後……事故処理で、ホテルに着いたのは3時過ぎだった。次の日のアポも、車がない……というより。修理のために動くことになったので、行けなくなったのだった。
ちなみにこれは、高速道路走行中にタイヤバースト事件の初回である。この時は、右前輪だった。
更に、この社用車。数年越しで、全タイヤがバーストしたのだ。それも、全て高速道路走行中に、だ。
計4回、同じような目に遭ったわけなのだが……。
その都度、一緒に乗っていた部下や、報告先の部長から「落ち着き過ぎ」「反応薄すぎ」などのお言葉を頂いてしまったのだった。
……え?
普通じゃね?
だって、パニくったら危ないよ?
と、思っていたから、そのままそう答えた。
すると、何故かみんな口を揃えて言うんだ。「おかしい」と。
まぁ、たくさんのひとがそう言うんだから、そうなのかも知れないな。
——そして、ある冬の日。
新年明けまして、休みが終わり。出社しなくては……な感じで。ほへぇ……っと、会社に行っていたのだが。
「今日さ、13時にランチ行ける?」
と、急に上司から聞かれた。
この頃、昼休憩は各自の仕事の進み具合で勝手に取っていたため、珍しいことだった。
「んー? まぁ、いいっすけど……」
内心、調整するの、ちょっとめんどいなーと思っていたのは秘密だ。
13時になり、上司と連れ立って車に乗り込んだ。
「あ、今日は行く店決まってるから」
「え、珍し……」
いつも、一緒に昼飯食いに行くときは、『どこいく? どこがいい? 決めてよー』とか言ってばっかなクセに。雪降るんじゃねぇの?
なんて思いながら、その店を目指した。
「ここの部屋」
店に着いて、言われるまま進む。
昼間っから、個室のある店かよー。と、思いつつ襖をあけると。
「あ、きたきたー」
女性社員が3名、既に鎮座していた。
「ん? ああ、今日は皆でって感じだったのか」
あまりないことだった。
「まぁまぁ、座って座って」
何故か、みんなニヤニヤとしていた。珍しい催しが、楽しいのだろうかね?
促されるまま座ると。
「お誕生日、おめでとー」「おめでとー」「おめでとうございますー」
と、言われ。白い箱を渡された。明けましておめでとうの聞き間違いでは……なさそうだった。
だが。筆者の誕生日は、12月31日。もう、とっくに終わっているのだ。しかし、女性3名は笑顔。上司もニチャアとしている。
「……? なにこれ」
大きくも小さくもない、重くもない、白い箱に——目線を送った。
「プレゼント、プレゼント。開けてみて!」
言われるがまま、箱を開けると。
「ん? コップ?」
外側が茶色の樹脂、内側はステンレス製と思しきコップのような物体だった。
「保温出来る湯呑だよー。蓋つきの!」
「私が選んだんですよー!」
「コーヒーとか飲みますよね?」
女性陣は、どうやら3人でお金を出し合ったとのことだった。
「コーヒー、飲むけど……」
「それにー……なんと! 名前入りなんだよー?」
「……あ、ほんとだ」
樹脂部分の中央辺りに、縦書きで、銀色の文字列。『輝け! りせた。』と、プリントされていた。
「どうどう? すごいっしょー? いいねー愛されてるねー」
「そっかー。んー……。ありがと」
「なにー? 反応薄くなーい?」
大丈夫だ。まだ、髪は薄くないから。そんなことより、下から上目遣いに覗き込むのはやめようぜ? 歳を考えよう? それは20代までくらいしか許されない技だぞ……?
などと、つい他ごとを考えてしまっていたのだった。
まぁ、だから、サプライズは要らないんだよね。
ほんとに。




