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9 初恋



 1時限目が終わった。私は、なぜか朝のホームルームに配られた宿題の数学プリントを出した。学校でやっておけば、家に帰って焦ってすることはない。

 今日の問題をざっと見たが、今回は新しくならった範囲のプリントだったので、図形問題ばかりだった。だが油断はできない。公式に分数が加わっている物もあるからだ。


 まぁ、苦手意識はだいぶ減ったけどね。


「あ、もう宿題やるの?」

「橋本さん・・・うん、家ではゆっくりしたいから。」

「そういう考え方もあるんだね。ウチは、学校でしか会えない友達と話す時間に当てたいと思っているから、宿題は家でやる派かな。」

「確かに、それもそうだね・・・橋本さんはいつもの友達は?」


 橋本さんは確か、3人女子のグループにいて、休み時間は他の2人と一緒に行動していたと思う。


「なんか、2人共委員の呼び出しがあって・・・2人共同じ委員なんだよねー。」

「そうなんだ。」


 私は宿題プリントをファイルにしまった。


「いいの?」

「うん、またあとでやる。橋本さんと話せることなかなかないし・・・」

「そうだね・・・なら、今日からウチたちと一緒にご飯食べる?」

「うーん・・・他の2人は大丈夫?」

「2人共いい子だから、喜んで迎えてくれると思うよ?あなたさえよければだけど・・・一緒にお昼食べない?」

「それじゃ、お邪魔しようかな・・・確か、窓側に固まって食べていたよね?」

「そう。近くの子に机借りるから、椅子だけ持ってくればいいよ!」

「わかった。ありがとう、橋本さん。」

「こっちこそ!もっとあなたと話してみたいと思っていたの!」


 昼ご飯を食べる約束をし終わると、丁度橋本さんの友達2人が帰ってきた。橋本さんは話してくると言って、離れていく。


 私は、別にいじめられているわけでも、嫌われているわけでもない。けど、昼ご飯を一緒にとるような仲の良い友達はいなかった。


 たぶん、心配してくれたんだろうな。


 橋本さんの優しさを思うと、心が温かくなる。今みたいに、良い関係が続けばいいな。




 お昼ご飯の時間が来た。

 私は弁当を持参しているので、それと椅子をもって橋本さんたちのグループのところまで行った。


「こっちこっち!私の隣ね!」

「うん。」


 クラスメイトなので、他の2人の名前を私は知っているし、2人も私のことは知っている。自己紹介なんてものはななく、それぞれの昼食を広げて話し始めた。


「そういえば、あの2人付き合ってるんだよね~」

「前々から噂になってたけど、もう隠す気なさそうだよね。」


 話に出てきたのは、小学校からの同級生のクラスメイト2人だ。昔はよく遊んだけど、今のところ交流はほぼなく、たまに挨拶をする程度だ。


 今は、2人で机を挟んでお昼ご飯を食べている。同じ弁当を食べているので、片方が作ってきた者を一緒に食べているのだろう。


「そういえば、あの2人と同じ学校だったけ?」

「うん、小・中と同じだよ。」

「へ~小学校も・・・その頃からあの2人って仲が良かったの?」

「うん。一緒に鬼ごっことかしていたよ。口げんかすることが多かったけど、夫婦喧嘩ってからかわれるくらいに、仲がよさそうなケンカばかりで。」

「幼馴染ってやつだね~そいえば、牧口君ってその頃からモテたの?」


 牧口・・・彼氏の方だ。確かに、リーダーシップがあって、小学校に通っている時から、クラスの中心人物だった。それは、今も変わらない。


「人気はあったね。モテたかは知らないけど・・・」


 みんなの憧れだったから、好きな女子は多かったと思う。でも、彼女がいたから皆諦めた。お似合いが誰かわかっているのだ。


「牧口君には、彼女がいたから・・・」

「恋する前に諦めちゃうってやつだね~」



 希望を抱かなければ、失望なんてしない。

 誰も変わらなければ、誰も傷つかないのに。


 なのに、私は希望を抱いて、変わってしまった周囲に傷つけられてしまった。



 私は、牧口が好きだった。




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