14 変える
騒がしい教室の中、私はファイルから一枚のプリントを出して、橋本さんたちのところへと行く。
「橋本さん。」
「どうしたの?」
「えっと、橋本さんって、大学に興味ない?」
「どこの大学?」
「進学希望なの?私たちと一緒だね~」
私は橋本さんに体験入学のプリントを渡した。すると、他の2人も声をかけて橋本さんが手にするプリントを覗き込む。
「どの体験入学に行くの?私はどれでもいいよ!ただでランチできるなんて、最高!」
「やぱり、学食がおいしいところがいいよね~」
「私はCコースがいいな。」
「みんな、一緒に行ってくれるの?」
「うん?あれ、はっしーだけ、誘われたの?」
はっしーとは、橋本さんのことだ。確かに私は橋本さんを誘ったが、それは他の2人とはまだ打ち解けていないと感じていたので、言いにくかっただけだ。
「一緒に来てくれると嬉しいけど・・・」
「なら決まりだね。ところで、あなたはどのコースがいいの?」
体験入学は、この大学ではコース分けされていて、それぞれ別のことができる。模擬授業という真面目なものから、高齢者体験という気軽に行けそうなものまである。特に行きたいコースはなかったので、Cコースの心理テストと適性検査体験というものにしようかと思った。
「私進路が決まっていないから、どれでもいいんだ。だから、Cコースはどうかな?」
「私も決まっていないから、Cコースに興味があって。適性検査ってあるし。」
「私はランチがいただければどこでも~」
「それじゃ、決まりだね!そうだ、ウチも行きたい大学があって・・・」
橋本さんは、自分の机からファイルを取ってきて、戻ってくると私にプリントを渡した。
「誘おうと思ってたんだ。みんなで行くんだけど、どう?」
「もちろん行くよ!いろいろ行きたかったから、丁度良かった。」
「そう、ならこれも決まりだね!来月は忙しくなるね~」
その日は一日、大学の体験入学の話で盛り上がった。
帰り道、私はいつもの場所で足を止める。
そこは、あの村がある林の入り口前。
入口から中を覗けば、近寄りがたい空気を漂わせた林の中と、それほど遠くない場所にある出口が見えた。
「まだ、いるのかな?」
あれから、私は村に行くことができなくなった。だから、少年と会うこともできず、少年がまだ村にいるのかはわからない。
でも、きっと少年はずっと村にいるだろう。そうでなければ、あの時私と一緒に村を出たはずだ。
少年のことが好きだ。ずっと一緒にいたいと思ったし、もっと遊びたいと思った。だから、この林の前を通るときは大いに期待をして、林の中を見ては落胆する。
胸が痛い。でも、私は変わることを決めたのだ。
私は、そのまま林から視線を外して、通学路を外れることなく歩き出した。
明日からは、連載中小説「男だけど、聖女召喚された」か、別の小説を連載する予定です。
よろしくお願いします。




