柴田勝家
「ベヒーモスは、ルイに任せておいて大丈夫なのか?」
「大丈夫な訳無いでしょう! でも独りじゃないから なんとかしてくれると思う。。。。 それよりブルート、あなた洗浄魔法くらい掛けたらどうかしら? 昔 孤児院で飼っていたポチと
同じ匂いがするんですけど。。。」
「うん? そうか、すまんすまん長い間 人と接してこなかったからな あっちの池で体を洗ってくる」
「アラン、こんな姿になって。。。腰から下を全部再生させるのにどれだけ時間がかかるのやら。。。じっくり腰を据えて治療して2週間ってところね 取り敢えず落ち着ける場所まで運ばないとね もうちょっと我慢してね」
《ルイ、ブルートだ そっちの状況は、どうだ?》
《ブルート! 良かったよ無事で。。。アラン、アランは!?》
《うん なんとか生きてる 今はエヴァに見てもらっている
もう少しベヒーモスを抑えることは、出来そうか?》
《良かった〜良かったよ。。。本当にアランが生きていて
ベヒーモスは、なんとか抑えるよ 魔力をあまり感じないんだ いけると思う》
《湖の底に縛り付けて 魔素を取り込めないように封印していたからな ちなみに俺も魔力が空だけどな すまんがルイ もうちょっとベヒーモスを抑えておいてくれ 回復し次第そっちに行く》
《うん なんとかやってみるよ、仲間もいるし》
《そうか仲間も居るのか 良かったよ本当にお前達が無事で居てくれて》
[土柱]に四肢を鎖鎌でぐるぐるに縫い付けられ
わずかに自由になる首を左右に振り 拘束を緩めようともがく 付近にいた織田勢はベヒーモスの火炎放射と風魔党との戦闘の余波を受け沢山の屍を晒している そういった中でも運良く 難を逃れた者達は、武器を捨て包囲を狭めていた武田、浅井、朝倉軍に次々と投降していく
ひとしきり藻掻いていたベヒーモスが動きを止め 赤黒く脈打っていた体表から熱が冷めていくように
黒褐色へと変色していく 瞼も閉じられ 巨大な黒曜石の置物のように変貌していく
「なぁルイ これって死んじまったのか?」風魔小太郎が聞いてくる
「いや 寝ているようだな 魔力が尽きたんだろう。。。」
「息の根を止める好機では無いのか?」そう言いながらベヒーモスの鼻先で【蜻蛉切り】を扱く 本多忠勝
「並の攻撃では、通らないぞ やっても良いが エヴァやブルートの魔力を回復させる時間稼ぎをしたいんだけどな。。。」
遠巻きに成り行きを見守っていた 織田勢がざわつき始める
ベヒーモス対ルイや風魔党の戦闘を間近で見ていた彼らの目に、すでに戦意は残されてはいなかった
武器を捨て呆然と立ち尽くしている兵たちを掻き分け
一際 立派な甲冑を纏った武将が顔を青くしながら近づいてくる
「本多忠勝殿ではござらんか? 柴田勝家にござる」
「おぉ柴田殿 久しいですな とんだ邪魔が入りましたが 戦の続きと参りますか」
笑いながらベヒーモスの鼻先をコンコンッと叩く 忠勝
「そのような意地の悪い事を申されるか。。。これは一体どのような生物に御座るか?」
「柴田殿! 悪いがあんた等と慣れあう気はない! 我が殿が討たれた岐阜城にあんたも居たはずだ!!」
「本多殿 確かにわしもあの場に居った 止めねばならんかった 誠に止めねばならんかったと未だに後悔をしておる おそらくじゃが、殿も後悔しておる 口には出さぬが、わしらにはわかるのじゃ」
「口では、何とでも言える 織田信長の首級を挙げねば 我が殿も浮かばれぬでな このまま本陣まで攻め込ませてもらう 立ちふさがるものは全て切り伏せる!!」
「まぁ 待たれよ忠勝殿」背後より威厳に満ちた声音が響く
「これは お館様 ここは危険に御座います」片膝を付き 武田信玄を迎える一同
「お主もルイも居て 危険な場所などあるものか 誰がわしに傷1つつける事ができるというのじゃ?」
「もちろんお守りしますが このベヒーモスなる生き物 いつ目覚めるのか。。。」
「ふむ 長生きはするものよのう このような異形を目にするとは、これは西洋の書物で見た竜種に似ておるのう」
「龍では無く、竜でございますか? いずれにしても人の手には、余る生き物ですな」
「ところで柴田殿」平伏す 柴田勝家の上に信玄の声が冷たく突き刺さる
「はっ!」短く返事をすると、さらに額を地面にめり込ませる この武田信玄の一言に、ここに居る織田軍5万の命が
掛かっていると思うと 猛将で知られる柴田勝家も赤子同然である




