#5
俺が人間だとバレたら、一体どうなる?
考えたことは何度かあったが、俺の楽観的な性格が幸いしてか、深く考えたことはなかった。
しかし、脅迫状? を見つけた翌日。
「――な、なぬッ!?」
学校に登校した俺は、下駄箱を開けた際にとんでもないものを発見してしまう。
それは、俺が長年求め続けてきたが、決して手に入れることのできなかった幻の品物!
「お、おぱんちゅ」
女性用下着、――清楚な純白パンティーが俺の下駄箱に入っていたのだ!
ライオンが放し飼いにされたサファリパークに突然放りだされたかのように、俺は高速で辺りを見す。
そして、誰にも今の状況を見られていないことを確認した俺は、上履きの上に綺麗に畳まれた白いパンツを鷲掴みにすると、上履きを履かずに下駄箱前を駆けだした。
駆け出したことに理由なんてない。あまりの嬉しさに、走らずにはいられなかっただけだ!
そしてこのとき、俺に懐かしい記憶がよみがえる。
あぁ、この感覚。小学生の頃、学校帰りに見つけたエロ本を服の下に隠して持ち帰った、あのときの高揚感だ!
周りの友人よりも性の目覚めが早かった俺は、自分が変態であることを誰にも話せないでいた。
友人と帰宅途中に稀でエロ本を発見することはあったが、その際は変態だと悟られないように、わざと友人の前で落ちていたエロ本を破り捨てたもんだ。
……あの頃の俺は、未熟者だった!
エロ本を破くことによって、俺は全然エロくないとアピールをしていたんだ。
そして、エロ本を破きながら、俺は毎回心の中でこう呟く。
『早く、大人になりてぇ。……コンビニで堂々とエロ本を読める、大人になりてぇ!』
あの頃の俺よ……。俺はコンビニでエロ本を読めるだけでなく、女子のパンツを鷲掴みにできるまでに成長したよ!
俺はパンツを握る力を更に強める。すると肌触りの良い絹のような感触が、俺の掌一杯に返ってくる。
「一体、どんな美少女のパンツなんだろうなっ」
脳に幸せエキスが分泌されすぎて、思考回路が上手く繋がらない。
俺の頭の中は、パンツで一杯だ! もう、周りがパンツにしか見えない!
そんなパンツ畑を走る俺に釘をさすかのように、ドブ色をした汚ねぇパンツを一枚見つけてしまった。
気分を害された俺は、思わずそのパンツをガン見する。
「……ちょっと、なに見てるのよ! キモイからコッチ見んな、変態!」
俺に罵倒を浴びせてきたドブ色をしたパンツ。
その正体は、アメリカのポリ公みたく、腹がトランポリンな肥満女子だった。
そうだ。こいつは確か、……俺とおとさんがエロ話で盛り上がっていたときに、あの大きな腹でタックルをかましてきやがった肥満女子!
美少女が免疫のないエロ話を聞いていまい、恥しがっての一撃というのならば、俺は大いに許す!
だが、コイツみたいな……
「――はっ!」
お、俺はっ! なんという恐ろしいことを考えてしまっているんだ!
――パンツの持ち主が、コイツみたいな奴だったら。なんて!
「ちょ、ちょっと! そんなに熱い視線を私に向けないで! 孕んだらどうするのよ!」
「頼まれたって、お前に俺のビッグマグナムは使わん! だが、一応は感謝をしておく!」
俺は肥満女子から踵を返して立ち去る。
……ようやく冷静になれた。
そもそも、俺は考える順序を間違えていたんだ。
持ち主特定→わっしょい! なところを、その逆をしていた!
パンツの魔力に魅せられちまっていたんだ!
「俺がこのパンツを使用してから、持ち主が化物だと知ったのならば、俺の精神は間違いなくブレイクされていた……」
パンツを下駄箱に入れるなんて、正気の沙汰じゃねぇ! という考えを、一番初めに抱けなかった時点で、俺は敗北のレールを走らされていた。
これは、俺に脅迫状を送りつけた奴の練りに練った作戦に違いない。
「……とりあえず、このパンツはチャック付きビニールで密封保存だっ!!」
持ち主が解らない限り、このパンツは危険。
しかし、厄介なことにその危険が、かえって俺に上質な妄想を与えてきやがる。
人間の脳というのは都合の良いもので、悪いことよりも良いことの方を考えてしまう。
宝くじを買った際に、当たるはずがないと解っているくせして、当たったときの妄想を強く意識してしまうのが解りやすい例だ。
「つまりこのパンツは、――天使にも悪魔にもなる!」
一体どっちなんだ!?
読んでいただきありがとうございます!
一話を十一にわけて構成しているのですが、私の計算では第四話で完結する見込みだったのが、余分な話を入れすぎているのが原因で、第四話で終わらせられるかが解らなくなってきました(汗




