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戦国魔法奇譚  作者: 結城謙三
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ベヒーモス東進

この生物は、火属性であるにも関わらず

長い時間を湖底に縛り付けられ 想像を絶するストレスにさらされ続けた事により

魔力に飢えていた。。。。 

燃え盛る炎に飢えていた。。。。。 

泣き叫び己の血肉となる餌に飢えていた。。。。。。


10メートルを超える体長に頭頂部から尻尾まで続くタテガミを持ち

まるで岩を貼り付けたかの様な、筋肉を纏わせ 戦う生き物として一切の無駄が無いと言わんばかりの 威容を誇る

どす黒い体表に、赤い亀裂が走り鼓動に合わせるように どっくん どっくんと筋肉が隆起していく

人の身の丈ほどもある、湾曲した2本の角が熱を取り戻し 灼熱の赤へと変わっていく

口の端から、余った熱を放出するかのようにブシュッーと煙を吐きながら

濡れそぼっていた鬣を奮い立たせる 

おもむろに2本の後ろ足で立ち上がり 目の前にあるブナの木に5本の爪を突き立て 上から下へと振り下ろす

深々と5本の爪で抉られたブナの木を、人の胴よりもまだ太い尻尾で払い吹き飛ばす

オレはまだ地上最強であるという事を確認し満足したかのように 

また口の端からブシュッー ブシューッと火炎混じりの煙を吐き 先ほど火の玉が上がった空を見上げ 

すべての障害物を払い飛ばしながら 最短距離をと走り出す


この生物ベヒーモスは、サランドル·ダンジョンにより作り出された 

ダンジョン核が、己を守るために考えうる最強最悪のモンスターを ボス部屋を守るに相応しいモンスターをと

そのため彼は、いわゆる野生のベヒーモスではない

千年を越えるダンジョンの歴史の中で 数年、数十年に一度

50階層のボス部屋にたどり着いた者達が

その重い扉に手をかけた瞬間 彼は、目覚める

己が領域に足を踏み入れた者を

自分以外の鼓動を刻むものを全て滅せよという

その本能に従い 牙を剥く 

そして全てを滅し終えると、また長い眠りにつく


ベヒーモスは、駆けていた 狭いボス部屋で生まれ

戦うときにのみ覚醒した 彼にとっては、初めての行為だ

初めて見る空 冷たい空気 緑に生い茂る草木 流れる水

何より四方から感じられる 大小様々な生命の息吹

そして何より、この世界の濃厚な魔素

戸惑いもあるが、それ以上に歓喜していた

もしも笑うことが出来るのであれば 笑い続けていただろう

何者にも縛られず 自分で滅する命を選ぶことができる

前方から溢れ伝わる 負の感情 恐れ·絶望·嘆き·悲哀·苦痛

そこに向け 駆ける

途中にいくつかの生命に遭遇する 本能が殺せと命ずる

しかし前方で溢れかえる数万、数十万の生命が先だと思考する

自分が本能に逆らい、思考するということに戸惑う

これもまた 初めての行為だから



「思っていたよりも早い!」

背中にベヒーモスの魔力を感じ、予想よりも早く自由になった事 予想通り自分と同じ場所にベヒーモスが向かっている事に、焦りを覚える ブルート

『魔力が空で奴を止める手段が無い。。。頼む 誰でもいい止めてくれ』

歩みを止め、北の方角を見やる 500メートル後方を砂煙を巻き上げ、下草を引きちぎりながら

街道も畦道も河川さえ関係なく目的地に向け、突き進む

わずか数秒でブルートから200メートルほど北側をベヒーモスがすれ違う

一瞬こちらを横目で見やり 笑った気がした 

”お前の出来損ないの[転移魔法]のおかげで、俺は自由と無限の殺戮を楽しめるのだ“と


『もう少し もう少し進めば[念和]が届く ベヒーモスよりも先に報せる事ができれば被害を抑えることができるかもしれない ルイかエヴァが居ればだが。。。』












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