二番艦 「軍神という存在の起工式」
「おぉぉ…成功…した…」
朦朧とした意識の中で誰かの声が聞こえる。一人ではない。大勢のざわめき声が耳に入ってくるのが分かる。
何が起こった…?俺は本を開いて…そうだ…確か突然下から光が溢れて…
混乱で埋め尽くされた俺の頭は勝手に重い瞼を開く。暗い目には天井の光が反射する。
なんだここ…?この天井…明らかに図書館じゃない…
豪華絢爛な天井、宝石の様にきらびやかなシャンデリア、まるで中世ヨーロッパの宮殿の様だ。
「静まれ!!」
突然の出来事に唖然としていると、凛々しくも幼い声が大広間に響き渡る。
先ほどまでのざわめき声がウソのように静寂に包まれた。
俺は仰向けの身体を起こし、大きな声が聞こえた方向に体を向ける。
上質そうな紅のマント、数々の美しい装飾が施された黒い軍服の様な恰好をした一人の男の子が自分より高い位置に立っていた。
青色の髪に白い瞳、とても愛らしい整った顔をこわばらせている。
その後ろには2つの大きな旗が明りに照らされ、煌々と輝いていた。誇りと威厳を感じるその旗はこの広い大広間の中でも一番の存在感を放っている。左の旗はまるで絵画の様に見えた。
左右には大勢のローブを被った人々が男の子を直立不動で見つめている。
彼は6、7段ある階段を降り、俺に向かって跪くと嬉しそうな声で話し始めた。
「ようこそお越しくださいました、軍神様。私はレヴァンクレス皇国皇帝 エゼリオン=アマディウス=ルオ=レヴァンクレス。貴方をこの地に召喚させていただいた者でございます」
「…軍神…?皇帝?」
ただでさえ情報が整理出来ていない俺の頭にさらなる情報の暴力が襲い掛かる。
何故か笑顔なのに泣きそうな顔をした目の前の男の子がさらに情報の完結を阻止している。
「はい!私はレヴァンクレス皇国皇帝 エゼリオン=アマディウス=ルオ=レヴァンクレスでございm…」
「いや、二度も言わなくて良い。それより軍神って何?俺は多分あなたが言う軍神ではないと思うけど…」
俺はなんとか動揺を抑えながら冷静に質問した。
すると男の子は先ほどとはうって変わって真下にうつむき黙り込む。
あれ…?これヤバくね?俺が軍神って存在じゃ無いって知られた今、俺はどうなるんだ…?
軍神を召喚したはずなのにただの人間が召喚されたって失敗どころの話じゃないぞ…役立たずとして殺されてもおかしくない…
…いまからでも軍神って存在のふりでもした方が…
俺の頭は再びフル回転して思考する。何かしゃべらないとまずい…と思い口を開こうと思った瞬間、彼はうつむいた頭を勢いよく上げて碧の顔を見つめて言った。
「なら今からなりましょう!なれますよ貴方なら!」
…………………
「ん????」
俺はこれまで人生でした事無い様な困惑した顔で固まった。
「あの…大丈夫ですか?…あー…多分僕の話が訳分かんなくて固まってますね…」
「だから事前に言ったでしょう…なんの説明もなしにこんな意味不明な事言われたら誰だってこうなりますよ…」
貫禄ある老人の声がエゼリオンの隣から発せられる。
エゼリオンは少し間をおき、一呼吸してから放心状態の碧に言った。
「貴方の名前は『アオイ』。そうですよね?」
俺はその彼の言葉を聞き、我に返る。
「え、あぁ…その通りだけど…なぜ俺の名前を…?」
「それについては私が説明します」
高貴な服装をした老人が一歩目の前に出て名乗りをあげる。
「私はバルドウィン・シュトラウス。レヴァンクレス皇国の宰相を務めております」
「貴方様の名前が分かる理由、そして貴方様を召喚した理由をお話しします」
バルドウィンはよりキリッとした顔で話し始めた。
彼が言うには、レヴァンクレス皇国皇室には建国当時から軍神という存在をこの世に顕現させる儀式が受け継がれてきたらしい。軍神とは皇国を他国の脅威から守る為の『知恵』を授ける存在である…と…
そういう神話がこの国、レヴァンクレス皇国にはあるらしい。そしてその軍神とやらの名前というのが『軍神アオイ』
その神話を頼りに儀式をしたところ、俺が召喚された…という…
なんとも迷惑な話だ。
俺は話を聞いた後、呆れ気味に言った。
「申し訳ないけど俺は多分あなた達の言う軍神って存在じゃ無いと思う。そもそも俺は人間だし…」
「いえ絶対に貴方です!黒い髪に黒い目、神話通りの姿。第一にあの召喚儀式は軍神様が対象な訳なんですから」
エゼリオンは碧の言葉に力強い声で返した。
「あぁー分かった。とりあえず俺が軍神かどうかの話は置いておこう…それより俺は召喚された理由を知りたい」
俺はわざとらしくそう質問した。全て分かりきっているからだ。しかし目の前で目を輝かせ、喜びをぐっと抑えてる彼に真実を伝える気にはなれなかった。
「そうですね。分かりました。それでは…私どもから恐れながら軍神様へお願いがございます」
エゼリオンはそう言うと跪いたままの体制を整える。頭を深々と下げ、目を瞑り、深く呼吸する。
周りの人間もそれに合わせる様に碧に向かって跪く。
「私達の祖国レヴァンクレス皇国を敵国から守る為…貴方の力を貸してほしいのです…!!」
エゼリオンの覚悟を秘めたその声は大広間中に響き渡る。こんな子供からここまでの渾身の声が出せるのか…と俺は思わず胸が熱くなった。
しかし…その決意を告白する相手が他でもない俺である事に…かなりの罪悪感を抱いた。
俺は目の前の少年の様に腹をくくる。真実を話す瞬間、俺は目の前に一つの可能性がある事に気づいた。
あの旗だ。男の子の後ろの幕にかかる輝かしい旗だ。恐らくあの2つは国旗と王朝旗だろう。
元の世界では国旗はどんな旗よりも上位に存在する。
それは王朝の旗も例外ではない。日本で例えるなら日章旗は天皇旗より上位に位置している。そして上位の旗は必ず左に掲揚されるのだ。
その固定概念に倣うなら左の旗が国旗だろう。右が王朝旗。見た目的にもそっちの方が自然だ。
そして国旗にはその国の特徴が色濃く反映されるものだ。
俺が左の旗を見た時”絵画の様”だと感じたのはどうやら正解だったらしい。
だって俺はこの風景を何度も見た事があるのだから。子供の頃から今になるまで何度も…
まるで俺に向けたヒントの様な旗だ。
「エゼリオン…皇帝陛下。ここ、レヴァンクレス皇国は島国、もしくは国土の殆どを海に囲まれた国なのか?」
俺は自信に満ちた声でそう尋ねた。
誤字脱字、ここの文少し変、ここはこうした方が良いなどと思ったら是非コメントをお願いします。




