1. 責任転嫁だよね?
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『この人』さんは、坂口先生が用心棒として働いているカジノまで案内してくれた。闇カジノって言うから、住宅の地下とか、廃墟の一室とか、そんなものを僕は想像していたんだけど、行ってみたら、市街の中心地にあるし、宮殿みたいに立派な建物だったんだよね。
屋根なんかお椀みたいな形でエメラルドに輝いているし、本当にこれが闇カジノなのかな?っと思ったんだけど、普通に、王族も通うような高級カジノなんだってさ。闇の仕事も受注する場所だから闇カジノっていう呼び方をするんだって。僕は違法カジノのことを言っているのかと思ったよ。
さて、僕らは露店で購入したサトウキビのジュースを飲みながら、カジノの前までやって来たわけなんだけど、『この人』さんの所為なのかな・・用心棒みたいな男たちがワサワサ表門の方から出て来ているわけ。
大蜥蜴の獣人が半分くらいいるかな?この世界には大蜥蜴の獣人っているんだね!始めて見たよ!
「西山先生!全ては西山先生の所為なんだ!先生がカーンの街で吸血鬼卿なんかに手を出すから!俺の生徒達が連れて行かれることになっちゃったんですよ!」
すると、見知った男がこちらに向かって泣き叫び始めたわけだ。
「俺の生徒を返してくれ!返してくれ!」
大蜥蜴の獣人に囲まれた阪口先生が一人で叫んでいるのだが、何を言っているのか言葉の意味が全く良く分からない。
「いや〜あの〜、阪口先生?阪口先生がそこのカジノで大負けして借金を背負うことになって、その借金のかたとして生徒達が連れて行かれたんでしょ?何でそれが僕の所為になるんでしょうかね?」
僕が大声をあげて坂口先生に呼びかけると、阪口先生はムキになって言い出した。
「だから!そもそもその借金自体が全て仕組まれていたことなんです!」
カジノの入り口には5段の階段を登って行かなければならないのだが、その階段の上に集まった二十人ほどの用心棒たちの中で、冒険者のように腰に剣を差した異世界剣士みたいな格好の阪口先生が、目を血走らせ、唾を吐き散らしながら大声を上げる。
「西山先生が吸血鬼を倒したのが悪いんだ!俺は悪くない!全ては先生が!西山先生が悪いんだ!」
「なんと無茶苦茶な・・・」
前から反省をしない人だなぁと思っていたけれど、責任転嫁までするような人だったんだな。
すると、奥の方から大きな体つきのまだらな模様に染まりあがった大蜥蜴の獣人がやってきて、
「『この人』を殺せーーーーー!」
と、叫び出したのだった。
「ありゃりゃりゃ、ハムダンの奴も、頭の狂った異邦人も、吸血鬼卿の血の継承行為を受けているバウ」
僕の後に立つバウさんがそう言うと、
「あらあら、仕方がないネー」
と、この人さんが呆れた調子で言い出した。
用心棒の人たちは階段を駆け降りて来たんだけど、特攻隊みたいな感じで剣を引き抜いた阪口先生が、口の端から泡を飛ばしながらこちらの方へと向かってくる。
「俺はBランクなんだ!俺はBランクなんだ!」
そういえば阪口先生って、こっちが尋ねてもいないのに、自分が名門の体育大学を出ているって主張するような人だったよなぁ。剣は本物みたいでギラギラ光っているし、これで斬りつけられたら間違いなく大怪我をするだろう。
「貫通魔法」
銃を撃つように魔法を発射させると、こちらに向かってきた阪口先生が肩に穴を空けながら後ろの方に吹っ飛んでいった。
「先生、もっと派手にやっちまってもいいネ〜」
「連続貫通魔法」
僕の貫通魔法は、銃弾のように発射させることも出来るんだけど、距離が遠のけば遠のく程威力が弱くなっていくわけだ。ただし、レーザービームを意識し魔法を試みれば、速さはないんだけど、どこまでも、どこまでも、ピロロンに制限をかけなければ貫通していくことになる。
十本の指から照射されるレーザービームは、大蜥蜴の獣人の体を貫通しながら、後ろのカジノも破壊していく。
羽蟻クピンの巣に比べたら豆腐のように柔らかくて、あっという間に豪奢な建物が瓦解していった。
「やっべー!」
とは思ったものの、僕はやっぱりカジノは良くないって思っているんだよね。IR法案についてもどうなんだろうって思っているもの、賭け事反対!お金は大事に貯蓄しよう!
「グァーーーッ!ワシのカジノじゃんかーーーッ!」
目を血走らせた大型の大蜥蜴の獣人が、壊れたカジノに怒り狂いながら長い尻尾を振り回す。こいつは最早正気じゃないようで、周りの用心棒も巻き込んで吹っ飛ばしていた。
まるで竜巻のように自分の尻尾を回転させていく大蜥蜴の獣人に近づくことすら出来ない、奴自身がぐるぐる回っているので、僕なんかがうっかり近づいたら即座に弾き返されてしまうだろう。
すると、いつの間にか大型蜥蜴に近づいたバウさんが、巨大な尻尾を掴むと、勢いよく遥か上空へと大蜥蜴を投げてしまったのだった。とても天気が良い日だったので、吹っ飛んでいった大蜥蜴の鎧を太陽の光が反射して、キランと輝いて見える。
その大蜥蜴めがけて、この人さんがもふもふの手を翳すと、あっという間に大蜥蜴はチリと化してしまった。
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