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王太子と未来の王太子妃の、最終試練。  作者: 章槻雅希


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5/5

試験終了

 試練開始から一年が経過した。王宮では、今回の試練について最終的な評価が行われた。


 国王と宰相の前に、ヴェンツェル、トビアス、ローデリヒ、オスヴィン、そしてエルヴィーラが集められた。


「まず、ヴェンツェル」


 国王は、息子に視線を向けた。


「そなたは、密命を受けた当初、婚約者にどこまで話すべきかを考え、許可を求めた。調査の過程では、怒りに任せて不適切な案を思いついたが、それを指摘されて改めた。自分の判断を見直すことが出来た点は評価しよう」


「ありがとうございます」


「エルヴィーラ嬢」


 国王は、続いて彼女を見た。


「そなたは、周囲の反応をよく観察し、相手の言葉だけでなく、その意図を見極めようとした。感情に流されず、必要なことを指摘し、王太子の判断を正すことも出来た。見事であった」


「恐れ入ります」


 エルヴィーラは、静かに一礼した。


「ローデリヒ、オスヴィン。そなたたちは、命令の内容だけでなく、その影響が婚約者に及ぶことも考えた。必要な相談を行い、秘密を守りながら信頼関係を損なわぬよう努めた。合格とする」


 二人は、深く頭を下げた。


「ありがとうございます、陛下」


「トビアス」


 最後に、国王はトビアスを見た。


「そなたは、命令を受けてすぐに行動した。だが、命令の意図を考え、周囲への影響を見通すことについては、まだ不足がある」


 トビアスは、表情を引き締めた。


「……申し訳ございません」


「謝罪を求めているのではない。今後、考えて行動することを求めているのだ。今回は条件付き合格とする。引き続き観察を行い、改善が見られなければ、側近候補としての適性を改めて判断する」


「承知いたしました。必ず、改善いたします」


 トビアスは、深く頭を下げた。








 試練が終わったあと、エルヴィーラはヴェンツェルと並んで王宮の回廊を歩いていた。


「終わりましたわね」


「ああ」


 ヴェンツェルは、どこかほっとしたように息を吐いた。


「君には、随分助けられた」


「私だけではありませんわ。ローデリヒ様やオスヴィン様も、よく考えて行動なさっていました」


「そうだな。トビアスにも、これから学んでもらわなければならない」


 二人は、窓の外に広がる庭園を眺めた。


「父上は、今回の件をどうお考えなのだろうな」


 ヴェンツェルが呟いた。


「王太子と、その婚約者。側近候補たち。次代を担う者が適切な年齢になったころ、こうした試練が起きる。誰かが仕組んでいるわけでもなく、特定の組織が動いているわけでもない」


「この国では、昔からそうしたことが起きると伝えられているのでしょう?」


「ああ。20年ほど前にもあったそうだが、詳しいことは解らない。父上たちは、それを神が与えた試練だと考えている」


 エルヴィーラは、静かに頷いた。


「ならば、私たちに出来ることは、与えられた試練に向き合うことだけですわね」


「そうだな」


 ヴェンツェルは、彼女の手を取った。


「これからも、私を支えてくれるだろうか」


「勿論ですわ。ですが、殿下」


 エルヴィーラは、いたずらっぽく微笑んだ。


「私が間違いを指摘したときは、きちんと聞いてくださいませね」


 ヴェンツェルは、思わず笑った。


「約束しよう」


 二人は、再び歩き始めた。


 王太子として、王太子妃として。そして、これから国を支えていく者として。


 今回の試練は終わった。


 だが、これからもまた、彼らの前には様々な判断が求められるだろう。そのとき、何を信じ、何を守り、どのように決断するのか。


 それこそが、次代を担う者たちに求められるものだった。


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