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第3章11

「まあ!ここがルメリカ!とっても活気がありますのね!」


「ええ本当に。それにしてもすごい人出ですわね。お祭りでもあるのかしら?」


ルメリカに辿り着いた私たちは、宿の馬車留めで久しぶりに地面に足をつけた。

なんだかまだ揺れているような気がするが、そんな気分の悪さも周りの街並みを見ることでどこかに吹き飛んでいった。


ルメリカの首都であるリンゴスタは、この世界では見たこともないくらい大きな街だった。

街の入り口の門から真っ直ぐに伸びる大通りには店が立ち並び、ショウウィンドウには様々な商品がひしめいていた。

通りすがりに見た街の中心にある噴水広場には出店が出ていて沢山の人達の憩いの場になっていたし、そこから放射状にのびている通りも大小様々な店屋が並んでいて、せわしなく人々が行き交っているのだ。

網の目のように張り巡らされた路地に一度迷い込んだら、二度と元の場所に戻れないのではと思うくらい複雑な街並みだ。


私とジュリア様が開け放たれた宿の入り口を眺めたまま大きく目を見開いて戸惑っていると、笑いを滲ませた声が掛けられた。


「ハハッ!リンゴスタは初めてかい、お嬢さん方!ここは様々な人が入り混じる夢の国!お祭りじゃなくても人は多いけれど……今はいつもより少しだけ人が多いかなっ!」


振り向くとそこには三十手前くらいの黒髪の若者が立っていた。

若者は手に持ったステッキをクルクル回し、シルクハットを手に持つとニコッと笑った。動きに合わせてヒラリと舞う派手な柄の燕尾服が滑稽な雰囲気を漂わせている。


「ええと、どなたかしら……」


戸惑いながら口にした問い掛けに、若者は黒い瞳をキラキラと輝かて答えた。


「初めまして!僕はミカエル!ミッキーって呼んでね!ハハッ!」


……ミッキー……何かを思い出すわね。

……あまり呼びたくない。


「……ねえ、あなた、アルトリアに親戚とかいる?」


「どうだろう?僕の家系は多産だから親戚は多い方だと思うけど!ハハッ!ハハハハッ!」


ミッキー……ミカエルは何が可笑しいのか、終始ニコニコと笑っている。

……よく見ると濡れた様に光る黒髪はサラサラだし、ひょろりと高い上背と相まってスタイルもいい。顔立ちも途轍もなく整っている美青年だ……が、派手な服のせいか全体的に胡散臭い。


何故だろう……服の派手さが限界を突破しているからだろうか。

いやほんと派手だな、服。

あまり関わり合いになりたくない。


蛍光グリーンの地に大きな紫の水玉のジャケットの内側には、ショッキングピンクに輝く黄色のストライプが目に眩しい立ち襟シャツ。

ジャケットと同色のパンツの裾からは、真っ赤な靴下が覗いており、エナメルが輝く革靴は鮮烈な青だ。


無理だ。理解の範疇を超えている。

というか知り合いだと思われたくない。


「ところでお嬢さん達は、エリオット様の結婚式のために来たんだろう?僕は案内を任されているんだ!良かったら街を案内するよ!」


「結構です」


「即答?!」


思わず断ってしまった。

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