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12.

 先刻、公演が終わった。


 考えていたよりも、酷くこたえていた。

 すぐにでもハルカのもとへ駆けつけたい気持ちを押さえつけて、来賓への対応や諸々の指示を出す。


 テルセラの横に大人しく座っていた彼女だったが、どうも様子がおかしかった。

 ──あれって、泣きそうになってた……よな?


 考えに沈みそうになっているところへ、

 「やーゴメンゴメン! ボスの衣装がセクシーでつい剣先が狂っちゃってさ、引っかけちゃったよー大丈夫だった? ……ってか、紙一枚ぐらいだよねぇ。首とか切り落としてたら今頃、只じゃ済まなかったよねぇ、いやぁ、あぶないあぶない、ラッキーでしたっ! 」

 ピンクの髪を結い上げ直しながら、イザルティが鳥みたいに勢いよく話しかけてきた。

 頭が痛くなりそうだ。


 「ボス、今日は例のハルカって彼女も呼んでたんでしょー? 来てたよねぇ、テルの横にいた子? 」

 「……お前、ホンッとうるせぇ、黙れよ少し」

 邪険に返すと腰に手を当ててムッとする。

 「なぁにー機嫌悪いの- 」

 「……」

 「おーい、ボス? 」

 心配そうに顔を覗き込まれるに至って、愚痴がこぼれる。

 

 「くそ……このあとの予定、オールキャンセルしてぇ」

 呟きに、「そりゃ無理でしょ」と即答される。

 「……ふひひ。どうしても、っていうんなら、おじいちゃんにダメ元で確認してみる? 」

 「……いい、わかっている。ノワゼに確認するまでもない。……言ってみただけだ」


 ──俺にもわかっている。立場上、ここで抜けるわけにはいかないのだ。


 このあとの関係各所との繋ぎのためにも、祝賀会に臨席し、ねぎらいのスピーチをしなければならない。

 まぁ、祝賀会とは名ばかりの、夜明け近くまで続く打ち上げパーティだ。


 祝賀会は商談の場でもある。

 もとより、数年前から始められたこの「講演会」では大学を介して異界渡りから得た様々な最新の技術や知識を、これでもかと披露する場なのだ。


 異界からもたらされた科学・工学・産業・文化や芸術・経済システムに至るまで、舞台上で、音楽や舞踊などの分かりやすい形を通じて般市民に広める目的だ。

 無論、別会場では各所の会議室などを使い、医療や科学技術、それに武器や防具、戦術などのキナ臭い情報のやり取りも秘密裏に行われている。

 他愛の無いような技術が、知識が、アイディア次第で大きな商売へと繋がる。国を引っ繰り返すような、文明を根こそぎ覆すような技術へと道が繋がっている。

 祝賀会に参加する身分ではないような者達も、会場に近い歓楽街で、公演から流れてきた技術者とのコンタクトを求めて、出資者達が各所で熱い商談や議論を語り、飲み明かす。


 俺は腐っても王族である。日頃からかなり自由に動くことを許されてはいるが……今日ばかりは勝手な真似は許されない。今後の国の動向を測る上でも大事な場だ。


 「なんでもない。聞かなかったことにしてくれ」

 心配、というより面白がってニヤニヤしているイザルティに手を振る。


 幸い、ハルカのことはテルセラにエスコートをさせているから、帰宅までは問題なく出来るはずだ……焦る気持ちを、どうにかねじ伏せた。


 バックヤードに顔を出してくれるかと思ったが、淡い期待を裏切って……というか案の定、来ることはなかった。


 ──やはり、何かあったのだ。


 また故郷を思い出したのだろうか。

 側に行って抱きしめ、慰めてやりたい。

 もどかしい思いを胸に責務を果たし、朝一番にハルカのアパートを訪問した。



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