13マルセル
「なるほど、再検証、というわけだな」
「ええ。で、今度はまた前回同様になった時の為に、最初からダンジョンの前で実験するつもりなの。これ、計画書よ。やるかどうかは、それ読んで納得してからにしてね」
ローズさんの研究室では、あの予想外の反応を、あえてもう一度試すことで、仮説が正しいかどうかを検証したいらしい。
実験体になる私の体への負担とか色々考えて、研究室のメンバーだけでなく、医師なども立ちあう中で実験をする、とある。
ダンジョンの入口のそばにテントをたてて、そこで実験をし、また魔力暴走が起きそうになったらダンジョンに入って暴れればいい…そういう計画らしい。
測定する項目も前回よりかなり増えていて、魔力回復薬にかける研究室の意気込みが透けて見える。
まあ…魔力暴走になってしまうと私にはかなり負担になるが、前回も実際には暴走には至らなかったわけで。
そして、前回私が魔力を流し込んだ以上の魔石も準備してくれている。
ダンジョンに入るまで、それで時間を稼ぐこともできるだろうし、それらに流し込む程度で終わってしまう可能性だってある。
「ふむ。まあ、私の犠牲によって、魔力回復薬の開発がかなり進みそうなのは専門外の私にも分かることだし…。協力はする。乗り掛かった舟だ」
「ふあああー、マルセルちゃん、ありがとう!!」
そういうわけで、その3日後、私は大勢のスタッフと共にダンジョンのそばにいた。
「マルセルちゃん、この子は、冒険者のデニス君。もしダンジョンに入ることになった時はこの子が一緒に行ってくれるわ」
「そうか。よろしく頼む」
「は、はい!あの、あの『海辺の風』にいたマルセルさんとご一緒できるなんて、感激です!」
「もう辞めて5年は経つがな」
海辺の風というのが、以前冒険者をしていたときに所属していたパーティーの名前だ。
マッドドラゴンを倒した功績によって、勲章をもらったりしたせいで、なにやら有名になってしまったのだ。
「そういえば…このダンジョンには入ったことは?」
「あります!世界的に有名なダンジョンですから!」
ローズさんが万が一のときにすぐに入れるようにしてくれているこのダンジョンは、今のところ世界でここだけのルールがある。
他のダンジョンと違って、一度に複数のパーティーが同じ階層に滞在できるのだ。
普通のダンジョンは、誰かが既にいる階層には、進むことができない。
つまり、他のパーティーが攻略している階層に進むことができないということだ。
だから、ダンジョンの中で、他のパーティーに遭遇することはあり得ない。
しかし、このダンジョンは複数のパーティーが同時に同じ階層に存在することができるのだ。
最深層のラスボスの部屋だけは、誰かが挑んでいる最中に他の誰かが入ることはできないのだけど。
その代わりになのか、マップが固定されておらず、迷路となっているそれが、数時間経つごとにどんどん変化していくのだ。
運が良ければすぐに次の階層への階段を見つけられるけど、そうでないなら、何日かぐるぐる回っても階段を見つけ出せないこともある。
ただ、5階層までしかなく、出てくる魔物もそこまで強いものはいないので、初級から中級向きとされている。
今回は、実験の測定のためのチームを私とは別のパーティーにして、客観的なデータをとりたいようだ。
なので、このダンジョンを選んだらしい。
私のダンジョンの運はそこそこいいので、まあ、踏破するには半日から丸一日、というところだろうか。
今回は前回みたいに急遽ではなかったので、ちゃんと装備も身に着けてきたし、マジックバッグも身に着けている。
マジックバッグには念の為のアイテムもたくさん入れてある。
とりあえず、全ての準備が整ったところで…。
緊張感漂う中、検証のための実験が始まった。




