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【コミカライズ連載中】追放された悪役令嬢は【錬金スキル】で華麗なるチート生活を満喫する  作者: 朝月アサ


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25/85

25 デート





 アンリエッタは宿の部屋に戻ると、すぐにベッドに腰を下ろした。

 その姿勢のまましばらくぼんやりする。


(どうしましょう……ダリオンを、デートに誘ってしまったわ……)


 自分でも何をしたのかわからない。なんだかもう衝動的に行動していた。

 胸がドキドキしてくる。どうしてあんなことを言ってしまったのか、何を考えていたのか、いま思い返してもわからない。


 アンリエッタは『錬金術師の部屋(アイテムボックス)』を覗き込む。


(どんな服を着ていこうかしら……)


 服はいっぱいあるが、普段着では雰囲気が出ない。

 次々に取り出したドレスやワンピースをベッドに並べていく。


「わたくしの高貴さを引き出すロイヤルブルーのドレス……少し改まりすぎかしら。なら、清楚な白のワンピース……? 似合わないって思われないかしら……」


 鏡の前に立ち、確認してみる。悪くはない――と思うのだが。


「花柄のシフォンドレス……可愛らしすぎない? 子どもっぽくないかしら……大人っぽい黒のドレスは……少し攻めすぎではないかしら?」


 最終的に、アンリエッタは白のワンピースに決めた。肌馴染みのいい色で派手でなく、シンプルで、これなら気合いを入れすぎとは思われないはずだ。

 ひとまず着るものが決まってほっとする。


 アンリエッタは他の服を『錬金術師の部屋(アイテムボックス)』の中に片づけ、着ると決めたワンピースを部屋に吊るした。

 そして、ベッドに腰を掛けてお気に入りのクマのぬいぐるみを抱きしめる。


(浮かれているわ、わたくし……うう、いきなりデートに誘うなんて、変だったかしら)


 ダリオンの反応を思い返す。


 驚いていた。

 困惑していた。

 顔が固まっていた。


(はしたなく思われなかったかしら……?)


 ――公爵令嬢の基準で考えれば、はしたない。

 とてつもなくはしたない。


 だが、いまのアンリエッタはごく普通のどこにでもいる冒険者。

 男性とふたりで気晴らしに遊びに行っても普通――だと思う。


(それとも、冗談と思われているかしら……)


 本気で言っているわけではないと思っているかもしれない。

 ただ遊びたいだけで、それをわざわざデートと言っているだけだと。


(いえ、そうだけど、そうなんだけれど……や……やっぱりいつもの格好の方がいいかしら……でも、それだとデートっぽくないわ……)


 デートがどういうものか、アンリエッタは知らない。

 元婚約者と一緒に出掛けたことはなく、もちろん他の男性と親しくする機会もなかった。王太子の婚約者が他の男と親密になるなんて言語道断。


 だから、何が正解なのかわからない。

 再びワンピースを手に取って、鏡に映る自分を見つめ、どんな髪形が似合うだろうかと考える。香水は、アクセサリーはどうしよう。


 悩みはいつまでも尽きなかった。



◆◆◆



 ――そして迎えたデート当日。

 アリエッタはそわそわしながら約束の場所で待っていた。

 風に揺れる白いワンピースの裾を眺めたり、髪を触ったりしていると、ダリオンがやってくる。


 ダリオンは、いつもとほとんど変わらない――だが、冒険者装備を付けていない軽装だった。

 しかし、剣だけはしっかりと身に着けている。


 その姿を見て、アンリエッタは何だかとても気恥ずかしくなってきた。ダリオンはあくまで「護衛」としての自分を忘れていない。


「すまない、待たせたか」

「いえ……別に」


 ――嘘だ。

 昼前からこっそり待っていた。だが、それをダリオンに知られたくない。


「…………」


 じっと、ダリオンがアンリエッタの姿を見つめている。


「な、何かしら」

「めずらしい格好をしているな」

「……変かしら?」

「そんなことはない。少し動きづらそうに見えるが……君にはあまり関係ないか」


 ――なんてデリカシーのない男だろう。

 似合っているとか、ひとこと言ってくれるだけでいいのに。

 きっと、ダリオンはこれがデートだなんて思っていない。


 そのためにアンリエッタが準備してきたことも想像もしていない。


(こうなったら意地でもデートだと思い知らせてやるんだから……!)


 固く決意する。


「とりあえず、何か食べましょう」


 アンリエッタは気にしていない風を装いつつ、いつも通りに振る舞った。





 よく行く店で簡単なランチを食べる。

 アンリエッタはそわそわしていたが、ダリオンはいつもと変わらない様子だった。


(……これは、デートなのかしら?)


 いつもと何も変わっていない。

 食事が終わる頃、ダリオンが問いかけてきた。


「行きたいところはあるのか?」


 アンリエッタは少し考えて、答えた。


「……ダリオンの好きな場所を教えて」


 一瞬の沈黙が訪れる。ダリオンはわずかに眉を顰める。


「……君が見て楽しい場所とは思えないが」

「いいから。わたくしは、楽しい場所を知りたいのではないの。あなたのことを知りたいの。デートって、そういうものでしょう?」


 ダリオンは明らかに驚いていた。表情が少し硬くなり、戸惑いを隠せてない。


「……本気でデートのつもりだったのか……」

「ええ、もちろん本気よ」


 アンリエッタは軽やかに答えたが、胸の鼓動は少し早まっていた。

 ダリオンは少し考え込むように目を逸らし。


「……わかった」


 その返答に、アンリエッタはほっと肩の力が抜けると共に、胸が高鳴っていくのを感じた。





 街を歩き、あまりアンリエッタが行かない方面に向かう。

 辿り着いたのは、路地裏にある隠れ家のような店だった。地下に続く階段を、ダリオンの手を借りて下りる。


(こんなところにもお店があるのね)


 アンリエッタは驚きながら店内に足を踏み入れる。

 温かな木の香りが漂い、落ち着いた雰囲気の店だった。


 細長い店には長いカウンターがあるだけで、テーブル席もない。

 カウンター奥には酒の瓶がたくさん並んでいる。そしてフルーツも。


「こういうお店、初めてだわ。どんなお酒が飲めるの?」

「飲ませるために連れてきたのではない」


 ダリオンは店の奥に行き、一番奥の席にアンリエッタを座らせた。そして、自分が隣に座る。


「マスター、例のものを一つ頼む。私には薄いのを」


 常連なのだろう。慣れた様子でマスターに注文を告げる。

 向こうも慣れたもので、鮮やかにフルーツを切り始める。アンリエッタは興味津々でその様子を眺めていた。

 フルーツのかぐわしい香りがふわっと漂う。


 しばらくして出てきたのは、フルーツパフェだった。

 アンリエッタは目を丸くする。まさかフルーツパフェを出す酒場があるなんて。


 色とりどりのフルーツとクリームが美しく盛り付けられていて、食欲をそそる。


「これ、食べてもいいのかしら」

「ああ。アイスクリームが溶けないうちに食べてくれ」

「いただきます」


 柄の長いスプーンでひとくち口に運ぶと、クリームのまろやかさと瑞々しい果汁が口いっぱいに広がった。


「し、幸せすぎるぅ……こんなおいしいものがこの世界にあったの?」

「気に入ってくれたなら何よりだ」


 ダリオンは氷が多めのウィスキーを飲みながら言う。


「ええ、とても気に入ったわ。ありがとう、ダリオン」


 味もそうだが、ダリオンが、アンリエッタが喜ぶように考えてくれたこと――その気持ちが何より嬉しかった。

 お礼を言うと、ダリオンは少し照れたように視線を外す。


 アンリエッタは笑いながら、フルーツパフェを味わった。







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― 新着の感想 ―
アンリエッタが可愛過ぎる 前世の魔女時代を含めて男性経験が殆ど無かったんだろうね
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